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注目度の高い4レンダラ V-RayArnoldRedshiftOctane Render 。それぞれ特性が大きく異なる製品だが、パフォーマンスを十二分に発揮させるためには、一体どんなハードウェア構成が適切なのか?今回、コストパフォーマンスの高いクリエイター向けPCを発売する マウスコンピューター の協力を受け、価格帯の異なる2台のPCを構成。CGWORLD224号(2017年3月10日発売号)レンダラ特集にてMayaレビューを行なったコロッサス澤田友明氏に、社内PCとあわせてパフォーマンス検証をしてもらった。

注目の4レンダラを4つの検証条件、3つのハードウェア構成で徹底検証

ゲーム・映画・イベント向け映像と、さまざまな分野でハイエンドなCG映像を制作・提供しているコロッサス。プリレンダーからリアルタイムまで、数々の大作案件で腕を振るってきた。近年では映像制作に留まらず、最新レンダラやCGツールのコストパフォーマンス計算やリスク検証、レンダリングセミナーなども行なっている。

2017年に創業10周年を迎えるなど、変化の激しい業界で確かな評価を勝ち得てきた老舗企業だ。そんな同社ではCG制作で長年BTOマシンが使用されている。同社シニアデザイナーの澤田友明氏は「メーカー製PCに比べてコストパフォーマンスが高く、各々の業務に最適なハードウェア構成が選べるのが魅力です」と語る。実際、レンダリング用途では必須となる大容量メモリも、モデリング用途に特化するなら、そこまで必要ではない。筐体デザインが向上し、魅力的な製品が増えてきている点も注目だという。

澤田氏のコメントを裏づけるように、業界ではこの数年でメーカー製PCからBTOマシンへの転換が進んでいる。パーツのスペックや信頼性の向上、費用対効果の追求などが主な理由だ。

そうした中において国内生産にこだわるなど、高い品質と手厚いサポートで幅広い支持を得ているのがマウスコンピューター。クリエイター向けブランド「DAIV」、法人向けブランド「MousePro」を展開し、多くのデジタルアーティストの片腕となって活躍している。本稿ではそんなマウスコンピューターと澤田氏の協力を得て、特集で登場したCPUレンダラの「V-Ray」、「Arnold」、GPUレンダラの「Redshift」、「OctaneRender(以下、Octane)」を適切に活用するためのハードウェア構成を探るベンチマーク検証を行なった。

機材は価格帯、構成の異なるマウスコンピューターの二台とコロッサスの社内PCを用いた。作業内容、レンダラ、ハードウェア構成を変えることでどのような結果が得られるだろうか。レンダラを活用するための適切なハードウェア投資が見えてくるだろう。

検証ハードウェアについて

今回、検証のために用意されたPC群のスペックは下記の通りだ。コロッサスの社内PCは2012年発売当時のもので、グラフィックスボードのみ2013年に換装され、現在もショットワーク全般で現役マシンとして使われている。これに対してマウスコンピューター側では法人向けPCの「MousePro」( 約20万円)と、クリエイターPC「DAIV」(約60万円)を用意。これらに対して用途別のベンチマークを取り、差異を検証しようという趣旨だ。

「20万円という価格設定はプロダクションがPCを新規購入する上で標準的なものです。『MousePro』のハードウェア構成は、その意味でも企業のニーズに最適な構成になっていますね。CPU、GPU、メモリいずれも一般的なゼネラリスト型のデジタルアーティストの作業にとって十分なスペックといえるでしょう。ただし、ストレージについては個々の作業はまだまだローカルにファイルをコピーした上で行うことが多いので、ハードディスクが増設されるケースも多いと思います」(澤田氏)。

これに対して「DAIV」はPascal世代GPUのグラフィックスボード「Quadro P5000」を搭載したハイスペックモデル。CPUにも6コア/12スレッドのCore i7-6800Kを搭載するなど、非常に尖った構成だ。「今回の検証で明らかになりましたが、Quadro P5000の性能を活かせるレンダラをフル活用するなら夢のような構成ですね。一方でCPUとグラフィックスボードを換装し、汎用性を広げつつ価格を下げたいニーズがあるかもしれません。そういった時でもBTOであれば幅広く対応でき安心です」(澤田氏)

MousePro-T396GM2-WS-EXP

  • ● OS:Windows 10 Pro 64ビット
    ● マザーボード:インテル H110チップセット( Micro ATX / DDR4 / SATA 6Gbps 対応ポート×4 )
    ● CPU:インテル Core i7-6700K プロセッサー( 4コア / 8スレッド / 4.00GHz /TB時最大4.20GHz / 8MBキャッシュ )
    ● GPU:NVIDIA Quadro M2000/4GB
    ● メモリ:32GB[ 16GB×2 ( PC4-17000 / DDR4-2133 ) / デュアルチャネル ]
    ● ストレージ:SSD 480GB
    ● 電源:500W (80PLUS Silver)
    ● 価格(税・送料別)¥181,600
    ※型番、構成、価格は2017年2月現在

