<2>ProRender専用クラウドレンダーファーム「Bullet Render Farm」
Bullet Render Farm 展示ブース
Bullet Render Farmは日本のA.L.I. Technologiesが提供する、Webブラウザで利用するProRender専用のクラウドレンダーファーム。データの扱いにブロックチェーンを活用した先進的なクラウドレンダーファームだ。一般的には暗号通貨のベースとして使われるブロックチェーンの技術を、データの信頼性やセキュリティのため、改ざんを防ぐために用いている。現在はベータ版の試用ユーザーを募集中で、正式なサービスは2019年9月から開始する予定とのことだ(ベータ版の問い合わせはbrf-info@ali.jp)。
同社は数千GPU規模の巨大レンダーファームを日本国内関東圏にもち、まずは日本のユーザーを対象としているが、後々は世界的にシェアを広げていきたいそうだ。主なターゲットとしては自社内に大規模レンダーファームをもつ大手CGプロダクションではなく、中小規模のCGプロダクションを想定している。正式な料金体型は、まだベータ版の段階のため未定とのことだ。
Bullet Render Farmでは、ProRender対応のアプリケーションやツールから出力された.rprファイルを、Webブラウザを利用しクラウドにアップロードし、フレームごとに分散させて一気にレンダリング計算を行う。利用マシンの割り振りを調整する専用のディスパッチャなどは存在せず、自律的に分散させてレンダリングが行われる。分散のしくみとしては求める画像の解像度が高い場合は4分割などタイルベースで分割し、通常は複数フレームを分散させてレンダリングが行われる。
レンダリング用のファイルをドラッグ&ドロップでアップロードする様子
データをアップロードし、複数フレームを一気にクラウドで分散レンダリングしている様子
数秒後にレンダリング結果が得られた、CADデータを元につくられた車両のCG
会場で行われたデモでは数百フレームを同時並行で一気にレンダリングし、その様子は小気味良い印象であった。ただし、フレーム単位の分散のため、ある単一フレームがとても複雑なライティングや複雑な計算を要する場合は、全体の計算終了時間が、その計算時間のかかる1フレームに影響されるといった懸念は残る。また国内の小中規模のCGプロダクションの場合、ネットワーク環境がそれほど速くないことがクラウドサービス利用のボトルネックになるという懸念もある。いくらレンダリングのスピードが速かったとしてもクラウド上のレンダーファームを利用するためのデータのアップロード、レンダリング完了後の4K・8Kクラスの高解像度の連番画像をダウンロードする手間とスピードがボトルネックとなりえる。
これらの問題点についてA.L.I. Technologiesとしては、レンダーファームが日本国内関東圏にあり、海外のクラウドと異なりネットワークとして近い場所にあるメリットが享受できることと、国内のネットワークサービスが今後より安価に速くなっていくことを期待しているそうだ。
なお、ProRenderの.rprファイルは、複数フレームで効率の良いデータ形式となっており、フレーム間で共通のテクスチャデータは1ファイル分しか保持せず、フレーム間の差分データのみをデータとして保持するなど、データ量が小さくてすむよう、工夫がなされている。
クラウド上にあるレンダーファームはすでにいくつか存在しているが、Bullet Render FarmとしてはProRenderに特化した環境であることをウリとし、将来的にはCPU/GPUの空いている世界中のマシンの余剰計算力を集めてレンダーファームとして活用する壮大な構想も考えているそうだ。