<2>当面の目標は、やはりオリジナル企画でヒット!
CGW:監督業としての目指しているゴールはあるのでしょうか。
森江:ゴールが何かはわかりませんが、直近だと自分で脚本を書いたオリジナル企画があるので、それを今のメンバーで完成させたいと思っています。あとは経営者として、組織の文化づくりをしたいと思っています。今から10年経って、世帯持ちも増えてくると、また社風は変わると思いますが、みんなが生活していける土壌をつくりたいですね。
櫻木:僕のゴールはどこなんでしょうかね。今は割りふられた仕事をこなすのがやっとで、自分でコントロールすることはできていないので......。ただ、生活をもう少ししっかりさせようとは思っています。世帯持ちという意味では、当社はほぼ既婚者なので、家庭をもてるスタジオでなければいけないというのは強く意識しています。
宮本:......2人に聞きたいのですが、監督をやめてプロデューサーになろうと思ったこと、ありませんか?
櫻木:たまにあります。試写会でボコボコにされる僕たちとちがって、楽しそうにしているイメージがありますよね(笑)
宮本:今はつくりたいものが明確で、そのモチベーションがあるから続けられているけど、賞味期限が切れたベテランが現場にしがみつくのは格好悪いと思うんです。まだまだ監督をがんばりますが、個人的には40越えたら何らかの決断をしたいと思っています。
森江:たしかに、自分が50歳くらいになったら何をしているかな、とは思うときがありますね。
櫻木:でも、プロデューサーは作品が失敗したら直接叩かれるし、そこまでして世に何か出したいのか? というのは考えてしまいます。少なくとも「自分の表現」というかたちでやるものじゃない。関わる人が多いから失敗の責任はとれないし、僕は本当に作家性を出すなら最終的には個人規模になるのかなと思っています。
宮本:自分だけでやるなら失敗しようが成功しようが自分の責任ですが、関わる人が多い作品で作家性をどう出していくかは考えていくべきことですね。ハリウッドの映画監督は自分のプロダクションをつくりますよね。あれに近いかたちで、個人事務所はもちたいな、と思うことがあります。
櫻木:大きな規模だとリスクが多くなってきて、みんな慎重になりますよね。自分はこっちが好きだけど、世の中的にはこっちだな、という判断をしなくてはいけなくて。今はもうそこを好き嫌いでは選ばなくなっています。「自分の全てをこの作品に賭ける」というつくり方はせず、まずは売れるものをつくるという思考になりますね。
森江:でも、ヒット作があると発言力も変わりますよね。だから、目標としては"売れる"というのがひとつ明確にある。CG業界出身ではなく、単純にディレクターとして世間で認められなくてはと。
宮本:さっき櫻木さんの言ったような「自分の全てを賭ける」という作品が、今回のプリキュアだったんです。これまでは組織の言いなりになっていたところも、たとえ軋轢を生むことになっても戦って勝ちとろうと思って。こういった思い入れのある作品の次に自分がやりたいものとしては、純粋にオリジナル作品をやってみたいとは考えています。それをやってみた上で、監督として続けていくのか、プロデューサーをやるのか、第3の道に進むのかを考えていくべきだろうと思うので。
宮本監督の新作!
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『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ』 大ヒット上映中!
原作:東堂いづみ/監督:宮本浩史/アニメーション制作:東映アニメーション/配給:東映
www.precure-movie.com
©2018 映画HUGっと!プリキュア製作委員会
CGW:自身のクリエイティビティと作品規模を考えた組織運用のバランスを考える立場になってきているということですね。3人の中では森江さんのみご自身の会社を設立されたわけですが、規模の拡大は考えていますか?
森江:今が10名なのですが、大きくするつもりはそれほどありません。政治だとか、制作に関わらないことに労力を割くのが嫌でしたし、会社を大きくした結果、仕事を選べないといったことも避けたいので。規模拡大ではなく、一緒に仕事ができる仲間のような同業者を増やしていきたいと思っています。
宮本:今は専門性の高い特化型の小規模スタジオがすごく増えているから、協業がいろいろやりやすい環境にありますよね。この際、ディレクター専門集団みたいなものもつくれたら、そこだけで仕事がまわせそうな気もします。ちなみに森江さん、経営は"やりたかったこと"なんですか?
森江:経営は面白いですよ! 経営は組織をつくるということなんです。経営者は、いわば生産工場である現場の人間がいないとメシを食えない。社長がいるからこそ仕事がまわるという側面もあるにはあるんですが、現場が正常に稼働しないと3DCGという商品がつくれないわけなので。経営者のビジョンと、現場のビジョン、両方の目線をもてたことは、自分の組織づくりにおける大きなメリットになっています。
CGW:最後に、みなさんの近い将来の目標を聞かせてください。
櫻木:ひき続きコンスタントに作品を出し続けたいと思っています。スタジオ的にも、ずっとつくり続けられるような環境づくりをしていきたいですね。クラフタースタジオはできたばかりですし、仕事が途切れないように、というのは意識しています。
櫻木監督の新作!
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長編アニメーション映画『あした世界が終わるとしても』2019年1月25日(金)全国ロードショー
原作:クラフター/監督・脚本:櫻木優平/アニメーション制作:クラフタースタジオ/配給:松竹メディア事業部
ashitasekaiga.jp
©あした世界が終わるとしても
森江:近い将来で言うと、CGWORLDで執筆させてもらっているアニメーション連載をベースにした書籍を出そうと奮闘中です(汗)。経営者としてやるべきことが加わった以上、自分のCGアニメーターという実作業は手放さざるを得ない時期かなと思っています。十数年やってきたノウハウを形として残すことで、後の世代にバトンタッチしていきたいです。商業ベースで仕事もできていて、会社も継続できているわけですが、刺激的なことを求めている自分と、経営者としてそれを自制する自分のバランスのとり方を、この歳になってよく考えます。今のメンバーで、今年できなかった技術や演出内容を来年以降トライしていければと思っています。
森江監督の新作!
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『日本橋高島屋S.C. オープン予告MOVIE』
ミニチュアアーティスト:田中達也/ディレクター:森江康太/カメラマン:らくだ/照明:角戸亮祐/モーションコントロール:段 和男/CG制作:MORIE/オンラインエディター:坂巻亜樹夫
www.takashimaya.co.jp/nihombashi
©Takashimaya Co., Ltd.
宮本:僕は今人生が迷子状態なのですが、今すぐの話だとHoudiniを勉強しようと思っています。モデリング、リギング、アニメーションまではできるようになってきたので、あとはエフェクトができたら映画をひとりでつくれるじゃないのかと。自分が監督業を続けたとしても、仮にプロデューサーになったとしても、死ぬまでに必ず「ひとりで映画をつくりたい」という気持ちがずっとあるんです。そこに向けて動き続けたいですね。
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