COLUMN フルカラー3DプリントとZBrush
フルカラー3Dプリントの素晴らしさを多くの人に知ってもらうために、今年7月にホタルコーポレーションさんと3Dプリントによる指輪の制作・販売を行う『ニジイロリング』という企画を起ち上げました。人間が認識できる限界に近い1,000万色以上のフルカラー造形が可能で、とても細かい造形力であらゆる形状を表現できるミマキエンジニアリング社製のUV硬化インクジェット方式3Dプリンタを使用し、多くの著名人・企業に提供していただいたデザインを筆者がZBrushにて3Dプリント向けにモデリングしています。
●ニジイロリング
keisawada.com/nijiiro_ring
- ▲使用しているフルカラー3Dプリンタ「3DUJ-553」は、クリア素材も同時に出力できるのが特徴です。クリア部分にもテクスチャやポリペイントを反映してくれるので、不透明素材と使い分けることで表現の幅が広がります。原宿のティーンに絶大な人気を誇るマルチクリエイター紅林大空さん(左)のデザインは、フルカラーの特性を最大限に活かしたカラフルな仕上がりで海外からの発注も殺到しました
▲『ビックリマン』35周年を記念したスーパーゼウスのモデリングには、布の表現に[Clothブラシ]を、袴の部分に[ダイナミックサブディビジョン→厚み]等、ZBrush 2021の新機能を多用しています。原画の素晴らしさを損なわないよう何度も微調整する必要があったので、修正が容易になる今回の新機能はとても役立ちました
▲家庭用の3Dプリンタで出力する場合には、重力を考え、支えとなるサポートを配置する必要がありますが(上)、細かい部分には入れることができず、出力後取り除くときにサポート痕が残ることがままあります。しかし、このプリンタはサポート材がマユのように360°出力物の周囲を覆うかたちで出力されるため重力を考える必要がなく、またサポート材が水溶性で除去の際は水に浸けるだけで良く、サポート痕が残りません。下画像のバラは、中心の大きな花を浮かせて造形しているため、クルクルと回転させることができるようになっています
ZBrush 2021はアップデート前のβ期間中に開発中の状態で触らせていただきましたが、やはりダイナミクスの登場に驚かされました。今までシワを1本1本スカルプトしていたのが一瞬でリアルにつくることができ、またMicroPolyのおかげで手作業では気が遠くなるような複雑な表現も可能になりました。同時にローポリゴン情報を保持したまま置き換えてくれることもあり、編集作業が楽になっています。今回は紹介しきれませんでしたが、編集可能なインスタンスモデルを配置できるナノメッシュなども強化されており、自分の作品はもちろん、制作途中に飛んでくるクライアントからの無茶な要望にも対応しやすくなったバージョンと言えます。