2018年の活動開始から、世界で70万人規模のサポーターを抱えるまでに成長を遂げたナラティブ型バーチャルアイドル「ReVdol!」(リブドル!、原題:战斗吧歌姬!)。その活動2周年を記念したライブが『ReVdol! 2nd Anniversary Live Wish -願い-』だ。6人の歌姫による約2時間のステージから、最新のリアルタイム表現を読み解く。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 268(2020年12月号)からの転載となります。

TEXT&EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
© 2020 Happy Elements Asia Pacific Co., Ltd.

公式サイト:www.revdol.com
Twitter:@Re_Vdol
YouTube:www.youtube.com/channel/UC1AYIkgyMfM0UT8xZnvzWGQ
ニコニコ動画:ch.nicovideo.jp/revdol-official
BOOTH:revdol.booth.pm

様々な願いを随所に込めたライブエンターテインメント

中国と日本を拠点としたバーチャルアイドル「ReVdol!」(以下、リブドル!)が活動2周年を記念し、2020年10月11日(日)に日本では初となるワンマンライブ『ReVdol! 2nd Anniversary Live Wish -願い-』をオンラインで開催した。動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」「ニコニコ生放送」にて生配信された本ライブは、これまで応援してきてくれたサポーターへの感謝と、共に夢を追いかけて大きく成長していきたいという「願い」をコンセプトとして構成されており、世界的なコロナ禍という閉塞した状況へのメッセージ的な意味合いも含め、イベント内容はもとより、最新曲『Wish You』という曲名やその歌詞にいたるまで、様々な願いが込められている。

左から、CGスーパーバイザー・鮎川浩和氏、エグゼクティブプロデューサー・頼 嘉満氏、プロデューサー・星野万里氏、エンジニア・大沼勇輝氏(以上、Happy Elements Asia Pacific

ライブの内容自体も非常にエンターテインメント性が高く、バーチャルな存在であるメリットをビジュアル的に活かしつつ、現実世界のアイドルのライブと比較しても何ら遜色のないクオリティに仕上がっていた。リブドル!をプロデュースするHappy Elements Asia Pacific(以下、HEAP)は視聴者の感情の起伏までコントロールする構成や演出プランを練りに練り、現場の進行台本はバージョン25に到達、リハーサルも約10回くり返してライブ当日に臨んだという。演目の中で特に驚いたのがバンド曲で、HEAPのVICONベースのキャプチャスタジオで実際に楽器を持って演奏を行い、Unityベースの配信システムによって楽器音と演奏の動きを完全に同期。エグゼクティブプロデューサーの頼 嘉満氏は「あまりに上手くいきすぎて、リアルタイムでありながら録画のように見えてしまったのが反省点。次は失敗など生ならではの演出も盛り込みたい」と語るほど、高い完成度のライブとなった。ほかにも、著名アーティストのライブを手がけるライティングデザイナーを招いてライティングを設計するなど、新しい試みも行われた2周年記念ライブ。その舞台裏をみていこう。

<1>日本向けに注力してきた最近の活動内容

日本での認知を上げるためライブまで1年かけて準備

2018年の活動開始から2年が経過した今、リブドル!の成長は止まることを知らない。日本におけるTwitterのフォロワー数やYouTubeのチャンネル登録者数はそれぞれ約2万人、世界全体でみるとサポーター数は70万人、YouTubeとbilibili動画を合わせた総動画再生数は7,000万を超える。配信プラットフォームとしても、YouTubeやニコニコ動画をはじめ、SHOWROOMや今回の2周年記念ライブを行なったOPENREC.tv、「17LIVE(イチナナ)」など多岐にわたる。また、スポットではTV番組出演 や映画館での上映会、はては中国でCM出演も果たした。

