話題のアニメCGプロジェクト『正解するカド』。CGWORLD本誌ではこれまでも数度にわたりその取り組みを追ってきたが、本記事では、TV放送が間近に迫り、急ピッチで制作が進んでいた2016年12月に、渡辺正樹シリーズディレクターとカトウヤスヒロCGディレクターの両氏に、ドラマ(芝居)に主軸を置いたというCGキャラクター表現のこだわりを聞いたインタビューをお届けする。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 222(2017年1月号)からの転載記事になります

TEXT_TEXT_村上 浩(夢幻PICTURES
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Hirota Mitsuru

『正解するカド』Blu-ray Disc BOX&DVD BOX 全2巻にて発売決定!
第1巻は7月26日(水)、第2巻は9月27日(水)発売!
詳しくはTVアニメ『正解するカド』公式サイトにて!
©TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI

3DCGの特性を活かした日本のアニメならではの表現を

今回の取材(2016年12月上旬)からさかのぼることちょうど1年ほど前に制作されたパイロット版(PV)では、登場するキャラクターは全てフルCGで描かれていた。メインキャラは3DCGベースで描くという方針にはかわりないというが、最終的に本制作では作画も併用するに至ったという(ただし、全てデジタル作画という別の新たな試みにも挑んでいる)。「作品全体のコンセプトとしては、キャラクター描写を3DCGで表現することに重きを置いていますので、おおよそ7割はCGベースで制作を進めています」とは、渡辺正樹シリーズディレクター。渡辺氏がプロジェクトに参加したのは2015年の初頭。まずは絵コンテを描いていったという。「本作はジャンルとしてはSFですが、ターゲットは広くとらえています。各キャラの格好良さやかわいさを引き出すことで女性など、SFファン以外の方にも興味をもってもらえればと。特にTV放送では、ある程度キャッチーさがないと、すぐにチャンネルを変えられてしまうので視聴者の目線に立って演出することを心がけています」(渡辺氏)。そうしたこだわりは画づくりにも反映されている。


TVシリーズ『正解するカド』
総監督:村田和也/シリーズディレクター:渡辺正樹/脚本:野﨑まど/演出:りょーちも・齋藤昭裕・田辺泰裕/キャラクター原案:有坂あこ/キャラクターデザイン:真庭秀明/CGディレクター:カトウヤスヒロ/キャラクタースーパーバイザー:宮本浩史/リードキャラクターモデラー:岩本千尋/リードアニメーター:安田祐也・牧野 快/グラフィックデザイン:鈴木夏希/色彩設計:岩沢れい子/美術監督:佐藤豪志(スマーチル)/撮影監督:石塚恵子/アニメーションプロデューサー:小倉裕太/プロデューサー:野口光一/アニメーション制作:東映アニメーション seikaisuru-kado.com

パイロット版ではコントラストの強い重厚なビジュアルであったのに対し、本制作では画としての見やすさ(情報の把握しやすさ)を考慮した見やすさを重視したルックを模索したという。「例えば旅客機内のシーンでは、キャラクターの表情が認識できるようにと、顔に濃い影は落とさないようライティングを調整するなど、感情やシチュエーションに合わせたライティングを心がけています」とは、CGディレクターのカトウヤスヒロ氏(東映アニメーション デジタル映像部)。

また2D(作画)と3DCGを併用したハイブリッド作品の場合、両者の馴染みも重要な指標となるのが一般的だが、本作ではCGを作画に寄せるのではなく、お互いの利点を最大限に活かすことを目指しているとのこと。「たとえデジタルであっても作画には枚数制限が付きものです。一方、CGの場合はそうした意味での制約はないので演出の幅が広がります。私は作画とCGは別物だと考えているのですが、CGならではの新たなアニメーション表現の可能性を見い出ればと思っています」(渡辺氏)。