DAIV-DQX710U5-SH5

  • ● OS:Windows 10 Home 64ビット
    ● マザーボード:インテル X99 チップセット インテルRX99 チップセット
    ( ATX / SATA 6Gbps 対応ポート×10 /M.2スロット×1 ※SATA×2 排他接続 )
    ● CPU:インテル Core i7-6800K プロセッサー( 6コア / 12スレッド / 3.40GHz / TB時最大3.60GHz / 15MBキャッシュ )
    ● GPU:NVIDIA Quadro P5000/16GB
    ● メモリ:64GB[ 8GB×8 ( PC4-19200 / DDR4-2400 ) / クアッドチャネル ]
    ● ストレージ:SSD 480GB/HDD 3TB
    ● 電源:700W(80PLUS Bronse)
    ● 価格(税・送料別)¥601,800
    ※型番、構成、価格は2017年2月現在

コロッサス社内使用PC

● OS:Windows 7 64bit
● マザーボード:インテル H77チップセット
● CPU:インテル Core i7 3770K (4コア/8スレッド/3.5GHz)
● GPU:Quadro 4000/2GB
● メモリ:32GB
● ストレージ:SSD 250GB/HDD 1TB
● 電源:500W

「MousePro」は標準的なミニタワー筐体が使用されている。ミニタワーとはいえ、Quadro M4000のような大型グラフィックスボードも搭載でき、拡張性は十分だ。これに対して「DAIV」ではスタジオ内での移動を想定し、ハンドルが標準搭載されている。オプションでシャーシ後方下部にキャスターを設置することも可能だ。傷や指紋が目立ちにくく、タフな用途に耐えうるように、全体をマットな質感で統一。一部にアルミパーツも採用されている。シャーシ下段のフロントパネルはツール不要で着脱でき、パネル内に収納された防塵フィルタも丸洗い可能だ。「現場では業務内容に応じて頻繁に席替えが行われることが多いので、ハンドル付きの筐体は非常に実用的ですね」(澤田氏)

CASE 01
2.62GBのMayaシーンファイルを開くのに掛かった時間

●検証条件

はじめにMayaのシーンファイルを展開するのにかかった時間を計測した。なお、以下すべての検証は静止画で行われ、レンダリングサイズは1,920×1,080ピクセルに統一。レンダラの設定はデフォルトのままとしている。

大容量シーンファイルの展開速度に影響を与える要件として考えられるのは「CPUの世代」、「SSDの転送速度」、「マザーボードの世代」などだ。検証結果でも「DAIV」、「MousePro」、「コロッサスPC」の順に時間がかかっており、順当な結果だと言える。中でもポイントは「DAIV」と「MousePro」の差異だ。両PCともストレージの容量・スペックは480GBで変わらない。これに対してCPUは「DAIV」がハイエンド向けのCore i7 6800K、「MousePro」がミドルレンジのCore i7 6700Kとなっている。前者は6コア12スレッド、後者は4コア8スレッドだが、クロック周波数だけでみれば、3.4GHzに対して4.0GHzと、後者の方が上回っている。もっとも両者のソケットには互換性がなく、「DAIV」ではマザーボードにX99チップセット、「MousePro」はH110チップセットが搭載。つまりCPUだけでなく、マザーボードの性能も関係していると考えられるのだ。「この検証からわかるように、大容量ファイルを中心に扱うスタジオでは、『DAIV』の導入が効果的でしょう」(澤田氏)

CASE 02
シンプルシーンの検証

●検証条件

異なるマテリアルを持つ3体の静物と背景オブジェクトに対して上方からエリアライトを1灯だけ投射している。各モデルデータは実物を3Dスキャナで読み取ったもので、合計268万ポリゴンとなっている。

本検証でもPCの性能差がレンダリング時間に綺麗に反映されている。特にCPUレンダラのArnoldとV-Rayよりも、GPUレンダラのRedshiftとOctaneの方が良いスコアを出している点が印象的だ。なおOctaneには処理負荷の大きいPMCモードと、より効率的に動作するPath Traceモードがあり、本検証では双方が掲載されている。ここでも注目したいのが「DAIV」と「MousePro」の差異だ。特にArnoldとV-Rayではレンダリング時間が15~30%減のちがいでしかない。PCの価格差が約3倍あることを考えると、少々物足りない結果だ。これに対してRedshiftとOctaneでは共に50~60%減と、より効率的にハードウェアの性能を引き出している。「本検証では比較的軽いシーンファイルを使用しています。SSD:480GBの結果とも比較して欲しいのですが、これくらい軽いデータだとCPUレンダラよりもGPUレンダラの方が効果的です。当然ハードウェア構成においても、グラフィックスボードの違いが重要になるでしょう」(澤田氏)



