>   >  デジタル・ガーデンが実践、リアルタイム合成&カメラトラッキングシステム「Ncam」の正しい利用法|ボッシュラーズ『みんなヒーロー』篇
デジタル・ガーデンが実践、リアルタイム合成&カメラトラッキングシステム「Ncam」の正しい利用法|ボッシュラーズ『みんなヒーロー』篇

デジタル・ガーデンが実践、リアルタイム合成&カメラトラッキングシステム「Ncam」の正しい利用法|ボッシュラーズ『みんなヒーロー』篇

<2>ポスプロ工程におけるNcam導入メリット

Ncam導入のメリットは撮影現場だけにとどまらない。CG・VFXの本制作では、NcamのカメラトラッキングデータをMBからFBX形式で書き出し、Mayaによるアニメーション等のショットワークに活用。ハイスピード撮影のショットについても問題なく対応できており、精度の高いカメラトラッキングデータが得られたため、効率良くショットワークを行えたそうだ。

「今回のトラッキングデータは、精度が高くほぼダイレクトにCG・VFX作業に利用できました。ですが、現在のNcamシステムに用いられている画像解析用カメラの性能的に、より激しいカメラワークになった場合はブレゴマが増えてしまい、トラッキングの精度も落ちてしまうと思います。アクションシーンの撮影にNcamを利用する場合は何らかの対策が必要だと感じました」(平嶋氏)。『ボッシュラーズ』の撮影では、照明部ならびに撮影部と連携し、カメラが大きく動くカットについてはライティングを明るくしたり、シャッタースピードを上げてもらうことで対応したそうだ。

MBを経由してNcamのデータをFBXで書き出し、それをMayaにインポートした背景シーン。Ncamのデータ収録時に実写プレートとタイムコードを同期させているため、オフライン編集の使いどころと同じフレームが使用できる

通常であればマッチムーブ用のマーカーをグリーンバックに貼る必要があるが、Ncamは撮影カメラのフレーム外にターゲットを配置するため、合成時のバレ消し作業も軽減できたという。
「今まではタイトなスケジュールの中でマッチムーブに費やす時間も考慮して作業を行わなければならなかったのですが、Ncamを導入したことによって、その手間が大幅に削減できました。本作では、クリエイティブな作業により多くの時間を費やすことができました」(森田 輝CGデザイナー)

「ザ・クリエイター」ファーストカットのブレイクダウン

  • <1> 遠景の2D背景素材

  • <2> 近景のビル群(2D)を合成


  • <3> 3DCGで作成した背景セットを合成

  • <4> 役者の実写プレートを合成


  • <5> 役者の左手に3DCGで作成したドリルを合成

  • <6> 一連のコンポジット処理が施された完成形



Ncamはデザイナーだけでなく演出面にも大きな恩恵を与えてくれたと、本作の監督を務めた髙村伸一氏は次のように語る。
「合成カットが多い作品では、CGスタッフからできるだけカメラを動かさずに撮影してほしいと相談されがち。ですが、『ボッシュラーズ』企画ではハリウッド映画のSFヒーロー的な世界観を追求したため、必然的に手持ちカメラによるダイナミックなカメラワークが欠かせません。今回は、Ncamを導入したことで躍動感のあるカメラワークとCG合成を高いレベルで両立することができました。撮影しながらリアルタイムで合成イメージを確認できることはカメラマンにとっても大きなメリットですし、役者の配置や背景レイアウトは現場で決めることができたので監督としても演出の幅が広がりました。ひき続き活用して、新たな表現にもチャレンジしていきたいですね」

© Robert Bosch GmbH

デジタルベースの映像制作に精力的に取り組んでいるDGIだが、本プロジェクトを通じてNcamを導入するメリットを実感したという。CGと実写の合成だけでなく、複数の実写素材を多重合成する際にもNcamを活用するなど、新たな利用法も模索していくそうだ。
「DGIでは、演出から撮影、CG、ポスプロとワンストップで制作できる体制を構築しています。この強みは映像コンテンツだけでなく、インタラクティブコンテンツも利用できます。今後は、インタラクティブの領域でもDGIをアピールしていきたいと思います」と、DGI取締役の佐藤啓介氏は今後の展望を語ってくれた。

© Robert Bosch GmbH

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