CASE 03
エクステリアシーンの検証
●検証条件
CASE02とは反対に、全体で2,561万ポリゴン、16万1,200個のインスタンスオブジェクトを持つ大容量シーンファイルを用意し、レンダリングを行なった。ライトは上空からのイメージベースドライト1灯のみとなっている。

本検証で最も目をひくのはOctaneの結果だ。「コロッサスPC」と「MousePro」では検証が中断している。これはGPUレンダラのシーンファイルのデータをビデオメモリ上に展開してからレンダリング処理を行う特性に起因している。「コロッサスPC」のビデオメモリは2GB、「MousePro」は4GBしかないため、データフローが発生して処理が中断してしまったのだ。一方Redshiftではデータがビデオメモリを超過した場合でも、メインメモリを併用してレンダリングを継続できる「Out of Core」機能のおかげで処理は完了した。(Octaneにも同様の機能があるが、テクスチャにしか適用されず、ジオメトリには適用されない)。「それでもビデオメモリが16GBの『DAIV』では処理が終了しており、Redshiftよりも良いスコアを出しています。しかしCPUレンダラのArnoldには及びませんでした」(澤田氏)。このように大容量ファイルのレンダリングではCPUレンダラの方が全般的に好結果だ。一方、GPUレンダラを活かすには一定以上スペックは必須のようだ。

※本稿の各検証ではレンダラ後のクオリティは無視し、各レンダラ推奨の初期設定で行なっている
CASE 04
インテリアシーンの検証
●検証条件
最後に行われたのが実際の静止画CG制作で想定される程度のシーンファイルだ。148万ポリゴンと軽めの内容だが、87灯のエリアライトと53枚の4Kテクスチャが使用されており、複雑な照明計算が求められる。

CPUレンダラのArnoldとV-RayではCPU性能に比例して処理時間が短縮されている。しかし「MousePro」と「DAIV」で価格相応の差がつかなかった。一方でDAIV搭載のQuadro P5000の強みが如実に出た結果となった。Octaneについては「コロッサスPC」で2時間18分かかったレンダリング処理が、「DAIV」では19分と最高スコアをたたき出したからだ。Redshiftも「コロッサスPC」、「MousePro」では他と同等レベルだが、「DAIV」で23分とOctaneに迫る勢いを見せた。Quadro P5000がGPUレンダラの強みを最大限活かす結果となったといえるだろう。「CASE03と異なり、ジオメトリに対してテクスチャ容量が大きいシーンファイルなので、Octaneの『Out of Core』機能が効き、いずれのマシンでも完走しています。しかしビデオメモリに入りきらないデータをメインメモリに転送するだけで時間がかかり、低スペックPCでは実力が発揮できなかったようです。しかし16GBのビデオメモリを搭載している『DAIV』ではデータがすべて収まったので、この速度が出たのだと思います」(澤田氏)

※本稿の各検証ではレンダラ後のクオリティは無視し、各レンダラ推奨の初期設定で行なっている
検証を終えて
新世代のPCパーツでレンダラのパフォーマンスは向上
総じてレンダラの特性が良くわかる検証結果となった。第一に軽量データではGPUレンダラ、重量データではCPUレンダラが向く。フルCG映画などポリゴン数もオブジェクト数も巨大なデータではArnoldが有効だ。逆にテクスチャ容量の割合が多い静止画データではOctaneが劇的な効果を見せた。「ハリウッドのCG映画でArnoldのシェアが高いのも納得です。逆に短期間での制作が求められる静止画CGでは、Octaneの高速レンダリングが貢献しそうです」(澤田氏)。
ただしOctaneではGPU性能と共に十分なビデオメモリを用意すること。Redshiftではビデオメモリの割当容量など、事前設定に注意する必要がある。これに対してArnoldは設定項目が少なく、CGデザイナーでも使いやすいが、そのぶん高額だ。設定次第で性能向上が見込め、価格もこなれているV-Rayは汎用的......。いずれにせよ用途に応じたハードウェア構成が求められる。BTOで幅広いカスタマイズが可能なマウスコンピューターは、その良き礎となるだろう。
■まとめ01:CPUレンダラはどの条件でも安定的なパフォーマンスを発揮
02:十分なビデオメモリでGPUレンダラのパフォーマンスは劇的に改善!
03:BTOパソコンで用途に応じたハードウェア構成を推奨
TEXT_小野憲史
PHOTO_大沼洋平