写実性と感性のベストバランス〜コンポジットワーク
ヴァーチャルカメラを導入することで、フル CG アニメーションに実写特有のリアリティを持たせることに成功した本作。オフライン編集についても実写プロジェクトと同じ要領で行うことで、実写のライブ感を凝縮することが目指された。
続くコンポジット作業では、「ランカ篇=ナイトシーン、シェリル篇=デイシーン」 という、それぞれのシチュエーションに合わせて、実写特有のニュアンスを加わえることで 2 人の歌姫のリアリティを高めることを心掛けたそうだ。
「カメラの特性を再現することでリアリティを表現したかったので、レンズのミリ数やシャッタースピード、光量などについて、Maya のシーン設定をベースに この条件下で実写撮影をしたらどうなるか を念頭に置きながらコンポジットを行いました。例えば、夜のシーンのランカ篇では高感度カメラを意識しノイズを強めに乗せ、さらに露出時間が長くなると想定しモーションブラーを強めに掛けています。逆にシェリル篇は真昼の設定なのでモーションブラーを弱めにしてシャープな画づくりを目指しました」(HIBIKI コンセプト&ヴィジュアル・スーパーバイザー)。
<シェリル編:ショットブレイク>
STEP 1:カラーパス(シェリル)
STEP 2:V-Ray for Maya による光の方向性を持った GI 素材を重ねた状態
STEP 3:After Effects 上でカラコレした影素材を重ねた状態
STEP 4:V-Ray for Maya による GI 素材(その2)を重ねた状態
STEP 5:さらにフレネルパス等を加えて立体感を出したシェリルの最終ルック
STEP 6:BG 素材
STEP 7:観客モブ(Massive で作成)を追加。モブ素材は 3Delight でレンダリング
STEP 8:デプスマスク。被写界深度の調整には、AE 上で Lenscare を使用
STEP 9:ステージに舞う紙吹雪素材を追加
STEP 10:被写界深度 OFF(パンフォーカス)
STEP 11:被写界深度 ON
STEP 12:全体のトーンを整えた完成形
シェリル自体のコンポジットも基本的にはランカと同じ構造(後述)となっているが、真昼のシュチュエーションということで全体的にフレアを強めに入れ、やや白飛びした画づくりになっている。望遠レンズの場合は Lenscare をい、被写界深度を付けることで奥行き感を強調させている