>   >  「富野由悠季の世界」展が開幕、富野氏がメカ、絵コンテ、編集で気づいたこととは?~オープニング記念トークイベントレポート~
「富野由悠季の世界」展が開幕、富野氏がメカ、絵コンテ、編集で気づいたこととは?~オープニング記念トークイベントレポート~

「富野由悠季の世界」展が開幕、富野氏がメカ、絵コンテ、編集で気づいたこととは?~オープニング記念トークイベントレポート~

<2>高畑 勲氏が遺した『赤毛のアン』の絵コンテ、『Gレコ』で気づいたこと

左から福岡市美術館の山口洋三氏、富野由悠季氏、兵庫県立美術館の小林 公氏、島根県立石見美術館の川西由里氏、兵庫県立美術館の岡本弘毅氏、青森県立美術館の工藤健志氏、静岡県立美術館の村上 敬氏

工藤氏が、『Gレコ』で一部、富野氏がPhotoshopでデジタル彩色を試していることについて質問した。すると富野氏は「色鉛筆や水彩よりもPhotoshopの方が早いだろうと思ったので彩色だけはしてみせようと考えたが、あまりに手間がかかるのでやっぱりやめた。とりあえず線画を取り込んで色を付けることができるようにはなったけれど、それ以上のことに興味がなくなった」と答えた。その理由としては「CGスタッフにまかせればいい」、「余命が残されていないので、監督業に専念すると割り切り自分で作画するのはやめる」と述べられた。

展示から『赤毛のアン』の絵コンテコーナーにて

さらにトークでは、絵コンテについての話題も上がった。富野氏が「コンテなんて丸チョンでいいんだよ」と言う一方、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』ではコンテに修正液を入れて上から線を描き直していたことについて「なぜか」と工藤氏が訊ねると、富野氏はそのことを「覚えていない」と返答。展示されていた『赤毛のアン』の絵コンテを例に挙げ、「高畑(勲)監督が直した僕のコンテを、昨日、はじめて見た。僕が5コマ描いたコンテを高畑監督が上の2コマと下の2コマを消して直している。あれでコンテになってるわけ。その直し方を見て息を飲んだ、あんな線に目玉チョンチョンって。高畑監督のこういう絵でもコンテの展開がわかるわけだから、ああやっぱりこうだよね」と語った。

壇上の富野氏

また川西氏は、展示にもある『Zガンダム』のコロニーレーザーの中で百式とジ・Oとキュベレイが三つ巴で戦うシーンを例に、TV版と劇場版の絵コンテのちがいについて訊ねていた。

これに富野氏は「『イデオン』でもそうだったが、1話完結の作品を映画化する場合、作品全体を通して見るため見え方が変わってくる。なのでTV作品を映画にする改変作業では、作画も行うし、見えないところでハサミも入れ直すので、TV版と比べると1コマ2コマの単位でほとんどちがっている」と話した。

それから「アニメはそういう改変作業ができるおかげで、5年たっても10年たっても再編集してつくり直せるとても便利な媒体」と言い、「20年たっても元の形に近いままでつくり直しができる。一番はじめの物語のつくり始めを安易に考えないで、用心深くつくっていただきたい」と希望した。

展示から『ガンダム Gのレコンギスタ』のコーナーにて

なお、先日フランスで開催されたJapan Expoで世界初上映され話題を集めた『Gレコ』劇場版は公開前のため、現在のところ展示には含まれていない。しかしこの劇場版『Gレコ』について富野氏はトーク終盤で「『Gレコ』は20年・30年後に認識される作品になるだろうという目論見でやっているので、今の好みだけでつくってはいない」と触れた。

そして「(TV版では)宇宙エレベーターのナット(駅のような設備)を全て同じデザイン、同じ色にしてしまったせいで、どこにいるのかわかりづらくなっていた。劇場版ではその部分を大改訂した。たかが2~3カットの改変だが圧倒的にちがう。そこを見て欲しい」と、新作の見どころについても語った。



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