満を持して行われた今回の2周年ワンマンライブは中国と日本の2ヶ国での開催となり、日本向けのライブではMCや楽曲のほとんどが日本語で行われたのが大きな特徴だ。1周年のワンマンライブは中国のみでの展開だったが、日本語での2周年記念ライブの開催にあたり、そこに至るまでの1年間、日本のサポーター向けに本格的なサービスの拡充を図ってきたという。リブドル!のメンバーは基本的に中国語と日本語が話せるものの、育成型アイドルとしてのレッスン風景や切磋琢磨する様子をドキュメンタリーアニメとしてシリーズ展開する中で、ベースとなっていたのは中国語(日本語字幕)だった。日本のサポーターからの強い要望を受け、まずはドキュメンタリーアニメのシーズン1について、日本語吹き替えを果たす。「アニメ一挙放送後にニコニコ動画で雑談生放送を行なったところ、多くのサポーターから好意的な反響があり、大きな手応えを感じました」(プロデューサー・星野万里氏)。

さらなる取り組みとして、リブドル!と親和性の高いイベントへ積極的に参加。直近では、9月に行われたバーチャルアイドルのライブフェス「Life Like a Live!(えるすりー)」、マンガとアニメの見本市「京都国際マンガ・アニメフェア2020(京まふ)」でトークやステージを披露した。素人感をウリにした VTuberとは一線を画し、アイドルとして完成された楽曲とパフォーマンスを見せた。

サポーターを楽しませる様々な動画コンテンツ

ナラティブ型のバーチャルアイドルとして、サポーターからの投票や応援内容によってその後の展開が変化していくリブドル!。生配信のアーカイブやミュージックビデオ、歌姫「スワン」の選抜メンバーへの道を描いたアニメなど、動画コンテンツとして見ても見どころは盛りだくさんだ

▲ドキュメンタリーアニメ。前述のとおり、シーズン1に関しては日本語での吹き替え版も公開されている

▲【左】『World of the happiness!』、【右】『Cool Girl』のミュージックビデオ。歌姫それぞれのソロ曲もある

▲生配信での何気ないひと言から始まったバンド企画。初めて楽器を持ってから練習を重ねた結果、2回目の生演奏となる2周年記念ライブでの成功へとつながった

日本の大きなオンラインイベントへの参加

2周年記念ライブを前に日本での認知をさらに高めるため、イベントへの参加も積極的に行なった

▲総勢20組67名の人気バーチャルアイドルが集結したライブフェス「Life Like a Live!(えるすりー)」

▲「京都国際マンガ・アニメフェア2020(京まふ)」。京都出身の「神宮司 玉藻」のソロ曲が優先的に披露された

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<2>リアルタイムでのキャラクター表現

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<2>リアルタイムでのキャラクター表現

安定的な運用のための3Dモデルへの仕込み

ライブは全16曲、全て異なる衣装で視聴者を楽しませてくれたリブドル!だが、激しいダンスや振り付けにも関わらず、どのアングルからの見映えでも、形状が破綻したり、めり込みや貫通が発生したりといった目立った不具合は見受けられなかった。これはひとえに精緻につくり込まれた素体によるもので、リブドル!では頭身や体型が異なるメンバーがいるなか、全ての素体のトポロジーとUVを揃えることでトラブルを回避しつつ、新しい衣装を追加した際の調整コストを抑えている。もちろん、素体の仕様を統一することで、シェーダや異なる環境でのライティングの効果も全メンバーで同じルックとして再現されるしくみだ。陰影は基本的にテクスチャへの描き込みで表現され、顔については環境によって変な影が落ちないように設計されている。ただし、動いたときにリアリティが感じられるよう、髪の毛による落ち影のみリアルタイムで描画されるようになっている。また、色味についてもライティングの影響を受けてリアルタイムに変化する。

リグについてもプライマリは全メンバー共通で、セカンダリは髪の毛については素体のデフォルト、衣装のみ固有となる。揺れものはSpringBoneと物理シミュレーションを使い分けて表現されており、シミュレーションが用いられているのは、髪の動き・スカートのひらひら・胸の揺れなど。フェイシャルはよくあるモーフターゲットではなくボーンアニメーションが組み込まれており、状況に応じてリアルタイムで表情を切り替えている(目パチ・口パクは自動制御)。これらの3Dモデルはミュージックビデオなどの映像でもリアルタイムの生配信でも同じモデルが使用されているが、「光りものなど映像で華美な演出にしたい部分のみ、シェーダを盛ってプラスアルファの表現を施しています」と、CGスーパーバイザーの鮎川浩和氏は語る。リブドル!は年間で10曲分ほどの新規衣装を追加してきており、メンバー6人分の衣装を安定的に供給することを考えた各種仕様になっている。

