アニメーターを不安にさせず、熱量を高めるディレクション
- 石川氏はMV『Sing Along』の制作途中から参加し、同作のアニメーションと、ほか2曲のレイアウトおよびアニメーションのチェックを担当した。週3回ペースの参加に留まりフルコミットできなかった点が心残りではあるものの、限られた時間の中で、約15人のアニメーターが迷うことなく前向きに挑戦し続けられる環境づくりに力を注いだという。
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アニメーションディレクター・石川剛史氏(フリーランス)
▲【上】MV『Fastest Horse In Town』のアニメーションのテイク1と、【下】それに対する石川氏の修正指示。眼力、口元、輪郭などに対し、具体的で明確な修正方針が示されている。「チェックする僕自身が明確な完成形をイメージできていないと、現場の人たちが不安になってしまい、良いものがつくれなくなるんです。だからあらゆる手段を使い、ゴールを明示するよう努めました。一方で、僕の中の完成形にだけ固執せず、予想外のものが上がってきた場合でもフラットな目線で判断するよう心がけてもいました」(石川氏)
▲【上】同じく、MV『Fastest Horse In Town』に対する石川氏の修正指示と【下】その参考動画。自ら演じてみせることで、動きの詳細を明示している
▲【上】同じく、MV『Fastest Horse In Town』に対する石川氏の修正指示と【下】その参考動画。「ヨロシクお願いします」のメッセージと共に描かれたイラストになごまされる
▲【上】同じく、MV『Fastest Horse In Town』に対する石川氏の修正指示。どの指示にも「明確な完成形をイメージし、あらゆる手段を使い、ゴールを明示する」という石川氏の姿勢がしっかり反映されている
「クライマックスの制作は、あえて若手に委ねました」
MV『Fastest Horse In Town』のクライマックスシーンの制作では、石川氏による思い切った采配がなされた。「現場の熱量が高く、その熱量でもって映像の質をもち上げていくのが神風動画さんのカラーだと思います。そのカラーを引き出したかったので、クライマックスのアクションシーンの制作は、あえて若手の岩本舜也さんに委ねました」(石川氏)。本シーンは7月公開のトレーラーでの使用が決まっていたため、最優先で仕上げる必要があった。岩本氏は業界経験3年目、本格的にアニメーションを始めてからは1年に満たないものの、「もっとアニメーションをやりたい。アクションに挑戦したい」と語っていたそうだ。
「これが上手く仕上がれば、ほかのアニメーターも『自分たちだって良いものを上げてやる』という気持ちになって、最高の化学反応が起こるのではと期待しました」(石川氏)。その期待通り、岩本氏のがんばりが起爆剤となり、現場の熱量は日増しに高まっていったという。
▲2019年7月に公開された、MV『SOUND & FURY』のトレーラー。岩本氏が担当したアクションシーンは、0:28あたりから確認できる
▲【上】岩本氏が手がけたクライマックスのアクションシーンの作業画面と、【下】その完成画像
▲同じく【上】岩本氏が手がけたクライマックスのアクションシーンの作業画面と、【下】その完成画像。7月公開のトレーラーでは主人公がマスクを被っていたが、その後制作された本編ではマスクが外れ、鬼気迫る表情が付けられた。「トレーラーの時点では岩本さん自身が満足しておらず、本編ではさらに動きを突き詰めてくれました」(石川氏)
©2019 High Top Mountain Films, LLC / Elektra Records.