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アニメーションをレベルアップさせる、GoodをGreatにする「ポリッシュ」

アニメーションをレベルアップさせる、GoodをGreatにする「ポリッシュ」

視線を交わす男の子と女の子

ポリッシュ前&ポリッシュ指示

ポリッシュ後

ここで重要な要素は「男の子と女の子がお互いを見合っている」こと。観客の視線誘導をしっかり描いていく。ふたりが「お互いを見ている」と観客にはっきりわかるように、女の子の頭はもう少し反った形に、より顔の角度を傾けてプッシュする。男の子は右手を女の子に差し出しているが、その延長線上にちゃんと女の子がいるように、伸ばした右手の方向を調整してあげることで、視線誘導がより明確になり、ふたりの関係性がはっきりと見えてくる。

ただし調整をした結果、差し出した右手の手のひらが屋根のギザギザの構造と被ってしまったので、例えば男の子をもう少ししゃがんだポーズにすることで、より整理された印象に仕上げることが可能だ。さらに、男の子を前のめりの姿勢にすると、必死に助けようとする様がより強くなり、感情に「er」を付けた表現にすることができる。

アークを意識する



  • ポリッシュ前



  • ポリッシュ指示

ポリッシュ後

ここで注目するのは、女の子の手の動きの軌跡だ。ポリッシュ前は比較的右手の動きが直線的になっているので、画面上で弧を描くような「アーク」と言われるポイントを意識する。同様に左手に関しても、身体の回転の動きに合わせて手がついてくるようなながれのある動きに調整した。また、胸のラインと右手のラインが重なり合ってしまっているので、右手を身体の内側にずらして情報整理することで、わかりやすくなる。

特に女の子の右手のように、カメラに対して手前と奥に伸びている奥行きをもったシルエットは、その手や関節位置の構造がわかりづらくなるので、情報整理をしてクリアにしておくと状況が伝わりやすくなって良いだろう。加えて、鞄の紐を調整することで、鞄が飛んできている方向と軌道がわかるようになる。さらに女の子の足の地面とコンタクトも見せることができて踏ん張る印象が強くなった。

コンタクトフレームとネガティブスペース



  • ポリッシュ前



  • ポリッシュ指示

ポリッシュ後

このフレームで紹介するポリッシュのポイントは「コンタクトフレーム」だ。コンタクトフレームは、観客の視線が集まる部分であり、この「接している部分をしっかりと見せること」で重みや存在感をより伝えられる。このショットで女の子は右足・左足で2回の蹴りを恐竜に入れているので、コンタクトフレームをしっかり見せることで、「2回の蹴り」という要素をしっかり見せたい。

デザインとしては、女の子の右足と左足、さらに恐竜の顔、恐竜の尻尾の位置関係が複雑になってしまっているので、上手くネガティブスペースを設定して構造を整理してあげることで「しっかりと蹴りが恐竜に当たっている」ことをより伝えられる。ポイントはシルエットやポーズ、デザインを意識して、ネガティブスペースとコンタクトフレームを明確に見せてあげることだ。これらを意識することで、観客が混乱せずにストーリーに集中して観ることができるようになる。

ポリッシュのススメ



  • 作例の完成画1



  • 作例の完成画2

作例の完成画3



  • 閉じた口



  • 開いた口のポリッシュ指

ポリッシュ後

ポリッシュは制作工程の最後の10%とも呼ばれ、ディテールをもって演技を強化し、自然な動きで信頼性をもたせて、観客がよりストーリーに集中できるようにショットを仕上げる工程だ。そこには、観察して感じたことを理論に落とし込み、論理的な裏づけをもった思考から最適解を選択することが求められる。例えば、キャラクターが喋るときは口や顎はもちろん、耳や鼻も引っ張られて動くとか、その耳や鼻は1フレームずらしてあげたり、キャラクターの柔らかい・硬いという性質で調整したり、といった工夫も必要だ。

フェイシャルに関しては、観客の意識が最初に向かう「目」が一番重要だ。次にショット全体で大きく動くところ、つまりそのショットで伝えるべきことがポイントになる。「ポリッシュの知識を知って、実際のアニメーションの作業を経験すれば、キャラクターの動きがより活き活きとしているショットをつくれるようになります。要素を分解して論理的に理由づけをして 考察するクセをつけ、その思考を鍛えておくことで、例え時間がなかったとしても、ポイントを押さえたクオリティの精度が高いアニメーションをつくれるのです。その引き出しの中から、デザインや原理を考えて、最適な回答をチョイスしてほしいですね。ポリッシュのひとつひとつは観客の方が視認できるものではありません。でも、目では見えないけど感じる部分はあるので、"何かちがう"と思わせないこと。作品で最も重要な"ストーリーを伝えること"を考えて、どのようなチョイスをするかが大事になってきます。好き嫌いという好みにも理由があって、論理的に理解していない迷ったアニメーションには説得力がなく、伝わらないでしょう。ポリッシュすることでGoodをGreatにできます!」と藤原氏は熱く語ってくれた。



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