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MV 『Shooting Star/ TeddyLoid feat.IA』

MV 『Shooting Star/ TeddyLoid feat.IA』

[Topic2]モーショングラフィックスを多用したステージの演出
---スタイリッシュなステージと斬新なエフェクトで魅せる

アニメーション付けした後、MMDデータをAlembic形式でCINEMA 4D(以下、C4D)に読み込み、ステージのモーショングラフィックスが作成される。全体的なイメージは「宇宙や星」。楽曲の前後部分は荒牧氏が担当し、星座の早見表をイメージした球体などをC4Dで組んでいる。一方、後半に関しては千合氏が担当。透明感や表面反射が映えるイメージを荒牧氏と共有し、色味のすり合わせを行いながら、機械じかけのギミックなどを作成している。「C4DはMoGraphに代表されるようにモーショングラフィックス制作に強いツールです。その指向性から情報量の多い映像を制作できますが、今回は自動化しすぎないで、音に合わせるところは手付けで動かすようにしました」と千合氏。MMDのもつ質感に近づけつつ、ブラッシュアップ作業が行われた。

このほか、パーティクルエフェクトについてはVFXデザイナーの山田明広氏が担当。3dsMaxとFumeFXを使用して表現している。グレースケールの濃淡をエミッタ元として、FumeFXでベースとなる流体の動きをシミュレーション。ParticleFlowで書き出したVelocityをパーティクルに変換し、KrakatoaでPRT形式にてキャッシュ化してレンダリングするのだが、レンダリング結果が単調な印象にならないようにMagmaFlowにてパーティクルのVelocity情報をColor情報に変換し、そのRGBの各色にふり分け、波打つ動きの速度に合わせて細かく色を変化させている。モーショングラフィックスにこうした3Dエフェクトが加わることで、より複雑で豊かな表現が実現したと言えるだろう。

また、パーティクル以外のエフェクトも非常に多彩だ。VJソフトのVDMXを使用して出力した映像に効果を加えライブ感を出したり、AfterEffectsプラグインのTIFFEN Dfxを活用して輝度の任意範囲にだけエフェクトをかけるなどの工夫がされた。さらに、ノイズやダメージ表現をあえて加えることで、刺激や驚きを与える要素も取り入れられている。こうした通常とはひと味ちがった手間を荒牧氏と千合氏が競うように加えることで、実験的要素も含んだ、個性が際立つ作品に仕上げられている。アーティストのデザインセンスをダイレクトに活かした、FOVが得意とするエッジの立った表現にぜひ注目してもらいたい。

モーショングラフィックスを活用したステージ

C4DのMoGraphをフル活用することで常に動きのあるステージが作成された。この場面ではクローナーによって放射状に配置したオブジェクトにランダムとディレイエフェクタを使用し、継続的にアニメーションさせている。モーショングラフィックスがキャラクターの身体的な動きと合わさる気持ち良さを重視し、シンボリックな背景と動きの緩急で身体の動きを拡張するような感覚を大事にして制作していたとのこと

▲ランダムエフェクタ設定

▲ディレイエフェクタ設定

▲完成カット

ノイズエフェクトの作成

本作には多種多様なノイズやアナログ感のある意図的な荒れも表現に取り入れられている。無難な仕上げに終わらせたくないという考えから、ある意味、実験的とも言えるエフェクトが加えられた

TIFFEN Dfxを活用したエフェクト

TIFFEN Dfxの「ozone」というエフェクトを使用して画面全体に色彩調整を加えた例。この場合は映像上の輝度の任意範囲をマスクとして選択して、その部分だけに効果をかけることで特徴的なカラコレを行なっている。これは一例ではあるが、本来の使い方とはちがったエフェクトの使用方法だとしても、それがビジュアル的に良いと感覚で判断した場合は、各アーティストの感性に基づいて飛び道具的な使い方をしている。整合性の理屈よりも個のセンスを重要視しているということだろう

VJソフト「VDMX」によるエフェクト

VJとしても活動している千合氏は、通常の映像制作ではなかなか使わないであろうVJソフトを使用して映像にリアルタイムでVJエフェクトをかけ、それを再度キャプチャして完成させている。もともとの表現を分解して再構成するVJの感性を活かした手法だ

▲エフェクト素材

▲完成カット

パーティクルエフェクトの作成 ▲パーティクルは基本的に3ds MaxとFumeFXで作成。FumeFXで流体の動きのシミュレーションをして、その流体シミュレーションのVelocity情報からParticle Flowを使用してパーティクルを発生させた。「カットによっては粒子をキャッシュ化したものを3ds Maxのデフォーマで進路を曲げてイメージ通りに動かすなどの工夫もしています」と山田氏

▲完成カット

コンポジット ▲マルチパスを使用してカラー素材やフレネル素材など、基本は8種類のレイヤーで出力。最終的にはAEでコンポジットしている。ライティングに関してもRGBでマスクを出力し、AE上でコントロールしており、C4D上でのレンダリングコストを下げることに成功している。また前述のノイズ表現のコンセプトと同様に、例えばフィルムの意図してない部分のハレーションのような効果をあえて意図的に入れることで、新しい刺激や驚きに結びつけている

▲After Effects作業画面

▲完成カット



TEXT_峯沢★琢
PHOTO_弘田 充

  • 『Shooting Star/TeddyLoid feat.IA』
    『IA/VT ーCOLORFULー(』PS Vita)
    リリース:発売中
    価格:9,979円(限定版)、5,184円 (通常版)、 4,979円(ダウンロード版)
    ジャンル:リズム ゲーム
    プレイ人数:1人
    CERO:C(15歳以上)
    ia-vt.marv.co.jp

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