※本稿の各検証ではレンダラ後のクオリティは無視し、各レンダラ推奨の初期設定で行なっている [[SplitPage]]

CASE 03
エクステリアシーンの検証

●検証条件

CASE02とは反対に、全体で2,561万ポリゴン、16万1,200個のインスタンスオブジェクトを持つ大容量シーンファイルを用意し、レンダリングを行なった。ライトは上空からのイメージベースドライト1灯のみとなっている。

本検証で最も目をひくのはOctaneの結果だ。「コロッサスPC」と「MousePro」では検証が中断している。これはGPUレンダラのシーンファイルのデータをビデオメモリ上に展開してからレンダリング処理を行う特性に起因している。「コロッサスPC」のビデオメモリは2GB、「MousePro」は4GBしかないため、データフローが発生して処理が中断してしまったのだ。一方Redshiftではデータがビデオメモリを超過した場合でも、メインメモリを併用してレンダリングを継続できる「Out of Core」機能のおかげで処理は完了した。(Octaneにも同様の機能があるが、テクスチャにしか適用されず、ジオメトリには適用されない)。「それでもビデオメモリが16GBの『DAIV』では処理が終了しており、Redshiftよりも良いスコアを出しています。しかしCPUレンダラのArnoldには及びませんでした」(澤田氏)。このように大容量ファイルのレンダリングではCPUレンダラの方が全般的に好結果だ。一方、GPUレンダラを活かすには一定以上スペックは必須のようだ。



※本稿の各検証ではレンダラ後のクオリティは無視し、各レンダラ推奨の初期設定で行なっている

CASE 04
インテリアシーンの検証

●検証条件

最後に行われたのが実際の静止画CG制作で想定される程度のシーンファイルだ。148万ポリゴンと軽めの内容だが、87灯のエリアライトと53枚の4Kテクスチャが使用されており、複雑な照明計算が求められる。

CPUレンダラのArnoldとV-RayではCPU性能に比例して処理時間が短縮されている。しかし「MousePro」と「DAIV」で価格相応の差がつかなかった。一方でDAIV搭載のQuadro P5000の強みが如実に出た結果となった。Octaneについては「コロッサスPC」で2時間18分かかったレンダリング処理が、「DAIV」では19分と最高スコアをたたき出したからだ。Redshiftも「コロッサスPC」、「MousePro」では他と同等レベルだが、「DAIV」で23分とOctaneに迫る勢いを見せた。Quadro P5000がGPUレンダラの強みを最大限活かす結果となったといえるだろう。「CASE03と異なり、ジオメトリに対してテクスチャ容量が大きいシーンファイルなので、Octaneの『Out of Core』機能が効き、いずれのマシンでも完走しています。しかしビデオメモリに入りきらないデータをメインメモリに転送するだけで時間がかかり、低スペックPCでは実力が発揮できなかったようです。しかし16GBのビデオメモリを搭載している『DAIV』ではデータがすべて収まったので、この速度が出たのだと思います」(澤田氏)



※本稿の各検証ではレンダラ後のクオリティは無視し、各レンダラ推奨の初期設定で行なっている

検証を終えて
新世代のPCパーツでレンダラのパフォーマンスは向上

総じてレンダラの特性が良くわかる検証結果となった。第一に軽量データではGPUレンダラ、重量データではCPUレンダラが向く。フルCG映画などポリゴン数もオブジェクト数も巨大なデータではArnoldが有効だ。逆にテクスチャ容量の割合が多い静止画データではOctaneが劇的な効果を見せた。「ハリウッドのCG映画でArnoldのシェアが高いのも納得です。逆に短期間での制作が求められる静止画CGでは、Octaneの高速レンダリングが貢献しそうです」(澤田氏)。

ただしOctaneではGPU性能と共に十分なビデオメモリを用意すること。Redshiftではビデオメモリの割当容量など、事前設定に注意する必要がある。これに対してArnoldは設定項目が少なく、CGデザイナーでも使いやすいが、そのぶん高額だ。設定次第で性能向上が見込め、価格もこなれているV-Rayは汎用的......。いずれにせよ用途に応じたハードウェア構成が求められる。BTOで幅広いカスタマイズが可能なマウスコンピューターは、その良き礎となるだろう。

■まとめ

01:CPUレンダラはどの条件でも安定的なパフォーマンスを発揮

02:十分なビデオメモリでGPUレンダラのパフォーマンスは劇的に改善!

03:BTOパソコンで用途に応じたハードウェア構成を推奨






TEXT_小野憲史
PHOTO_大沼洋平