『ULTRAMAN』の制作を通して見えてきた、リグの課題とその解決
リギングスーパーバイザーは錦織洋介氏と井上暢三氏の2名体制とし、錦織氏がメインキャラクター用に開発したリグを、井上氏がゲストキャラクターやモブ用にチューニングするという分担がなされた。さらに、社外スタッフのタスク管理と、特殊なリグの検証は錦織氏、社内スタッフのタスク管理や教育は井上氏が担うことで負荷の分散を図っている。「全キャラクターの指標になったのが、素子とトグサです。素子は最初に着手したにも関わらず、完成までに一番時間を要しました」(錦織氏)。
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錦織洋介氏(リギングスーパーバイザー) -
井上暢三氏(リギングスーパーバイザー)
▲『ULTRAMAN』と同じく、本作のキャラクターの動きはモーションキャプチャベースになっている(表情や、指の細かな動きは手付け)。「動きがリアルだからこそ、股関節の位置が不自然に高いと、見覚えのないところが動いているように見えるんです。歩くにしろ、座るにしろ、骨盤の入っていないフニュフニュした感じの腰になり、格好良くありません。そのため早い時期から、低くするよう依頼していました」(神山監督)
手のリグに対しては、1. クローズアップに耐えられる手にしたい、2. 人形っぽさをなくしたい、3. 銃をしっかり握りたい、という要望が両監督から出された。「手の外形と内部構造を改めてリサーチし、モデルチームの協力を得ながら、トポロジーとボーンの配置を見直しました。キャラクターの量産に対応できるよう、変形は補助骨で実現できる範囲にしています。『ULTRAMAN』では、変形時に手の体積を減らさないために補助骨を使いましたが、本作では骨の隆起や筋肉の収縮を感じさせるために使っています」(井上氏)。
▲手・膝関節・肘関節の変形チェック用動画。手の変形では、拳を握ったときに指と指の間に隙間ができないようになっている。また、いずれの変形においても、骨の隆起や筋肉の収縮を感じさせることを目指している
▲【上】先のチェック用動画から、さらに手のバランスを改良し、OKとなった/【下】完成した手の補助骨
▲素子の手。「手と同様、肩や肘の曲げ伸ばし時のシルエットも改良しており、素子には一番リッチなリグを仕込んであります」(錦織氏)
モデリングとリギング時の身長を170cmで統一し、データのパブリッシュ時に変更
キャラクターのデザインやモデリング時には、前述の股関節の指示に加え、「スーパーモデルのような頭身ではなく、頭を大きめにしてほしい」という指示が両監督から出された。「モーションキャプチャベースの場合、スーパーモデル体型だと、座ったときに膝が身体にめり込んだりして、アクション時のポーズが決まらないので、やや寸詰まりの体型にしています。それでも実際の人と比べると、足は長い方だと思います。僕は以前から、3Dを作画の代用品にしたくないと思ってきました。本作では、アニメシリーズとして最適解のルックやつくり方を神山さんと一緒に探っています」(荒牧監督)。
▲【上】本作のキャラクターは、モデリングとリギング時の身長を170cmで統一し、体型は標準・筋肉質・老人のいずれかをベースにすることで、流用を容易にしている。データのパブリッシュ時にShotgunに入力した本来の身長が参照・反映されるため、簡単に身長を変更できる仕様になっている。ただし、170cmでモデリングするとポケットが大きすぎるなどの問題があり、モデリング作業は全て本来の身長で行われた/【下】Shotgunのアセット管理画面。各キャラクターの身長が入力されており、パブリッシュ時に参照される
「- No.1 - 草薙素子篇」は以上です。
「- No.2 - タチコマ篇」では、新・旧タチコマの制作背景と、両監督による3Dならではの設計・演出にスポットを当てます。合わせてご覧ください。
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会 | ©Shirow Masamune, Production I.G/KODANSHA/GITS2045
info.
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Netflixオリジナルアニメシリーズ
『攻殻機動隊 SAC_2045』
2020年4月23日よりNetflixにて全世界独占配信中
(中国本土を除く)
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』(講談社 KCデラックス刊)
監督:神山健治 × 荒牧伸志
シリーズ構成:神山健治
キャラクターデザイン:イリヤ・クブシノブ
制作:Production I.G × SOLA DIGITAL ARTS
製作:攻殻機動隊2045製作委員会
ghostintheshell-sac2045.jp
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月刊CGWORLD + digital video vol.263(2020年7月号)
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cgworld.jp/magazine/cgw263.html