Topic 1 ワークフロー

レイアウト工程にひときわ時間を費やす

渡辺氏は『バトルスピリッツ』シリーズに代表される3DCG主体の派手なカメラワークによるアクションシーンなどの演出経験を有しているが、『正解するカド』は日常芝居を主体とした作品であるため、今回はキャラクターの心情描写を効果的に表現するためのカメラアングルといった、レイアウト工程に特に時間を費やしているという。また、美術設定についてもデジタル映像部に籍を置くデザイナーが担当していることもあり、基本的には美術設定もCGモデルをベースに作成しているとのこと。これにより、ほぼ全てのカットがレイアウトセクションで作業を完結できるようになっているため、レイアウト工程における演出陣との画づくりの試行錯誤をより密なかたちで行える体制となっているそうだ(余談だが、撮影工程についてもデジタル映像部内のコンポジターがリードしているとのこと)。

そして、こうした演出スタイルを実践していく上では、カトウCGディレクターからのカメラアングルやミリ数など3DCGの利点を活かした具体的な提案にも助けられているという。「簡易的な背景モデルに作画のアタリとなるデク(ヒト型の簡易モデル)を配置する『ステージング』という工程を設けていまして、そのシーンデータにカメラを配置するという実写のロケハン的な感覚で一連のキャラやプロップの配置を決めていきます。今回は演出チェックの際にも静止画やQTだけなく、Mayaのシーンファイルを開きその場でカメラを操作してレイアウトを調整するなど即興的なオーダーにも対応できるようなフローを構築しました」(カトウ氏)。レイアウトの8割程度はCGで作成されており、正確なパースのガイドは作画マンにとっても欠かせない素材となっている。また、会話シーンが多くなると画面が地味になってしまうこともあるため、3DCGならではのダイナミックなカメラワークなどを織り交ぜることでメリハリを意識。カドの内部は3Dで構築されているため、3D空間を活かした大胆な回り込みなども取り入れているそうだが、多用し過ぎると落ち着きがなくなってしまうため、ドラマとしてのバランスを考慮しながら画づくりを行なっているとのこと。

絵コンテ

渡辺氏が描いた第1話の絵コンテより

レイアウト


美術発注するための原図とMayaのプレイブラスト(レイアウト)の例。本作は、作画とのハイブリッドということもあり、CUTによってはレイアウトとアニメーション作業が同時並行で進められているものもあるそうだ


大判PANを伴う美術発注用の原図例

演出チェック


レイアウトチェックの様子。静止画連番や動画データの状態で演出チェックを受けるのが一般的だが、『正解するカド』のレイアウトについてはMayaのシーンファイルを用いて、その場でカメラ等を動かしながら検証するという贅沢な手法が採られている

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Topic 2 ショットワーク

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Topic 2 ショットワーク

作画のノウハウを採り入れながらCGの独自性を追求していく

3DCGが介在するカットは、1話あたり約200を基準にしているそうだが、先述のとおりデジタル作画も併用しているため、絵コンテの段階で振り分けが行われている。ただし、シーンやカットの内容に応じて臨機応変に使い分けているそうだ。「近景のキャラはCGで遠景が作画といった基本的なルールは設けているので、メインキャラであっも遠景の場合は作画にしたりといったかたちです。作画のフレキシブルさとCGの正確性という両者の利点を最大限に引き出すことを心がけています」(カトウ氏)。CGアニメーションについては、作画とのバランスを考慮し、あえて動きを抑え気味にしているとのこと。第1話の制作では、ラフ原をベースにアニメーション付けを行い、作画のアニメーションがどのように組み立てられているか参考にしながら作業を進めたという。また、本作はプレスコ方式を採用しているため、表情や口パクなどの芝居は音源データをMayaシーンに読み込み波形を確認しながら作業が行われている。ただし、正確なリップシンクではなくアニメ的な口パクになるよう必要な音を抜き出すセンスも求められる。本作の特徴としてキャラクターアニメーションは2コマと3コマが交互に連続するシートがベースになっているが、これは3コマ打ちはリミテェッドアニメーション慣れしたアニメーターでないと難しいことに加え、2コマ打ちでは作画よりも動きが滑らかに見えてしまうという2つの問題を解決するために導き出された手法だという。そのため3コマでの口パクの開け方や閉じ方などを作画マンからレクチャーしてもらい、CGにも取り入れているとのこと。