共通のトポロジーをもったキャラクターモデル

6人のメンバーのキャラクターデザインは、それぞれ異なるイラストレーターによるものだが、3Dモデルとして統一感あるビジュアルに上手く落とし込まれている

▲左から、ローズ・バレット、李清歌、神宮司 玉藻、イザベラ・ホリー、モーシィ、カティア・ウラーノヴァ

▲2周年記念ライブでの同衣装を着たメンバーの見映え

シミュレーションによる揺れもの

前述のように、揺れものはSpringBoneと物理シミュレーションが用いられているが、繊細で複雑な動きが要求される部分はシミュレーションが用いられている


  • ▲髪におけるシミュレーション用の骨構造


  • ▲スカートにおけるシミュレーション用の骨構造

▲2周年記念ライブでの髪の毛とスカートの挙動

アニメ的なルックの構築

▲メンバーのルックは日本人に親しみやすいアニメ的な処理が施されている。見映えを担保するために、ハイライトや固定影などは基本的にテクスチャへの描き込みによるもの。一方、リアルタイムに描画される髪の毛の影は、一律にやや斜め下に落ちるようになっている

▲さらにアニメ的な表現として前髪が透ける処理が入っており、奥にある眉毛や目が透けて見える。これはインハウスのシェーダで表現している

表情のリアルタイム切り替え

ライブの裏方として、音楽や衣装、メンバーの表情など、状況に応じてリアルタイムに各種のコントロールを担うオペレーターが存在する

▲表情切り替えに使用している表情パターンの一部

▲特殊な表情に切り替わった場面。メンバーのキャラクター性に応じて、専用の表情も存在する。ちなみにこのコーナーは浦島太郎をモチーフにしたアドリブ芝居で、台本のない状態で表情を切り替える苦労は想像に難くない

バリエーション豊かなステージ衣装

ライブでは全16曲全て異なる衣装に加え、幕間やちょっとしたコーナーでも衣装替えがあり、視聴者の目を楽しませてくれた

▲カメラの角度によってキラキラ光る部分がリアルタイムに変化するスパンコールやラメ、アニメーションするスカート裏の格子柄など、面白い表現も盛りだくさん



  • ▲バンド曲パート。演奏する指の動きまできちんと再現されていた



  • ▲浦島太郎のお芝居コーナーでは水着姿になるサービスも

▲アイドルライブでの定番、アンコールでライブTシャツを着て登場

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<3>リアルとバーチャルを活かしたステージ

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<3>リアルとバーチャルを活かしたステージ

プロが設計したリアルタイムライティング

ライブ会場は実際の大規模なコンサートホールと同様の設備が整えられ、リアリティを高めつつライブをよりいっそう盛り上げる空間演出が施された。今回初めての試みで、最も技術的なチャレンジとなったのがリアルタイムのライティングだという。著名なアーティストのコンサート照明を担当しているプロのデザイナーに設計と監修を依頼し、実際のライブとまったく同じようにセットリストに準じて照明プランを構築。照明の種類や設置場所、光の色や強度、照明を当てるタイミングや動き方などなど、複雑で難解なライティング指示書を紐解き、Unityでひとつひとつ実装していった。カメラについても実際の大規模コンサートさながらに設計され、クレーンやレール、スパイなどの機能をもたせたカメラが約30個ほど用意されている。そこから映し出される30個の映像を放送局のスイッチャーのように制御用のPC上でリアルタイムに切り替えていくわけだが、あまりに数が多いことから曲ごとに使うカメラを限定したプリセットを準備し、8カメ程度をスイッチングする運用になっているとのこと。

