美しいビジュアル制作は環境構築から。 Intel Core i9-14900K、PROART-RTX4080S-O16G搭載、機能美と造形美を両立した「arkhive Intel Creator PC」を徹底検証。
CG・映像制作に欠かせない大事な仕事道具であるPC。クオリティに直結する投資となるPCの購入となればCPU、GPU、メモリなど機能面はもちろんのこと、デザインにもこだわりたい。arkhive Intel Creator PCはそんなクリエイターにとって最適な選択肢の一つと言えるPCだ。インテル Core i9-14900KとPROART-RTX4080S-O16G、その他のパーツの多くをASUSが提供するPro Artシリーズ製品で構成、高い機能性とデザイン性を両立している。今回は、そんなarkhive Intel Creator PCを、グラフィカルで洗練されたモーショングラフィックスを多数制作しているMULTRAの松岡勇気氏に検証していただいた。
異なるアートスタイルを組み合わせた「ステーションID」制作コンセプト
CGWORLD(以下、CGW):自己紹介をお願いします。
松岡勇気氏(以下、松岡):MULTRAの松岡です。モーションデザイナー、ディレクターとして活動しています。
CGW:松岡さんにはCGWORLD主催イベント『CGWORLD 2023 CREATIVE CONFERENCE』のステーションIDの制作をご担当いただきました。ありがとうございました。改めて、この作品の制作過程について詳しく教えてください。
CREATIVE CONFERENCE / Station ID from MULTRA on Vimeo.
松岡:松岡:「基本的に自由」というお話でしたので、クリエイティブカンファレンスというお題に対して、自分なりに寄り添って制作を追求しました。制作期間は約3週間ですが、MULTRAとしての仕事と並行していたため、体感的には2週間よりもっと短い感覚でしたね。
DCCツールはCinema4D、Illustrator、After Effectsです。2D表現だけでなく、途中で立体的な表現も取り入れているため、3Dシーンの制作をCinema4Dで行っています。
CGW:2Dで表現されたアートワークが3D空間に拡張されるような、面白い展開だと感じました。どのようなワークフローで制作を進めたのでしょうか。
松岡:まずは映像のコンセプトを考えるブレストを行いました。自分にしか作れない表現はなにか、演出をどうするかなどを考えたあと、展開を文字ベースで書いていきます。スクリプトを含めて、約2日で完成させています。
今回は「球体である主人公が、次元の行き来を繰り返しながら、目的地であるCGWOLRD CREATIVE CONFERENCEに辿りつき、飛び込んでいく」という物語を作りました。スタイルの変化が自身の成長であると示しつつ、周りにも同じようにCGWOLRD CREATIVE CONFERENCEを目指す存在があることを複数の球体で示しています。
その後は画像、動画、音楽などイメージに近い要素のリファレンスを収集しました。資料系は全てMiroにまとまっていて、ブレストで洗い出した物語性と紐付いて管理しています。
資料が揃ったらスタイルフレーム制作に入ります。今回はMiroのデータを参照しながら、MULTRAのアートディレクター田平(田平恭生氏)に20枚ほどのスタイルフレームを作成してもらいました。
CGW:字コンテに近いスクリプトからスタイルフレームを起こしていくと。この段階で、ほぼ完成形が見えているのでしょうか。
松岡:そうですね。スタイルフレームは.ai形式で提供してもらっているので、その後After Effectsでシェイプに変換するなどのセットアップを行って、そのままプリビズ作業に入っていきます。3DになるシーンはCinema4Dでプリミティブを配置して作成していきます。3日から5日ほどかけて、簡単なVコンを作成します。
その後はブラッシュアップですね。田平と週に2,3回話し合いながら、アイデア出しやフィードバックを行い、作っては直し、あるいは足していく作業を行いました。最後はAfter Effects側でコンポジットを行って完成となります。
CGW:ワークフローの中で、特に処理負荷の高い作業工程を教えてください。
松岡:Cinema4DのGPUレンダリング(Redshift)とAfter Effectsの最終レンダリングです。今回は試行錯誤を繰り返しながら短期間で作ったので、レンダリングの回数が限られていました。
また、スタイルフレームも、パスが思った以上にある場合、展開に時間が掛かるケースもあります。After Effectsでの作業も含め、メモリも重要になっていました。
