<3>リアルとバーチャルを活かしたステージ
プロが設計したリアルタイムライティング
ライブ会場は実際の大規模なコンサートホールと同様の設備が整えられ、リアリティを高めつつライブをよりいっそう盛り上げる空間演出が施された。今回初めての試みで、最も技術的なチャレンジとなったのがリアルタイムのライティングだという。著名なアーティストのコンサート照明を担当しているプロのデザイナーに設計と監修を依頼し、実際のライブとまったく同じようにセットリストに準じて照明プランを構築。照明の種類や設置場所、光の色や強度、照明を当てるタイミングや動き方などなど、複雑で難解なライティング指示書を紐解き、Unityでひとつひとつ実装していった。カメラについても実際の大規模コンサートさながらに設計され、クレーンやレール、スパイなどの機能をもたせたカメラが約30個ほど用意されている。そこから映し出される30個の映像を放送局のスイッチャーのように制御用のPC上でリアルタイムに切り替えていくわけだが、あまりに数が多いことから曲ごとに使うカメラを限定したプリセットを準備し、8カメ程度をスイッチングする運用になっているとのこと。
ほかにも、ライブを盛り上げる仕掛けはいくつもある。メインステージには大型スクリーンが配置されており、曲ごとに曲調と合わせた映像を映し出すことによって画面を華やげつつ、その曲で表現している世界観を強調。全16曲分の新規映像をつくるだけでも大変な作業だっという。また、バーチャルならではの演出も数多く盛り込まれており、バンド曲では音のリズムにシンクロしてスピーカーの音が出る部分がアニメーションしたり、スクリーンに大写しになったメンバーが消失して実際のメンバーと入れ替わる仕掛けだったり、とんでもない量の風船が乱れ飛んだりと、視聴者の目をおおいに楽しませてくれた。
このように大成功を収めた日本初のワンマンライブだが、現在のリブドル!1期生におけるプロジェクトの進捗度はまだ想定の30%程度だという。リブドル!の特徴である「ナラティブ(インタラクティブ性)」「キャラクター性」「CGのクオリティ」という3つの柱をさらに推し進め、10年20年楽しめるようなIPとしてサポーターの皆さんと共に成長していきたい、と頼氏は語る。リブドル!の今後の展開も目が離せない。
リアルに設計された会場構造
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▲会場のワイヤーフレーム表示
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▲同・レンダリング表示。ステージ上に曲面の大型スクリーン、上空に円形の照明がセッティングされていることが見て取れる。1階の観客席はかなり広い面積が確保され、迫力を演出。2万人分にのぼるサイリウムのランダムな動きはシェーダで構築されており、スピードはパラメータで制御している
▲MotionBuilder内に仕込まれたカメラ。グリッドの中央にいるメンバーを注視するかたちでそれぞれのカメラが配置されている
実際のライブ照明をバーチャルで再現
プロのライティングデザイナーの指示をUnity上のプログラムとして組み込んでいくにあたり、CGのライティングとしてどう設定すればいいのかが非常に難しく、仕様変更への対応も含めて何度もやり取りをくり返したという
▲ライティング指示書のテンプレート。縦軸が照明のID、横軸がタイムラインとなっている。各照明には色やズームなどの挙動がキューナンバーごとに入っており、絵柄を映し出す「ゴボ」の指定もある
▲ライブを華やかに演出するリアルタイムライティング
曲調に合わせたスクリーン映像
曲のイメージに合わせた映像をメンバーの背景にあるスクリーンに流すことで、曲への没入感を高めるのにおおいに貢献
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▲初めてのオリジナル曲『Pre-STAR -Japanese ver.-』。思い出深いMVに合わせたシンプルな図形をサイバーな印象に
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▲『Music Fighter』。音楽に同期して動くイコライザー的なビジュアルを採用
スピーカーのアニメーション演出
▲「もっとバーチャルならではの演出がほしい」という頼氏の鶴の一声で本番直前に急遽差し込まれたのが、バンド曲の演奏中に音のリズムに合わせてアニメーションするスピーカー演出だ。低音によってスピーカーが物理的に振動する様子を、バーチャルなスピーカーの音の出る部分が大きくなるようなアニメーションとしてビジュアル化している
印象的なメンバー登場演出
▲ライブ開始のカウントダウン直後のつかみの演出として、ホログラムのようにスクリーンに大きく映し出されたメンバーが、キラキラと消失するエフェクトを介して実際のステージにいるメンバーと入れ替わるという手法が用いられた。音と消失するアニメーションのぴったり合った気持ち良さも相まって、ライブが始まる前に高ぶった気持ちが一気に弾けるような高揚感を感じさせることに成功している
フィナーレを彩る風船演出
▲アンコール後の最後のMCで、キャッチフレーズの「リブドル! いつでもあなたのそばに!」と全員で叫んだ後、祝福するように風船が空中を舞うというエフェクトが用いられた。ステージをミドルで捉えていたカメラがそのまま引いていくと、大量の風船と客席のサイリウムが映し出され、大成功のカタルシスと感動の余韻を感じさせる見事なエンディングの演出となっていた