>   >  グリーの新モーションキャプチャスタジオや話題のVTuberドラマの裏側など、VR技術の最先端を知る「#VRSionUp! #3」
グリーの新モーションキャプチャスタジオや話題のVTuberドラマの裏側など、VR技術の最先端を知る「#VRSionUp! #3」

グリーの新モーションキャプチャスタジオや話題のVTuberドラマの裏側など、VR技術の最先端を知る「#VRSionUp! #3」

<4>VTuberによるシチュエーションコメディドラマができるまで

バーチャルYouTuberドラマ【四月一日さん家の】新番組告知

特別ゲストトークとして、「バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。」と題し、バーチャルYouTuberたちによるシチュエーションコメディ、テレビ東京 ドラマ25『四月一日さん家の』の舞台裏が紹介された。普段は実写ドラマのプロデューサーをしているテレビ東京の五箇公貴氏と、株式会社ハローにてXR領域の開発やメディアアートを手がける本作の技術プロデューサー赤津 慧氏が登壇し、GREE VR Studio Labのプロデューサー白井暁彦氏がモデレーターを務めた。


写真左から 赤津 慧氏(株式会社ハロー)、五箇公貴氏(テレビ東京)、白井暁彦氏(GREE VR Studio Lab プロデューサー )

30分12本、1クールの番組企画が最初にもち上がったのは2018年6月頃のこと。VTuberドラマなら、既存のドラマ放映枠をねらえる、アニメとも実写ドラマともちがう3Dの人間が存在すること自体がとてもエポックメイキングであると考えられた。「新しいエンターテインメントの形ができるのではないかというところからスタートしました」(五箇氏)。

そこで考えたのは「VTuberを集めて何をやるのか?」ということ。キャラクター同士が生で会話したり、その場の1つの空間を大事にした方が良いのでは?など様々な事柄を検討したという。また、CG背景を作り込みすぎてしまうとフルCGのアニメーション作品と変わらなくなってしまう。「VTuberならではのライブ感を活かせるのは何か?と考えていきついたのが"シチュエーションコメディ"でした」(五箇氏)。

30年前に放映されたTVドラマ『やっぱり猫が好き』(※)のようなシチュエーションコメディを2019年に全部バーチャルでやったら面白そう、という考えが発端となり、また制作コスト的にも合致するということから、「三姉妹がひとつの空間で物語を作る」という現在の形にまとまった。「キャラクターはオーディションをやりました。VTuberごとに個性があるので、その個性を殺さず、また個性が離れすぎていると作品として馴染まないので、一緒の空間にいて馴染む3人を選びました」(赤津氏)。

※『やっぱり猫が好き』:1988年から1991年にかけてフジテレビ系列で深夜に放送されていたコメディドラマ。マンションの一室を舞台に三姉妹と猫が出演するアドリブありのドラマ。脚本は三谷幸喜氏をはじめ錚々たる脚本家が担当


衣装は、人気スタイリストの伊賀大介氏に、数百枚単位の衣装から全部コーディネートしてもらったという。「伊賀さんは様々なアニメーション作品のスタイリングも担当しているので、今回もアクセサリも含めて全部お願いしました。そして、実は衣装を決めるところから、ドラマ的なディレクションと技術的なディレクションのすり合わせが始まりました。通常のアニメでは着せるのが難しい衣装も、今回はスタイリングできたことが面白かった」(赤津氏)。

制作期間としては約10ヶ月、撮影期間はもっと短かったという。「ドラマのスタッフと、VRのスタッフとで使う用語がちがうので、現場で言葉が通じなくて大変でした。まずUnityエンジニアと現場のカメラ、現場監督との異業種交流会から現場が始まった」(赤津氏)。制作においてはアニメ的な絵コンテは作っておらず、ドラマ的な撮影で進行。スタジオに4台カメラを設置し、画面を4つに割って収録、そこからカットを選んで編集していくというドラマにおけるマルチカメラ撮影に近い方法が採られた。実際に3D空間上のカメラを見ながらディレクションしており、全カットのカメラや家具の位置、アクターが動ける位置の限界なども図面に書き込んだ上で撮影が行われたのだという。

VTuberの場合、実写の女優に比べて表情のパターンはそう多くない。実写作品でみられるような細かい演技のニュアンスはアニメーションでは表現しにくい部分もあるが、コメディの場合笑い声が入ることである程度カバーできる。VTuberファンだけでなく、VTuberを見たことがない視聴者にも「何だろう?」と思ってもらえるような間口の広げ方をするため、スタジオ収録風のスタイルを採っているとのこと。台本はあるが、アドリブや即興、身振り手振りも含めある程度演技には幅をもたせており、現場でのディレクションで変わっていく場合もあるそうだ。

続いて、通常のドラマと本作の制作フローが簡単に紹介された。「目線なども若干ずれているのを良しとするか、再撮影するのか?そのあたりもディレクションの難しいところで、期間と予算の兼ね合いを考えながら、今回は厳しく品質基準を設けていました。最後の2〜3ヶ月は再撮影と再編集のくり返しでした」(赤津氏)。

通常のTVドラマの制作フロー(左)と、VTuberドラマの制作フロー概略(右)

苦労した点としては、映像やキャラクターはプログラムで組んでいるため、予期せぬバグが現場で出て来ることが挙げられた。「例えば、キャラクター全員が掃除機しか持てなくなった瞬間がありました」(赤津氏)。技術面のコストは通常の深夜ドラマの制作費ぐらいはかかっているとのこと。

今後はドラマやアニメという既存の枠に囚われることなく、"VTuberエンタメ"という新しい枠ができることを次のステップとして目指している。「アニメの枠として観る、ドラマの枠として観るという固定概念をとっぱらってもらうのがこれからの挑戦です」と五箇氏が語り、トークを締めくくった。


#VRSionUp!#3 特別ゲストトーク(ダイジェスト版):バーチャルYouTuberドラマ『四月一日さん家の』誕生秘話~色々あって、ここまで来ました。

GREE VR Studio LabではこのようなVRエンターテインメントの最新の話題と学生のライトニングトークなどを交えた発信イベント「VRSionUp!」をほぼ毎月開催している。次回は6月21日(金)にVRSionUp!5「kawaiiムーブ研究」、7月16日(火)にVRSionUp!6「先端ボイチェン研究」が予定されている。

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