ほかにも、ライブを盛り上げる仕掛けはいくつもある。メインステージには大型スクリーンが配置されており、曲ごとに曲調と合わせた映像を映し出すことによって画面を華やげつつ、その曲で表現している世界観を強調。全16曲分の新規映像をつくるだけでも大変な作業だっという。また、バーチャルならではの演出も数多く盛り込まれており、バンド曲では音のリズムにシンクロしてスピーカーの音が出る部分がアニメーションしたり、スクリーンに大写しになったメンバーが消失して実際のメンバーと入れ替わる仕掛けだったり、とんでもない量の風船が乱れ飛んだりと、視聴者の目をおおいに楽しませてくれた。

このように大成功を収めた日本初のワンマンライブだが、現在のリブドル!1期生におけるプロジェクトの進捗度はまだ想定の30%程度だという。リブドル!の特徴である「ナラティブ(インタラクティブ性)」「キャラクター性」「CGのクオリティ」という3つの柱をさらに推し進め、10年20年楽しめるようなIPとしてサポーターの皆さんと共に成長していきたい、と頼氏は語る。リブドル!の今後の展開も目が離せない。

リアルに設計された会場構造



  • ▲会場のワイヤーフレーム表示



  • ▲同・レンダリング表示。ステージ上に曲面の大型スクリーン、上空に円形の照明がセッティングされていることが見て取れる。1階の観客席はかなり広い面積が確保され、迫力を演出。2万人分にのぼるサイリウムのランダムな動きはシェーダで構築されており、スピードはパラメータで制御している

MotionBuilder内に仕込まれたカメラ。グリッドの中央にいるメンバーを注視するかたちでそれぞれのカメラが配置されている

実際のライブ照明をバーチャルで再現

プロのライティングデザイナーの指示をUnity上のプログラムとして組み込んでいくにあたり、CGのライティングとしてどう設定すればいいのかが非常に難しく、仕様変更への対応も含めて何度もやり取りをくり返したという

▲ライティング指示書のテンプレート。縦軸が照明のID、横軸がタイムラインとなっている。各照明には色やズームなどの挙動がキューナンバーごとに入っており、絵柄を映し出す「ゴボ」の指定もある

▲ライブを華やかに演出するリアルタイムライティング

曲調に合わせたスクリーン映像

曲のイメージに合わせた映像をメンバーの背景にあるスクリーンに流すことで、曲への没入感を高めるのにおおいに貢献



  • ▲『HEROINE』。中国風の曲調に合わせた水墨画風



  • ▲『Smile For My Life』。アメリカ出身の陽気なイザベラのソロ曲とあって、ポップなイラスト調



  • ▲初めてのオリジナル曲『Pre-STAR -Japanese ver.-』。思い出深いMVに合わせたシンプルな図形をサイバーな印象に



  • ▲『Music Fighter』。音楽に同期して動くイコライザー的なビジュアルを採用

スピーカーのアニメーション演出

▲「もっとバーチャルならではの演出がほしい」という頼氏の鶴の一声で本番直前に急遽差し込まれたのが、バンド曲の演奏中に音のリズムに合わせてアニメーションするスピーカー演出だ。低音によってスピーカーが物理的に振動する様子を、バーチャルなスピーカーの音の出る部分が大きくなるようなアニメーションとしてビジュアル化している

印象的なメンバー登場演出

▲ライブ開始のカウントダウン直後のつかみの演出として、ホログラムのようにスクリーンに大きく映し出されたメンバーが、キラキラと消失するエフェクトを介して実際のステージにいるメンバーと入れ替わるという手法が用いられた。音と消失するアニメーションのぴったり合った気持ち良さも相まって、ライブが始まる前に高ぶった気持ちが一気に弾けるような高揚感を感じさせることに成功している

フィナーレを彩る風船演出

▲アンコール後の最後のMCで、キャッチフレーズの「リブドル! いつでもあなたのそばに!」と全員で叫んだ後、祝福するように風船が空中を舞うというエフェクトが用いられた。ステージをミドルで捉えていたカメラがそのまま引いていくと、大量の風船と客席のサイリウムが映し出され、大成功のカタルシスと感動の余韻を感じさせる見事なエンディングの演出となっていた



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.268(2020年12月号)
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    第2特集:『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2020年11月10日