セッション3:
フロム・ソフトウェアにおけるハイエンドグラフィックス制作ワークフロー
▼登壇者
フロム・ソフトウェア担当者
冒頭の対談でも述べられたとおり、来春から福岡にグラフィックアセット制作専門のスタジオを開設するフロム・ソフトウェア。俗に第8世代と呼ばれるPS4・Xbox One向けのゲーム開発に必用な、CGアーティストのリソース不足を懸念してのことだ。では、実際に現代のハイエンドゲームではどのような制作体制が構築され、何がポイントになっているのか。担当者が概要を説明した。
多くのゲーム会社と同様に、同社でもCGアーティストの業務は多岐にわたり(キャラクター・モーション・背景・エフェクト・メニューなど)、プログラミングやゲームデザインと有機的に結びついている。かつては「雑木林のステージで処理落ちをふせぐために木々を枯らした結果、モンスターも雰囲気にあわせて死霊的なデザインに変更した」などの対応も見られたほど。ゲーム機のスペック向上に伴い最近ではこうした例は減少したが、逆に細部の作り込みで、これまでにない労力が求められるようになったという。
そこで重視されるようになったのが、ツールやミドルウェアの活用と、さらなる自動化の推進だ。前世代では1280×720ピクセルだった解像度が、今世代では1980×1080ピクセルが標準となり、テクスチャの解像度も1Kから2K~4Kと拡大している。これに伴いZBrushを用いて、スカルプトでハイポリゴンのモデルを制作する手法が一般化。
もっとも、すべてのデータをスカルプトすると、制作工程が非常に増えるため、できる限り自動化を推進。▽キャラクターの衣服でMarvelous Designer▽テクスチャの作成でQuixel DDOを活用▽標準リグの活用でリギングコストを軽減▽ロードバランサーの導入で、フレームレートに応じて最適なレンダリングを実施ーーなどが行われているという。
また、現時点ではUnityやUnreal Engineなどの商用ゲームエンジンは使用していないという。社内の技術力低下を恐れてのことで、シェーダーやエフェクトも内製ツールを使用しているという。自社のゲームエンジンをベースに、適切な外部ツールを組み込んで、効率的なワークフローを構築することが重要だとまとめられた。
セッション4:
ModelingCafeコンセプトモデリング講座テクニカル解説編
▼登壇者
ModelingCafe
松本 龍一氏/モデラー
木村 佳介氏/モデラー
岸本 浩一氏/代表取締役
最後に登壇したのは3DCGのコンセプトデザインとモデリングに特化したModelingCafeだ。同社では東京本社に加えて、本年4月より福岡オフィスを設立。バンクーバーオフィスとあわせて、国際的な制作体制を敷いている(同社にはアニメーションに特化したAnimation Cafeもあり、Cafeグループを形成している)。CGWORLD本誌でも2015年11月号から新連載「ModelingCafe コンセプトモデリング講座 テクニカル解説編」が開始された。
▲(左)木村佳介氏 (中)岸本浩一氏 (右)松本龍一氏
講演前半では福岡オフィス設立に伴い、東京から福岡に移住した木村圭佑氏が感想を共有。後半ではバンクーバーオフィスに在籍し、本誌連載も手がける山家遼氏のCG制作ノウハウについて、作例をもとに同社の松本 龍一氏が解説した。
神奈川県出身で福岡に移住するまで一人暮らしの経験がなかったという木村氏は、福岡での生活を「コンパクトにまとまっており、非常に暮らしやすい」と評価した。会社は福岡市中心部の天神地区に位置し、マンションまで徒歩10分程度。家賃も4ー5万円と単身者に嬉しい価格帯だ。周辺には市役所、大型商業施設、飲食街、空港などが点在しており、自転車での移動が非常に便利だという。
後半では松本氏が登壇し、連載でも使用されたオリジナルのマシンガンのCGについて、制作過程を紹介した。使用ツールはZBrushで、粘土をこねたり、彫刻刀で穴をくりぬいたりするように、デザインと立体造形を並行して進めるのが「山家流」だという。
完成したモデルはZBrush to KeyShot Bridgeを使用すれば、ワンクリックでレンダラーのKeyShotにデータを転送できる。マテリアルのアサインから細かいライティングまで直感的に設定することが可能だ。出力された画像ファイルをPhotoshopで仕上げれば完成。銃器の下に敷かれた布は、自然な凹凸を表現するため、Marvelous Designerを使用したとのことだ。
福岡クリエイティブキャンプ参加企業もブース出展
このほか展示コーナーでは、福岡クリエイティブキャンプ参加企業によるブース出展やパンフレットの配布、福岡クリエイティブキャンプ事務局による移住&転職相談、CGWORLD本誌のバックナンバー紹介やフリーペーパー「CGWORLD Entry vol.13」の配布なども行われた。
講演の休憩時間には多くの参加者がつめかけ、時間帯によっては自由な移動もままならなかったほど。参加者属性もゲーム系と映像系、社会人と学生がそれぞれ半々ずつという割合で、熱心に情報収集をする姿が印象的だった。
TEXT_小野憲史
PHOTO_弘田充
本イベントは10月24日(土)に大阪(大阪電気通信大学 寝屋川キャンパス)でも開催が決まっている。
大阪ではサイバーコネクトツーの松山 洋氏と東京でも登壇したフロム・ソフトウェアの竹内 将典氏によるスペシャル対談「消えるクリエイターと伸びるクリエイター」が決定している。その他にも全国に拠点を持つ映像制作会社exsaが「exsa流ビジュアルコンセプト作成術」を披露する。また、東京でも講演を行ったKOO-KIが再び東京で大好評だった「餃子の王国」と「マルコとマルオの7日間」のメイキングを行う。東京会場は満席となったほどの人気イベントなので大阪近辺のクリエイターは早めに登録しよう。
10月24日(土)大阪開催!『CGWORLD CREATIVE MEETING』
CC2松山氏、フロム・ソフトウェア竹内氏によるスペシャル対談も!
参加申込はこちら:http://cgworld.jp/special/cgwmtg-fcc/