美しいビジュアルは環境から。“制作しやすい環境”をMULTRAのオフィスから紐解く
CGW:クリエイターにとってPC性能は最も気にするべき要素ですが、集中して作業できる環境整備も同様に重要だと思います。MULTRAオフィスのコンセプトを教えてください。
松岡:オフィス設計では「同じ素材で揃えすぎない」「ワンフロア完結でコミュニケーションを取りやすくする」という意識があったと弊社の森田から聞いています。テーブルはガラスと鉄の組み合わせであったり、ほかの道具も素材感から注意して選定されています。
例えば、全てが木材でできたデスクがフロアに並んでいた場合、なにか別の要素が入ってくるとすぐに破綻してしまうんです。誰かが自分の好きな人形を置いたり、フィギュアを置いたりすると、揃っていた空間が不揃いになってしまう。でも、異なる素材が組み合わさった異なる形状のデスクが並んでいれば、そこに誰が何を置いても破綻しません。ある意味では伸びしろがあるオフィスなのかな、と思います。
CGW:こうした美意識は制作にも反映されているのでしょうか。
松岡:どうでしょうか?ただ、この空間、このデザインが好きな人が集っているわけで、多種多様な要素が入り混じったこの空間が多様なデザインに影響を与えていると考えることもできます。ただ、どちらが先かは分かりませんね。
CGW:オフィス環境以外に、デバイス面で重要にしているモノやコトがあれば教えてください。
松岡:最も重要なのは椅子とモニターです。特に映像業界の方は、椅子が悪いと身体を悪くしますので、オフィスでも自宅でも、ここは本当に大事にした方が良いんじゃないかなと思っています。モニターは31.5インチのデザイナーモニターを使用しています。4K UHD解像度(3840x2160)で、複数のPCのハブとなる役割を持つ機種になります。
他にデスクにあるのはペンタブレットとStream Deck、マイクとキーボードくらいでしょうか。仕事道具として強いこだわりがあるのは、やはりPC本体とモニターだと思いますね。
ハイエンドPCを使いこなす松岡氏がarkhive Intel Creator PCを検証・評価
CGW:普段からハイエンドマシンを使用して制作を行われていると思いますが、お使いのPCのスペックを教えてください。
松岡:普段使いのPCはCPUがIntel Core i9-13900K、GPUがNVIDIA GeForce RTX 4090、メモリ128GBというスペックです。マザーボードはProArt Z790-CREATOR WIFIで、電源1500W、ケースはFractal DesignのFocus 2 Black Solidです。簡易水冷があり、内部のファンもカスタマイズしています。
ちなみに、自分で使うPCでProArtのマザーボードを選択した理由は「クリエイター向け」と謳われていたプロ向けの機種だったからです。あとは昔購入したGPUを2枚挿したかったという理由と、スロット数が選択のポイントになっていました。
CGW:今回使用していただいたarkhive Intel Creator PCは、Intel Core i9-14900Kと、GeForce RTX 4080 SUPERのセットアップで、クリエイターのニーズに最適化された機種となります。松岡さんには、arkhive Intel Creator PCでステーションIDデータを使用しPCの性能を検証していただきましたが、普段使用されているPCと比較した際の率直なご感想をお聞かせください。
松岡:実際に制作ツールを触ってみて、かなり快適に動くなと思いました。価格帯を考えても十分すぎる出来です。Cinema4Dでは特にGPU性能が重要なので、今回はこの部分の検証を行ってみました。
映像の後半に大量のオブジェクトが出てくる箇所がありますが、この部分を48フレームでレンダリングした際、RTX 4090搭載PCでは1時間37分、検証機では1時間44分という結果が出ています。使用したレンダラーはRedshiftですので、単純にGPU性能差になります。この7分差をどう見るかですが、私は「価格差を考えると、かなり良い」と感じました。
CGW:CPUについては1世代差がありますが、これについてはいかがでしょうか。
松岡:After EffectsのレンダリングはCPU依存ですが、CPUレンダリングは検証機の方が圧倒的に速かったです。たった1世代の差でもここまで違うのか、と感じました。After Effectsでコンポジットしたファイルをレンダリングした際の時間は、普段使いのPCが36秒、検証機は20秒くらいでした。
CGW:このほか、メモリやそのほか機能面について感じたことありましたら教えていただけますか?
