>   >  VR空間で直感的に3DCGを制作できるMARUIとは「3Dアセット作成とリテイク・制作ツールとしてのVR導入のすヽめ」~GTMFレポート~
VR空間で直感的に3DCGを制作できるMARUIとは「3Dアセット作成とリテイク・制作ツールとしてのVR導入のすヽめ」~GTMFレポート~

VR空間で直感的に3DCGを制作できるMARUIとは「3Dアセット作成とリテイク・制作ツールとしてのVR導入のすヽめ」~GTMFレポート~

<3>MARUIのコンセプトと強み

MARUIは単なるVR空間を楽しむツールというだけのものではなく、プロ向けの3DデザインツールとしてVRを活用するための環境を提供している。VR HMDをかぶることでVR空間は実際に目の前に存在し、手で触れるように3DCGを編集できる。直感的に操作できることによって3DCGデザイン工程の効率化が実現できるわけだ。

3DCGツールとして一般的なMayaをプロレベルに習熟するには、何年もかかる。また1つのツールに使い慣れると、その他のツールに乗り換える際にはとても負担がかかる。そこでMARUIは、Mayaのプラグインソフトとして使え、Mayaの各種機能がVR空間で平易に利用できるようになっている。ちなみにVR空間だとマウスで行なっているような細かなポインティング(位置指定)が無理そうに思えるが、MARUIでは大きな動きと、通常の1/10単位の細かい動きを切り替えることで、細かなポインティングや細かな動き、設定が平易にできると考えているそうだ。

How a VR user interface changes 3D design work : VRによって変わる3Dデザイン業務

Modeling "Dragon's head" in VR with Maya:MARUI-plugin+Maya でドラゴンの頭をモデリングする様子

MARUIによる恩恵は、制作スピードの向上、クリエイティビティの向上、プロトタイプ制作のしやすさのほかにも、クライアントやディレクター、アーティストらとVRの中でより明確にコミュにケーションできる点などがある。また、ずっと同じ姿勢で作業することなく、健康的なデザイン環境を構築することもできる。さらにMARUIはMayaのプラグインとして動作するため既存のワークフローに即組み込むことができるのも利点だ。従来の制作ワークフローはそのままで、VRを活用することができる。

Mouse vs. VR - LowPoly Modeling : 一般的なマウス操作とMARUIによる VR空間での作業効率の比較

VR空間での作業は直感的で、慣れるとオペレーション自体がとても速くなるという。習熟度の問題や作業の種類にもよるが、VRの方が30%ほど効率が良いという結果も出ているそうだ。

<4>MARUIのユーザー事例

ではここからは、MARUIのユーザー事例について紹介していく。

●Studio05の事例

オランダのアニメーションスタジオStudio05では、最近VR/ARコンテンツの制作も増えている。たとえばオランダの病院と共同で解剖学を理解するためのVRコンテンツを制作した。実証実験の結果、通常の学習方法と比べ、記憶に残ることがわかり学習効率の向上に貢献したそうだ。

またオランダの保険会社の事例では、VR空間でマインドルフネスを実現できるコンテンツを制作。脳波センサーを取り付け、実際のユーザーの心理状況がコンテンツに反映されるものを制作した。

これら2つのプロジェクトでMARUIを活用し、アセット制作でも活用された。特徴的なのは、Maya上でVRのテスト環境をも構築して、実装や制作プロセスが大変効率化されたという点。アーティストと、デベロッパーの間でのデータのやりとりが減り、1日あたり数時間の効率化が図れたそうだ。

解剖学のためのVRコンテンツ制作事例

●DANNY BITTMAN氏の事例

MarvelやGoogleのVRコンテンツを手がけるDANNY氏は、オリジナルコンテンツとして幼少期に住んでいた自宅をVRで再現した。1階の写真しか記録がなかったところから、VR空間を歩き回り幼少期の空間的記憶を呼び覚ましながら2階部分も再現することができたそうだ。これはVRによってアーティストのクリエイティビティが向上した良い事例でもある。

DANNY BITTMAN氏のMARUI活用事例

●MARUIを活用したリトポロジー作業

ゲームで使われるキャラクターを制作する際は、はじめにZBrushなどの3DCGツールで制作しゲーム用にリトポロジー作業を行い、ポリゴンリダクションしていくのが一般的だが、これはとても退屈で、時間のかかる作業だ。そこでこれらのリトポロジー作業をVR空間で行うことで、45%ほどスピードアップできることがわかった。時間の短縮だけでなく、VR空間でのリトポロジー作業はかなり楽しい。リギング作業もVRで63%スピードアップする事例があり、特にカメラワークの試行錯誤はVRに向いている事例でもある。

MARUIを活用したリトポロジー作業の様子

●MARUIのプロモーションビデオを作成したMATIAS ZADICOFF氏の感想

MARUIのプロモーションビデオは、3DアーティストMATIAS ZADICOFF氏が実際にMARUIを利用しVR空間で制作したもの。それ以前にVR利用経験はゼロであった。

MARUIのプロモーションビデオを制作したMATIAS ZADICOFF

映像制作の進化。模型を使ったストップモーション撮影から、3DCG制作へ、そしてVRを活用した制作へ

VRが変えるアニメーション制作 : MATIAS ZADICOFF 氏が実際にMARUIを活用して映像制作した様子(インタビュー)

MATIAS ZADICOFF氏はMARUIでの制作について、その感想を次のように語る。

「PCでマウスとキーボードを使うことに比べて、VRを使うことはロジカルな進化だと感じた。VRで遊べる程度のものは巷に多いが、MARUIは現行のツールの延長で、制作プロセスを効率化することができる。制作中には3D空間の中でもっとも編集しやすい位置に移動することが可能だ。いままでの3DCGツールは窓からのぞいて制作するようなものだが、MARUIであればシーンに入り込んでアニメーションを編集することができる。演出したいストーリーを直接感じることができ、ポーズが正しいか? オブジェクトのバランスが正しいか? などをチェックすることができる」。

「とくにゲームコンテンツの制作に最適で、カメラで切り取って見るだけでなく360度チェックできるのが良い。VRゲームなら、VR環境でつくるしかない。将来は多くの人がVR空間で制作するだろう。MARUIは性能も価格もよくなてきている。人間工学と、没入感の観点から注目している。MARUIのおかげで、今までみたいに1日の仕事終わりに首が痛くなることもなくなった。ソファにねころがって制作できるからね」。

「演技のクラスを受講しているような感覚で、クリエイティブに自由度がもたらされる。いままでは折角つくったキャラクターが画面の中でしか動かなかったのを3Dプリンターで出力して気を紛らしていたが、MARUIのおかげでその気持ちも満たされるようになった」。

また最後に、「マウスで3DCGをつくるのはボクシンググローブをつけてアニメーション制作するようなものだ」といい、MARUIによるVR空間での3DCG制作を高く評価した。



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