>   >  ヴァーチャルカメラで切り開く和製 CG アニメの新次元〜『FEVER マクロスF』PR映像 "超時空スーパーライブ"(後編)
ヴァーチャルカメラで切り開く和製 CG アニメの新次元〜『FEVER マクロスF』PR映像

ヴァーチャルカメラで切り開く和製 CG アニメの新次元〜『FEVER マクロスF』PR映像 "超時空スーパーライブ"(後編)

合理性を踏まえた上で、最終的にはアーティストの感性が決め手になる

本プロジェクトでは色味の階調表現にひときわ注意を払ったため、コンポジット作業には OpenEXR にネイティブ対応している NUKE を使うという案もあったという。しかし、制作時は 『劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~』(2011)プロジェクトも同時並行で動くなど、結果的にかなりタイトなスケジュールになったこともあり、日頃から使い慣れた After Effects を選択したそうだ。

「写実性の高い映像表現は多くあると思いますが、物理的な正確さに囚われてしまうと、フラットに見えてしまう危険が出てきます。そこで、画面に華を添えてくれるのが HIBIKI 君です。キャラクター・アニメーションを魅力的に仕上げる上ではアニメーター独自の感覚が重要になると言われていますが、コンポジットワークについても同様でコンポジター独自のセンスが求められると常々感じています。そのセンスとは、テクニカルな知識はもちろんですが、それ以上にその人の創造力に委ねる部分が多いのではないでしょうか」そう語るのは八木下氏。
言うまでもなく、コンポジットワークを行う上では合成の原理や画面内の情報に号整理を持たせるための知識が欠かせない。例えば、本作のようなコンサートシーンであれば実際にライブを観に行ったり、ライブ映像を参考にすることが成功への近道となるが、単純にそれらを模倣するだけでは魅力的には仕上がらない。物理的な根拠を念頭に置きながらも最終的な画づくりは、担当デザイナーがそれまでに得た知識や経験を下にその感性をいかんなく発揮することで初めて魅力的な映像に仕上がるわけだ。
本プロジェクトの場合、特にランカ篇では"観る人の感性に訴える光のページェント"という極めて感覚的な要素が必要だったため、ステージ演出用のスポットライトや観客が持つペンライトなどの光の演出を調整する上で HIBIKI 氏の感性が最大限に発揮された。

<ランカ編:ショットブレイク>

STEP 1:カラーパス(ランカ)

ベースカラー素材

 

STEP 2:V-Ray for Maya による光の方向性を持ったグローバルイルミネーション(以下、GI)素材を重ねたもの

GIを重ねた

 

STEP 3After Effects 上でカラコレした影素材を重ねたもの

カラコレ素材を重ねた

 

STEP 4V-Ray for Maya による GI 素材を重ねたもの

ベースカラー素材

 

STEP 5:フレネル等を重ねて立体感を出したランカの完成ルック

ランカ完成

 

STEP 6:BG 素材

ステージ背景

 

STEP 7:被写界深度用のデプスマスク。被写界深度には AfterEffects 上で LensCare を使用

LenzCareを使用

 

STEP 8:被写界深度 OFF(パンフォーカス)

被写界深度OFF

 

STEP 9:被写界深度 ON

被写界深度ON

 

STEP 10:完成形

完成画像

ランカのカラー素材に V-Ray for Maya によるオクリュージョン素材やフレネル素材などを重ね合わせることで、立体感や柔らかさを強調させている。フォグライトの演出には当初ボリュームライトを利用していたがレンダリング負荷が大きかったため、最終的にはムービングライトの設定を行なった後に Maya からライトの位置データを出力し、Trapcode LUX を使用して合成している。その他に、光の表現には Optical FlareKnoll Light Factory も重宝したとのこと。スポットライトなどは本来カメラを通すと白飛びし色味もそれほど出ないが、『ランカ』篇ではキャラクターを引き立てるべく意図的に彩度を高めに設定された

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