プリビズ制作や実写の撮影現場に導入してみたい
--今後 MVN を導入してみたいプロジェクトがあれば、教えていただけますか?
竹原氏--一番やりたいのはプリビズですね。しっかりアニメーションを付けた、フル CG 映像のためのプリビズを制作したいです。実写映像の場合、必要なセットや工数を算出するのがプリビズの主な目的です。これに対してフル CG 映像の場合は、工数はもちろん、演出やカメラワークなどのビジュアル要素を、スポンサーやスタッフ間で共有することに価値があると思っています。目指す方向性を早期に共有できれば、軌道修正もより容易になりますから。そんなプリビズで最も要求されるのが、スピーディーでシンプルな制作体制なんです。
--極端な話、MVN があればディレクターとジェネラリストのアーティストによる総勢2名の体制で、プリビズ制作が可能になってしまいそうですね。棟方さんは、どういった形でMVNを試してみたいですか?
棟方氏--特撮番組の制作ですね。現在の制作フローは、最初に実写映像を撮影し、その映像を見ながら光学式のスタジオでアクターが演技するんですが、両者の動きを合わせるために毎週とても苦労しています。両者が接触するシーンや、相手から逃げるシーンは特に難しいですね。実写の撮影現場にMVNを持ち込んで、モーションデータも一緒に撮影できれば、制作に掛かる負荷を大きく減らすことができると思います。
--MVN は設置場所に縛られませんし、広い空間での撮影も可能なので、ワークフローを画期的に改善できる可能性があるわけですね。
竹原氏--まだまだ MVN を使い始めたばかりなので、セットアップの方法や、キャラクターへのデータの流し込み方法など、様々な検証をしていきたいと思っています。特徴や使い方を理解すればするほど、新しい発想が生まれ、表現の可能性が増えていくだろうと期待しています。
Point 02 ジャンプなどの上下移動をともなうモーションも撮影可能
今回のプロジェクトでは、上のような指示書に基づきジャンプモーションの撮影も行なった。MVN は、ジャンプや階段の上り下りといった、上下移動をともなうモーションにも対応できる。ただし、MVN の慣性センサーが撮影するのは空間における相対位置なので、地面との接地点などに誤差が発生することもある。その場合は、ポスト処理で接地点を指定し再演算を行うことで、より信頼性の高いデータを得られる。
TEXT_尾形美幸