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世界最大ゲーム開発者の祭典「GDC 2016」<br>EXPO会場で見つけた気になるCGツールをレポート

世界最大ゲーム開発者の祭典「GDC 2016」
EXPO会場で見つけた気になるCGツールをレポート

<2>やはりVRで活気付くCG開発ツール

ゲーム内のアセットやシーンを作成するツールやミドルウェアで、最も精力的にブースセミナーを開催していたのは、Side Effects Software(サイド エフェクツ ソフトウェア)の「Houdini」(フーディニ)だ。

特に、昨年12月にリリースされたプラグイン「Houdini Engine for UE4」を用い「Houdini」で作成したプロシージャルなアセットを「UE4」にプロシージャル制御を行うパラメータと共にUnrealエディタにインポートし、「Houdini」に立ち戻ることなくUnrealエディタ上で変更できる機能は非常に便利だ。

既存のワークフローとの兼ね合いもあるだろうが、大量にアセットを取り扱う「UE4」を使用するプロジェクトでは、アセット製作のみ「Houdini」で行うというのも十分に検討できるように思えた。

▲「Houdini」の展示では「Houdini Engine for UE」のチュートリアルを実施

「Houdini」ほどは精力的なデモを行っていなかったものの、Allegorithmic(アルゴリズミック)のプロシージャルテクスチャ作成ツール「Substance」(サブスタンス)は、各種DCCツール、ゲームエンジンにインテグレートされており、もはやフォトリアルでありながら省メモリなテクスチャを用意するためには必須のツールと言えるだろう。2月に発表されたAMAZONの新ゲームエンジン「Lumberyard」(ランバーヤード)も、いち早くサポートを表明している。

▲「Substance」の展示もやはりツールのチュートリアルが中心

▲「Substance」による高品質なサンプルは、やはり目を引く

小粒でピンポイントながら、Artmatix(アートマティック)は「Materialize」(マテリアライズ)というタイリング用ループテクスチャ作成ツールのデモを行っていた。

アイルランドからやってきたという彼らは、ちょうど2日前に完成したという「Materialize」のデモを見せてくれた。テクスチャによっては完璧にループする状態にはならないものの、マルチテクスチャ前提である程度伸びてしまう床タイルなら気にならないレベルだと感じた。

1回の変換で同時に6段階の解像度のテクスチャが一度に得られるのもLOD用のMIPマップが必要な際に便利だろう。ただ、シームレスなループテクスチャの生成ツールには、もっと安価なものもあり、価格に見合うかどうかは微妙なところだ。

「Materialize」は、オンラインでサーバにデータを送ると結果が数秒後に帰ってくるSaas形式でサービスされ、年間セールス10万ドル以下のインディなら月額29ドル、年間100万ドルなら月額299ドルで利用できる。

それ以上のセールスならArtmatixに問い合わせる必要がある。なかなかビジネス的には厳しい予感もするが、頑張っていただきたい。

▲Artmatixブースでの「Materialize」デモ画面

その他、「Unity」向けにアセット配置を行うレベルエディタ「SCENE FUSION」(シーン フュージョン)や、「UE4」や「Unity」にテクスチャストリーミングを提供する「GRAPHINE」(グラファイン)といった周辺ツール、ミドルウェアの出展もあった。

CG関連ツールではないが、「UE4」のプラグインとして、テキストエディット可能でブループリントと相互可搬なスクリプト環境を付加する「SkookumScript」(スクークムスクリプト)の出展もあり、派手な注目を集めていないブースも見逃せない。

▲GRAPHINEのブースもVRデモを行っていた

▲GRAPHINEによるテクスチャストリーム出力

▲SkookumScriptブースには、なぜか白衣のスタッフがアテンドしていた

これらの積極的なブース展示の反面、Autodesk(オートデスク)がEXPOブースで一般開発者向けの展示は行わず、プライベートブースでビジネスパートナーと商談のみを行っていたのは残念だった。

イベントスポンサーでもあり、同社のゲームエンジン「Stingray」(スティングレイ)が1.2にバージョンアップしたばかりという時期でもあったのだが、セッションの方も「Stingray」関連のものが2コマ、使用タイトル「Warhammer: The End Times - Vermintide」(ウォーハンマー:ジ エンド オブ タイムズ バーミンタイド)のものが1コマ、新製品「Memento」(メメント)のものが1コマと、他のスポンサー企業と比較して、かなり少ないセッション数だった。

筆者はそのうち、1.2で「Oculus Rift」以外に「HTC Vive」(エッチティシー バイブ)をサポートしたとあって、「3ds Max」をアセット製作ツールとして活用したVRコンテンツ製作のワークフローのセッションを聴講した。

「Stingray」というと、これまで「Maya」「Maya LT」からのワークフロー解説がほとんどであったが、「3ds Max」でスプラインに沿ってジェットコースターのモデルを配置し、レール上を走行するコースターのモデルにカメラを付けて、VR HMDに出力するまでの一連の作業の流れを確認できた。「Maya」系と比較して、いくつか不利な点はあると思うが、「3dx Max」でもVRコンテンツ作成上の基本的なお約束を守ってさえいれば、特に問題なくアセット、シーンともに作成可能だ。

▲VRコンテンツ製作セッションにおける「3dx Max」の作成画面

▲「3dx Max」で作成したコースターのシーンを「Stingray」でVR HMD出力

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