松岡:メモリは無理を言ってMAXの192GBまで積んでいただきました。ちょっとオーバースペックだったかもしれません。After Effectsの場合、メモリが不足していると、映像の長さによってはプレビュー用のキャッシュが乗り切らないケースも多く、プレビューが遅延してしまいます。今回はさすがに、まったく過不足なかったですね。
また、今回はIllustratorとAfter Effects、Cinema4D、これに加えてリファレンスを並べていたPureRefやブラウザなど、ツールを同時起動しながら制作を行っていました。こうした並行作業においてもメモリは重要です。あとはストレージですが、これは速ければ速いだけレンダリングや作業開始時のスタートが高速化します。総合的にスペックが高いことで、「あのプロジェクトはデータが重いから嫌だな、開きたくないな」という細かいストレスもなくなりました。
CGW:検証機はProArtシリーズに追加されたケース「PA602 ProArt Case」や、CPUクーラー「ProArt LC 420」が採用されたモデルになります。グラフィックスカードも「PROART-RTX4080S-O16G」と徹底して統一されていますが、筐体を含めたPC全体の評価はいかがでしょうか。
松岡:PCケースについては、造形美と機能美を兼ね揃えた非常に良いデザインだと感じています。私がケースに関して、最も重要視するのはエアフローです。特にGPUなどは熱を持ちやすく、冷却性が性能に直接関わっているので、作業の快適性もかなり変わるんですよね。
通常、PCを設計する場合は、ファンの配置や水冷・空冷の選択、静音性をどの程度気にするかによって総合的な冷却性が決まります。arkhive Intel Creator PCは、フロントから吸気する構造が非常に良く出来ており、あとからなにか付け足す必要性を感じないくらい十分であるように感じました。「あらかじめしっかり作ってあるので、そこは気にしなくて良いですよ!」という気遣いのようにも思えましたね。
CGW:静音性についてはどのように評価されましたか。
松岡:ファンの静音性も問題なく、普段はかなり静かです。さすがにRedshiftでレンダリングを回し始めると音はしますが、そこはどの機種も同じですからね。気になったのは、本機種はフロントパネルにファンのスピードコントロールができるボタンがついていて、ボタンを押すとMAXで回してくれるようになります。今まではファンのスピードをコントロールするソフトウェアを入れて制御していましたが、ハード的にコントロールできるのはすごく良いですね。
フロントパネルといえば、電源ボタンにロックが付いているため、間違えて消してしまうようなトラブルも起きにくいと感じました。USB-CやThunderBolt 4などの接続面も柔軟で、過不足ないと感じています。
CGW:今回はProArtのモニター「ProArt Display PA329CV」も併せてご使用いただきました。デザイナー視点でコメントを頂ければと思います。
松岡:Adobe RGBとsRGBが100%カバーされていることと、HDR-10に対応しているため、業務として映像制作を行う上での安心感がありました。スリム設計でベゼル(モニター画面の縁に当たる部分)が狭いのも見やすくていいですし、地味ですが重要なポイントとして消費電力が36Wと少ないのも嬉しいです。Macユーザーであるアートディレクターの田平にも見てもらったのですが、色味もまったく違和感がないようで、かなり評判は良かったです。
ProArtのブランド自体がそうなのかもしれませんが、なんとなく「クリエイターが求める美意識」を感じるんですよね。全体的にはスタイリッシュなデザインですが、細かいエッジや丸みの角度など、要素を1つずつ見るとかなり綺麗に作られていることが分かります。こういう機材は仕事場に置くだけでテンションが上がりますよね。
CGW:最後に、ProArtシリーズ全体のご感想をお聞かせください。
松岡:「ProArtすごいんだな」というのが率直な感想です。今まではProArtといえばマザーボードが有名なイメージでしたが、ProArtで一式揃えるという選択肢が生まれたことの意味は大きいと思います。これまでは各パーツのメーカーまでは注意深く気にしていませんでしたが、今後カスタマイズなどを行う際もProArtは意識せざるを得ないと感じました。
arkhive Intel Creator PCはデザインもいいですし、電源ロック機能やファンコントロールなど機能も多く、なによりエアフローがしっかりしています。クリエイターにとってはいい選択肢なのではないかと自信を持って言えると思いますね。
CGW:ありがとうございました。
arkhiveのProArtキャンペーン
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arkhive Intel Creator PC
- PCケース
PA602 ProArt Case
- マザーボード
ProArt Z790-CREATOR WIFI
- 電源
TUF Gaming 1000W
- CPU
Intel Core i9-14900K
- CPUクーラー
ProArt LC 420
- メモリ
192GB (DDR5 48GBx4)
- ストレージ
2TB NVMe SSD
- VGA
PROART-RTX4080S-O16G
- OS
windows 11 Pro
- モニター
ProArt Display PA329CV