目的を達成してなお、
オリジナルアプリ開発は続ける
コンセプト的にもビジュアル的にも質が高く、作り手としても満足のいくアプリのみをリリースし続けるスポーク。アプリストアでフィーチャーされることも度々で、『おてつだいプリンセス!』については、iOSアプリの"Best of 2015 今年のベストApp"にも選出された。
▲Best of 2015 今年のベストAppを受賞
それでも、現状ではビジネスとしてアプリ単体で収益が上がるといった状態ではない。また、本質的にそれを追求することもあまり考えておらず、「親子ともどもユーザーに楽しんでもらいつつ、あくまで我々としてはテスト的な意味合いで続けている」と滑川氏。
何よりこれらオリジナルコンテンツ3作をつくる過程において、デザイナー/プログラマー問わず、スタッフ全員が何がしかの役割でアプリ開発に携わることができ、「本来の目的である"FLASHからUnityへの、いま求められている開発環境への移行"が極めて順調に行えたことが最大の収穫」という。
さらには、肌感覚としてのアプリマーケットにおけるユーザーの評価や規模感、各カテゴリごとの特徴、無料アプリと有料アプリの違い、そして自社コンテンツ網での誘導による集客効果など、そこから得られるものは技術的な収穫だけではない。オリジナルコンテンツを持っているからこそ手に入るさまざまな情報は、そのまま主業務であるコンテンツの受託業務にも活かすことができる。アプリ単体でビジネスとして見るのではなく、自らがコンテンツを持つことが次の一手になる、という考え方だ。
「とはいえ、オリジナルコンテンツも収益化できるのであればそれに越したことはないとは思っていますよ(笑)。なのでもちろん次の作品も準備していますし、そこではどんな施策を取ってみよう、といったことも考えています。ただあくまで、自分たちがやりたいものを、自分たちがいいと思う品質で出す、いまはそれが一番ですね」(鹿島氏)
通常業務を抱えつつ、品質にも妥協せず開発を続けているため、現在は定期的なアプリのリリーススケジュールも組まれていないが、次回作のビジュアルはできあがりつつあるようだ。今度もまた、子どもにとって定番として楽しめるテーマから「でんしゃ」、そして「おばけ」を選んできている。
▲開発中の新作タイトル『おばけれっしゃ』(仮)。無料アプリとしてリリース予定
▲開発中:おばけれっしゃ
URL:http://spoke.co.jp/apps/train
市場規模や価格設定感、そしてそのモラル的な部分との兼ね合いなどから、子ども向けのアプリ、知育アプリなどは、ワールドワイドでの普及を目指すレベルでない限り、ビジネスとしては成立しづらいジャンルでもある。
とはいえ、「とりあえず10本は出さないとしょうがないだろう、と考えているので、まずはそれが目標」と滑川氏は今後の展開にも前向きだ。
筆者個人としても、自宅に帰れば好奇心溢れる三歳児がいる身。子ども向けに知的で楽しく、そしてビジュアル的にもセンスあふれる日本製アプリが、スポークの次回作を含め今後ますます出てくることを心待ちにしたい。
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TEXT_SADAMU TAKAGI(@zetto_san)