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田島光二がクリエイターの卵たちにエール! 映像制作の仕事展×デジタルハリウッド「映像制作を仕事にする理由」レポート

田島光二がクリエイターの卵たちにエール! 映像制作の仕事展×デジタルハリウッド「映像制作を仕事にする理由」レポート

充実の質疑応答

イベントの中盤からは来場者からの質問が絶えず、そのひとつひとつに田島氏は丁寧に答えていった。本稿ではそのいくつかをピックアップしてお届けする。

質問:コンセプトアーティストを目指してモデリングの勉強をしています。モデラーやコミックアーティストからコンセプトアーティストになったという話をよく聞きますが、モデラーからキャリアをスタートさせることについてどのようにお考えですか?

田島:最終工程ではCGになるので、モデラー上がりの人だとモデリングしやすいデザインが描けたり、モデラーに細かい指示ができたりするので現場ではとても喜ばれます。実際、3Dからコンセプトアーティストのキャリアをスタートさせる人も多く、モデラーだけではなくライティングやマットペイントからコンセプトアーティストになる人もいます。ILMにはデザインのヘルプをしたり資料集めをしたりと、コンセプトアーティストの補佐的な仕事をする「アートアシスタント」を経てジュニアになる人もいますよ。いずれにしても、3Dの勉強をしていると強いですね。コンセプトアーティストって、けっこう地味な仕事が多くて、ひとつのクリーチャーを描くにしても、「目」、「くちばし」、「羽根」など、各パーツごとに色やテクスチャのバリエーションを何十パターンも提案します。このように、地味な仕事ではありますが、「かっこいい一枚絵が描けてこそ」でもあるので、3Dの練習だけではなく画力UPの練習も怠ることなく続けてください。

質問:リテイクの指示はどのような感じでもらって、どのように詰めていくのですか?

田島:毎日朝と晩に「デイリー」というミーティングがあって、シアタールームに全員集まって口頭で指示を受けます。メールの場合は赤ペン先生みたいに指示が入ったものが返ってきます。何度かリテイクしたもののなかなかうまくいかない場合は、資料となる画像を添付して話し合います。リテイクの出し方は監督によって様々で、例えばある監督はかなりビジョンが明確で「あと5ピクセルくらい左に」、とか「この部分を13%小さく」とか、指示がとても細かくてやりやすかったです。中にはできた絵を見ないとイメージができないという人もいるので、そういう場合は「地獄のパターン出し」になります(笑)。

質問:モデラー志望の場合、模写力をアピールした作品を入れた方が良いと聞きます。田島さんは、模写力やオリジナリティをどのように身に付け、ポートフォリオやリールをどのように育てていきましたか?

田島:結論からいうと、僕が就職活動で使っていたリールでは模写力は意識していませんでした(当時のリール参照)。先ほどお話したように、僕はモデラーとしてではなくコンセプトアーティストとして採用されたので、そこは重要視されませんでした。モデラーのリールとしては、本当に良くないリールだしダメな例です(笑)。モデラー志望で応募するなら模写力はとても重要です。車のデザインであれば内装まで完璧に作っておいた方が良いし、ワイヤーフレームは絶対に入れておくべきです。オリジナリティに関しては、昔からオリジナルのポケモンを考えるのが好きだったんですよね。実際、仕事の現場でもオリジナリティに溢れたアイデアをみんなで出し合ったりします。だから、好きな映画の続編を勝手に作ってみたり、オリジナルのアイアンマンを作ってみたり、「自分だったらこうするのに」とイマジネーションを膨らませて「自分のオリジナル」を表現してみてください。オリジナリティはその過程で育つでしょうし、デザインしていく上での強みになります。

質問:勉強法についての質問です。海外に渡ってからデザインの勉強をし直したと話されていましたが、どのような基準でどのように勉強されたのですか?

田島:1枚で見せる構成力はもちろん、デザインするには本当に様々な要素が必要で、ちゃんとした仕事ができるまで勉強には2年半ほどの期間を要しました。はじめの頃は、大きな仕事をもらってもクオリティは低いしコミュニケーションも全然上手くいかないし、つくっても全て回収されていました。その中で痛感したのは、絵を描くスキルだけではなく、自分が何が分からないのかを質問したり、お互いに分かっていないところを話し合ったりする「相手が欲しいものを汲み取る力」がとても大切だということです。

技術的な面では、リアルに描く練習をしていました。というのも、3Dでつくったとしても、リアルに見せられなかったらデザインとして弱いんです。現実でないものをどうすればリアルに見せられるか、ライティングの変化、パースの狂いなどにすぐに気づけるように、まずは写真の模写をたくさんしました。写真は自分で撮った写真でも好きなフォトグラファーの写真でも何でも良いのですが、「何をどうすればリアルに見えるか」を意識しながら模写しました。また、油絵の模写も沢山したのですが、これがとても良い勉強になりましたね。というのも、写真の模写は「写真をコピーする」作業なんですが、油絵の模写は「印象」を描いていたりするんですよ。例えば「岩」を模写するにしても、様々な色が使われているなとか、どういった色使いをしているのかとか、画面の構成の中でディテールをどこにもって来ているのかとか、そういった所を意識しながらたくさん模写していました。

デザイン性を磨くなら、好きなデザイナーをまず見つけて、そのデザインがなぜかっこいいかを考えて模写をするのもとても勉強になります。僕がクリーチャーばかりつくっていた頃は、Aris kolokontesさんの模写をしていました。僕は主にインターネットで勉強していたので、おすすめアーティストやサイトを少しご紹介しましょう。Jordu schellさんのサイトや、シンガポールのアーティストFeng zhuさんのYouTubeチャンネル『FZDSCHOOL』、最前線で活躍しているアーティストにインタビューするチャンネルの『Level up !』などがおすすめです。

あと、今でもJama JurabaevさんのチュートリアルをGumroadで買って勉強していますが、彼は2Dも3Dもめちゃめちゃ上手いんですよね。彼がBlenderを使い始めたらみんなBlenderを使い始めたり(笑)、影響力がすごいのでぜひチェックしてみてください。



■NEXT
映像制作の仕事展×デジタルハリウッド本科デジタルアーティスト専攻開講記念「映像制作を仕事にする理由」

11月17日(日)19:00~20:30 @デジタルハリウッド東京本校 駿河台ホール

  • ゲスト:鈴木卓矢氏 SAFEHOUSE inc. 取締役/背景モデリングスーパーバイザー
    Blizzard EntertainmentのCinematics部署で背景のデザインからモデリングまでを担当し多くの作品に携わる。現在はドイツでArt Directorとしてリアルタイム映像制作で活躍しているErasmus Brosdauとタッグを組んで、SAFEHOUSE inc.を設立。更に自身のスキルアップのためにフリーランスの背景モデラーとしても活躍中

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本科デジタルアーティスト専攻(全日通学制/クリエイティブ経験者選抜クラス)

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  • デジタルハリウッド 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-6
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