そして、アニメーション工程に続くライティング/レンダリング工程では、サイズ(カメラからの距離)に応じてLOD処理を施し、作画との調和を意識した細やかな画づくりが行われている。「ロングショットでは作画のようにあえてラインの数を減らすようにしています。スーツやマントの折り目など情報量が多いと汚く見えてしまうこともあるので、ラインの数や太さ、影の量などの調整もかかせません」(カトウ氏)。その他にも、CGの利点を最大限に活かすというねらいから誇張パースや2Dレタッチは最小限に留めているとのこと。また、服のシワなどはCGで再現するのは手間がかかるものだが、そうした表現が当たり前のように行えるようになることも今後の課題のひとつであり、次のステップへつながると考えているそうだ。

今回は3DCGによるキャラクター表現を主軸に本作のワークフローをみてきたが、カドと対峙する自衛隊の戦車や軍用ヘリなどのメカ(乗り物)表現についても、キャラクターの芝居と同様に"リアリティ"が求められている。「タイヤやキャタピラーの回転は自動で制御していますが、車体の揺れなどの挙動は手付けです。全て実在する車体なのでアニメーターはプレッシャーを感じているようですが、メカはフルコマのアニメーションなので細かな動きもしっかりと再現できていると思います。そうしたこだわりにもぜひ注目してください」(カトウ氏)。

CGアニメーション&コンポジット

第1話CUT12より


Mayaによるアニメーション作業。真道と花森の掛け合いのカットなので、カメラからの見た目、花森の位置を確認しながら真道のフェイシャル作業を行なっている


After Effectsによるコンポジット(撮影)作業。窓外光源のため、機内の露出を下げるなどの撮影処理加えている。「撮影処理全般としては、ハイブリッド作品なので作画素材との馴染ませに一番、注意しています。このカットはもちろんですが、CGキャラのライン素材は作画の線に寄せる処理を全編通して行なっています」(渡辺氏)

アセット&進捗の管理


The Foundry「HIERO」によるCUTの進捗管理例。「基本的にCG出力のあるショットは、HIEROに入れ込んでいます。トラックを各作業工程に分けて、チェック時に前テイクや前工程の確認する場合もトラックの表示切り替えとHIERO上でのテイク管理によって、瞬時に確認できるので便利ですね」(カトウ氏)


プロジェクト全体の管理にはSHOTGUNが利用されている。もともと、東映アニメーションではインハウスツール「TACT」による管理を行なっていたので、その管理フローに合うかたちへ適宜カスタマイズを行なった上でSHOTGUNを組み込んでいるという。図はアニメーション工程のページ。ステータス(緑のサムズアップのアイコン)が監督OKを意味する。チェック時にチーフOKのステータスになっているCUTを、SHOTGUNのフィルタリングで洗い出し、該当するものをHIEROの監督チェック専用のトラックに入れるというワークフローが採られている

ブレイクダウン

制作工程を図示したもの



  • レイアウト(こちらを基にBG発注へ)



  • 美術から上がってきた背景素材



  • キャラクターアニメーション(ボディとフェイシャルに加え、セカンダリ(服や髪などの揺れモノ全般)もまとめて付けていく



  • ライティング/レンダリング工程。背景素材は入れず、CG素材のみ出力とコンプの仮組みを行う


撮影処理を施した最終形

CUT12の完成連番



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.222(2017年1月号)
    第1特集:Houdini徹底ガイド
    第2特集:ハイエンドゲーム開発の現場

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2017年1月10日
    ASIN:B01MXRSEI0