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学校はクソゲーか!? ゲームの力で授業を面白くする「教育のゲーミフィケーション」アフターレポート

学校はクソゲーか!? ゲームの力で授業を面白くする「教育のゲーミフィケーション」アフターレポート

全体の約6割をしめた教育関係者

ここまで紹介してきたように、「教育のゲーミフィケーション:プレイフル/ゲームフルな学びのデザイン方法論」は日本で初めて開催された、教育関係者向けの本格的なオンライン講座となった。それでは、他の受講者はこの試みをどのように捉えたのだろうか。2019年8月7日に立命館大学で開催された「日本デジタルゲーム学会2019夏期研究大会」で藤本氏が行なった口頭発表「ゲーミフィケーションデザイン支援のためのオンラインコースの開発」で公開されたデータを基に紐解いてみたい。

すでに述べてきたように、本講座は「デジタルゲームを利用した学習や、学習カリキュラムのゲーム化に対する関心が高まって」おり、欧米の研究シーンを中心に「教育のゲーミフィケーション化で学習意欲の向上や、学習継続の支援、深い概念理解などの教育効果が示されている」ものの、現場の教員にとって「楽しさと学習効果を両立させるような授業づくりが難しい」現状を解決することが目的に掲げられている。これを解決する方法論のひとつとして、MOOCによる教材研究が企画されたのだ。

本講義の登録者は合計510名だったが、初回講座の受講者数は395名で、修了者は56名(14.2%)だった。男女比は7:3で、教育関係者が約6割を占め、ゲーム開発者は1割程度だった。ゲーミフィケーションの事前知識も、「少しは知っている」と「ほとんど知識がない」を合計すると9割以上となった。一方で年齢別では20代から50代前半までがバランス良く散らばり、特定の年齢層が突出することはなかった。また、地域別では東京・千葉・神奈川が多かったが、地方の参加者も少なからず見られた。

実際の受講シーンでは、講義ビデオの総視聴回数が約6,600回で、総再生時間は約19,000分にのぼった。もっとも、一番再生回数が多かったのは最終日の543回で、次点が初日の382回だった。ここから浮かび上がってくるのは、「授業づくりに課題を抱えており、何らかの有効なアイデアが欲しい」というニーズが世代や地域を超えて存在することだ。また、締切を設定することでモチベーションが上がるのが、人間の変わらぬ性であることも確認された。

また、2019年8月29日にヴァル研究所で開催された勉強会「ゲーミファイ・ネットワーク 第7回勉強会」では、受講者の感想も共有された。ほとんどの参加者が内容を好意的に捉えており、「講座のテーマや趣旨を理解できた」、「学んだことを実践してみたい」という人が多かったという。もっとも、このアンケートは修了者に対して行われたもので、バイアスがかかるのは当然だともいえる。一方で14.2%という終了率は他のMOOCと比べても特別高いとはいえず、離脱者を下げるさらなるしくみが求められるとした。

ゲーミファイ・ネットワーク第7回勉強会で公開された資料

ゲーミフィケーションが教育にもたらす効果について、最新の研究事例も共有された。それによると、ゲームの要素や性質は教育内容ではなく、学習者の行動や態度に作用し、結果として学習効果に反映されるのだという。ゲームをきっかけに特定分野に関心を深めるようになる「誘い水としてのゲーム」は好例だ。これには歴史を扱ったゲームをプレイした人が歴史に興味をもつようになり、自ら学習を始めるなどの行為が相当する。

また、ゲームの経験がその後の学習効果を間接的に高める、「未来の学習のための準備」に影響を与える研究についても紹介された。ゲームのプレイ経験が、その後の学習活動の効果を間接的に高めるというものだ。実際、『シヴィライゼーション VI』、『コール オブ デューティ』、『Stats Invaders!』を事前にプレイした学習者は、プレイしなかった学習者よりも、関連する授業から多くのことを学び、成績が良くなったという研究結果もあるという。

一方で個々の受講者は本講座からどのような知見を得たのだろうか。会場でヒアリングして回ったところ、「ふだん何気なく行なってきた授業づくりに、知らず知らずのうちにゲーミフィケーション的な要素が含まれていることがわかり、自信が得られた」という回答が聞かれた。また「ゲーミフィケーションに関する学術的な知見が整理されたことで、自分の理解も進んだし、周囲への説明もしやすくなった」という声もあった。講座内で紹介された膨大な参考文献も、さらなる理解の手助けになりそうだった。

ゲーミファイ・ネットワーク第7回勉強会の模様

筆者にとっても授業づくりの参考になる部分があった。ゲーム要素カードに盛り込まれた「驚き&不確実さ」の要素だ。「運の要素で思いかげない驚きを与えるしかけを組み込む」というもので、これに従って今期は大半の授業でグループワークを行うと共に、毎回くじびきでメンバーを変更するようにしたのだ。これによりクラス内での交流を促進させ、日本人学生による、留学生に対する言語サポートも自然と可能になった。他にもいろいろなアイデアが考えられそうだ。

前述の通り本講座は研究の一環として実施されたもので、現在はその結果を基に内容を改訂中だ。そのため参加者以外は講義内容を確認できず、新規受講者の申込みもできない。しかし、今秋に第2期の講座が開始される予定とのことなので、本記事で興味がわいた読者がいたら、受講してみると良いだろう。学校だけでなく、企業研修などにも幅広く応用できそうだ。何より社会人にとって、格好の学び直しになると実感できた。今後もこうした教材が増えることを期待したい。

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