<2>リアルタイムでのキャラクター表現
安定的な運用のための3Dモデルへの仕込み
ライブは全16曲、全て異なる衣装で視聴者を楽しませてくれたリブドル!だが、激しいダンスや振り付けにも関わらず、どのアングルからの見映えでも、形状が破綻したり、めり込みや貫通が発生したりといった目立った不具合は見受けられなかった。これはひとえに精緻につくり込まれた素体によるもので、リブドル!では頭身や体型が異なるメンバーがいるなか、全ての素体のトポロジーとUVを揃えることでトラブルを回避しつつ、新しい衣装を追加した際の調整コストを抑えている。もちろん、素体の仕様を統一することで、シェーダや異なる環境でのライティングの効果も全メンバーで同じルックとして再現されるしくみだ。陰影は基本的にテクスチャへの描き込みで表現され、顔については環境によって変な影が落ちないように設計されている。ただし、動いたときにリアリティが感じられるよう、髪の毛による落ち影のみリアルタイムで描画されるようになっている。また、色味についてもライティングの影響を受けてリアルタイムに変化する。
リグについてもプライマリは全メンバー共通で、セカンダリは髪の毛については素体のデフォルト、衣装のみ固有となる。揺れものはSpringBoneと物理シミュレーションを使い分けて表現されており、シミュレーションが用いられているのは、髪の動き・スカートのひらひら・胸の揺れなど。フェイシャルはよくあるモーフターゲットではなくボーンアニメーションが組み込まれており、状況に応じてリアルタイムで表情を切り替えている(目パチ・口パクは自動制御)。これらの3Dモデルはミュージックビデオなどの映像でもリアルタイムの生配信でも同じモデルが使用されているが、「光りものなど映像で華美な演出にしたい部分のみ、シェーダを盛ってプラスアルファの表現を施しています」と、CGスーパーバイザーの鮎川浩和氏は語る。リブドル!は年間で10曲分ほどの新規衣装を追加してきており、メンバー6人分の衣装を安定的に供給することを考えた各種仕様になっている。
共通のトポロジーをもったキャラクターモデル
6人のメンバーのキャラクターデザインは、それぞれ異なるイラストレーターによるものだが、3Dモデルとして統一感あるビジュアルに上手く落とし込まれている
▲左から、ローズ・バレット、李清歌、神宮司 玉藻、イザベラ・ホリー、モーシィ、カティア・ウラーノヴァ
▲2周年記念ライブでの同衣装を着たメンバーの見映え
シミュレーションによる揺れもの
前述のように、揺れものはSpringBoneと物理シミュレーションが用いられているが、繊細で複雑な動きが要求される部分はシミュレーションが用いられている
▲2周年記念ライブでの髪の毛とスカートの挙動
アニメ的なルックの構築
▲メンバーのルックは日本人に親しみやすいアニメ的な処理が施されている。見映えを担保するために、ハイライトや固定影などは基本的にテクスチャへの描き込みによるもの。一方、リアルタイムに描画される髪の毛の影は、一律にやや斜め下に落ちるようになっている
▲さらにアニメ的な表現として前髪が透ける処理が入っており、奥にある眉毛や目が透けて見える。これはインハウスのシェーダで表現している
表情のリアルタイム切り替え
ライブの裏方として、音楽や衣装、メンバーの表情など、状況に応じてリアルタイムに各種のコントロールを担うオペレーターが存在する
▲表情切り替えに使用している表情パターンの一部
▲特殊な表情に切り替わった場面。メンバーのキャラクター性に応じて、専用の表情も存在する。ちなみにこのコーナーは浦島太郎をモチーフにしたアドリブ芝居で、台本のない状態で表情を切り替える苦労は想像に難くない
バリエーション豊かなステージ衣装
ライブでは全16曲全て異なる衣装に加え、幕間やちょっとしたコーナーでも衣装替えがあり、視聴者の目を楽しませてくれた
▲カメラの角度によってキラキラ光る部分がリアルタイムに変化するスパンコールやラメ、アニメーションするスカート裏の格子柄など、面白い表現も盛りだくさん
▲アイドルライブでの定番、アンコールでライブTシャツを着て登場