>   >  人間の感性に訴える心地良い自然なエフェクトを〜「Houdiniで作るNPRエフェクト&After Effectsでのコンポジット実践解説オンラインセミナー」レポート〜
人間の感性に訴える心地良い自然なエフェクトを〜「Houdiniで作るNPRエフェクト&After Effectsでのコンポジット実践解説オンラインセミナー」レポート〜

人間の感性に訴える心地良い自然なエフェクトを〜「Houdiniで作るNPRエフェクト&After Effectsでのコンポジット実践解説オンラインセミナー」レポート〜

After Effectsによる「衝撃波」コンポジットメイキング

佐々木氏はAEを使う理由について「日本の2Dアニメ業界で使用している人口が多く、共通言語として話が進めやすいからです。デファクトスタンダードとなっている利点は大きいです」と話している。また、その他に「レイヤーベース」、「タイムラインベース」のツールでコマ単位の調整がしやすい点や、プラグインが豊富な点などが挙げられた。特に「気持ちの良い動き」の追求に関しては、タイムラインベースの方が適しているという。

AEのコンポジットでは、レンダリングされた単色塗り分けの素材にリッチな情報量を足して、最終的な画に仕上げていく。このとき、最終的な画から逆算してコンポジットを詰めていくのがポイントだ。

▲同じ素材でも仕上げ方によって見映えが全く異なる。過程で悩まないようゴールをイメージすること大切だ

また、レイヤーベースのツールはレイヤー数が増えると可読性が落ちてしまうが、ラベルを付けた空コンプをつくったり、平面をつくって可読性を高めたりといった工夫をしている。同様に、レンダーキューも見やすくなるよう工夫をしている。「色分けだけだと見にくくなるので、空コンプは意識して入れています」(佐々木氏)。

▲データ管理を工夫して色やラベルで見やすくしている

▲レンダーキューも同様に工夫を

続いて、CGではなくコンポジットで行う処理のうち、DoF(Depth of Field)、リフレクション、画ブレについて解説された。DoFは被写界深度のことで、奥行きを出すために背景をぼかしていく処理だ。厳密にはCGから被写界深度の情報もレンダリングしてコンポジットしていくのだが、NPRではそこまで厳密にせず、感覚的に手動でぼかしていく。こういったアナログな作業は、人間の感覚に訴えて心地良さを与える要素になるという。

DoF以外の「リフレクション」、「画ブレ」、「影」なども同様で、アナログの手作業はコンポジターのセンスが問われるところだ。デジタルでつくられた画でも、随所に「人の手」を加えることで魅力的な画に仕上がっていく。

▲DoFはZ素材を使わなくても、マスキングでそれっぽくなる。2D背景に対してのDoFはコンポジターの腕次第。アナログな手法だ

▲DoFと同様にリフレクションもコンポジットで足す。こちらもアナログな作業で、センスが問われる作業だ

▲画ブレを足す。プラグインはTwitchやフリーのF's ScreenShakeを使用しているとのこと。画ブレを足すと印象値が思いのほか上がってしまうので、ベースのクオリティを見るためにはなるべく後の工程で適用するようにしているという

次に、単色のレンダリング素材を加工して、情報量の多いリッチな画面に仕上げていく工程の解説がされた。従来のアニメの撮影よりも、AEで処理できることが飛躍的に増えているため、作画と同じくらい仕上げに比重をかけるのが現在のメジャーなワークフローだ。単色の作画に素材ごとに異なる色をつけ、ブラーやグローのフィルタワークで情報量を増やし、最後にカラーグレーディングをして仕上げていく。これらの作業は作品のクオリティを左右するほど大切な工程だ。本作例においては、騎士だけのカットに派手な炎のエフェクトが載るとドラマチックになっているのがわかる。エフェクトは画面を魅力的にするだけではなく、ストーリー性を高める効果があるのだ。

カラーグレーディングは、実写素材を使用するVFXよりも強めに行うという。カラーグレーディング用のMagic Bullet Looksの調整レイヤーを複数使い、さらにそれぞれ透明度を変えるなど、細かくコントロールしている。

▲単色の素材にアルファやブラーを使って色に深みを与え、奥行きを出していく

▲同じ単色の素材から情報を引き出し、それぞれ色をつけていく。炎の素材は赤系の色を付けて作成しコンポジットで重ねる。炎は[Deep Glow]などのプラグインでグローを載せており、明度を落としたタタキ素材も加えられている

▲キャラクター素材(エフェクトを載せる前)。当然だが、まだまだ非常にシンプルな状態

▲エフェクトをキャラクターの前後に載せると、画面が飛躍的にリッチになっていくのがわかる。炎のように「光に光を載せる」のは難しいと佐々木氏。スクリーンを載せるだけでは明るくなりすぎてしまうため、載せ方にも工夫が必要だ

▲PBRと比較すると、NPRではフィルタとカラーグレーディングを強めにかける。グレーディングツールはMagic Bullet Looksを使用し、複数の調整レイヤーの透明度を変えながら重ねて少しずつ丹念に調整していく



セミナーを終えて

自身の豊富な経験を基に、ノードベースのHoudiniとレイヤーベースのAEの良いところを組み合わせて、リッチで魅力的なエフェクトを作成していく方法が理解できたセミナーであった。中でも、佐々木氏はデジタルとはいえ人間のアナログ的な感性に訴える「心地良い自然なエフェクト」を心がけていることが印象的だった。「心地良い自然なエフェクト」を実現するためには、見る人とつくる人の「人間の感性」を繋げることが大切であり、その要素として指数関数的な表現が必要となってくるのではないだろうか。

これからHoudiniを学ぶにあたり、佐々木氏は「『技術』か『技術を使った問題解決』か、どちらを優先するかで学び方は変わります。『技術』を優先させる人は、TAやエンジニア向けでゼロからしっかりと学びたい人に向いています。『技術を使った問題解決』を優先する人は、画づくりや他のツールから移行したいという人ですね」と話す。佐々木氏自身は、「技術を使った問題解決」から入り、ある程度Houdiniに慣れたところで「技術」を学んでいったそうだ。技術を優先する場合は国内のHoudiniの書籍、技術を使った問題解決であれば海外のチュートリアルビデオがオススメとのことだ。



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