Topic 2 ショットワーク
作画のノウハウを採り入れながらCGの独自性を追求していく
3DCGが介在するカットは、1話あたり約200を基準にしているそうだが、先述のとおりデジタル作画も併用しているため、絵コンテの段階で振り分けが行われている。ただし、シーンやカットの内容に応じて臨機応変に使い分けているそうだ。「近景のキャラはCGで遠景が作画といった基本的なルールは設けているので、メインキャラであっも遠景の場合は作画にしたりといったかたちです。作画のフレキシブルさとCGの正確性という両者の利点を最大限に引き出すことを心がけています」(カトウ氏)。CGアニメーションについては、作画とのバランスを考慮し、あえて動きを抑え気味にしているとのこと。第1話の制作では、ラフ原をベースにアニメーション付けを行い、作画のアニメーションがどのように組み立てられているか参考にしながら作業を進めたという。また、本作はプレスコ方式を採用しているため、表情や口パクなどの芝居は音源データをMayaシーンに読み込み波形を確認しながら作業が行われている。ただし、正確なリップシンクではなくアニメ的な口パクになるよう必要な音を抜き出すセンスも求められる。本作の特徴としてキャラクターアニメーションは2コマと3コマが交互に連続するシートがベースになっているが、これは3コマ打ちはリミテェッドアニメーション慣れしたアニメーターでないと難しいことに加え、2コマ打ちでは作画よりも動きが滑らかに見えてしまうという2つの問題を解決するために導き出された手法だという。そのため3コマでの口パクの開け方や閉じ方などを作画マンからレクチャーしてもらい、CGにも取り入れているとのこと。
そして、アニメーション工程に続くライティング/レンダリング工程では、サイズ(カメラからの距離)に応じてLOD処理を施し、作画との調和を意識した細やかな画づくりが行われている。「ロングショットでは作画のようにあえてラインの数を減らすようにしています。スーツやマントの折り目など情報量が多いと汚く見えてしまうこともあるので、ラインの数や太さ、影の量などの調整もかかせません」(カトウ氏)。その他にも、CGの利点を最大限に活かすというねらいから誇張パースや2Dレタッチは最小限に留めているとのこと。また、服のシワなどはCGで再現するのは手間がかかるものだが、そうした表現が当たり前のように行えるようになることも今後の課題のひとつであり、次のステップへつながると考えているそうだ。
今回は3DCGによるキャラクター表現を主軸に本作のワークフローをみてきたが、カドと対峙する自衛隊の戦車や軍用ヘリなどのメカ(乗り物)表現についても、キャラクターの芝居と同様に"リアリティ"が求められている。「タイヤやキャタピラーの回転は自動で制御していますが、車体の揺れなどの挙動は手付けです。全て実在する車体なのでアニメーターはプレッシャーを感じているようですが、メカはフルコマのアニメーションなので細かな動きもしっかりと再現できていると思います。そうしたこだわりにもぜひ注目してください」(カトウ氏)。
CGアニメーション&コンポジット
第1話CUT12より
Mayaによるアニメーション作業。真道と花森の掛け合いのカットなので、カメラからの見た目、花森の位置を確認しながら真道のフェイシャル作業を行なっている
After Effectsによるコンポジット(撮影)作業。窓外光源のため、機内の露出を下げるなどの撮影処理加えている。「撮影処理全般としては、ハイブリッド作品なので作画素材との馴染ませに一番、注意しています。このカットはもちろんですが、CGキャラのライン素材は作画の線に寄せる処理を全編通して行なっています」(渡辺氏)
アセット&進捗の管理
The Foundry「HIERO」によるCUTの進捗管理例。「基本的にCG出力のあるショットは、HIEROに入れ込んでいます。トラックを各作業工程に分けて、チェック時に前テイクや前工程の確認する場合もトラックの表示切り替えとHIERO上でのテイク管理によって、瞬時に確認できるので便利ですね」(カトウ氏)
プロジェクト全体の管理にはSHOTGUNが利用されている。もともと、東映アニメーションではインハウスツール「TACT」による管理を行なっていたので、その管理フローに合うかたちへ適宜カスタマイズを行なった上でSHOTGUNを組み込んでいるという。図はアニメーション工程のページ。ステータス(緑のサムズアップのアイコン)が監督OKを意味する。チェック時にチーフOKのステータスになっているCUTを、SHOTGUNのフィルタリングで洗い出し、該当するものをHIEROの監督チェック専用のトラックに入れるというワークフローが採られている
ブレイクダウン
制作工程を図示したもの
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キャラクターアニメーション(ボディとフェイシャルに加え、セカンダリ(服や髪などの揺れモノ全般)もまとめて付けていく
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ライティング/レンダリング工程。背景素材は入れず、CG素材のみ出力とコンプの仮組みを行う
撮影処理を施した最終形
CUT12の完成連番