>   >  「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」レポート<2> 京楽ピクチャーズ.PRESENTS 映画『魔女の宅急便』メイキング&WOWトークセッション&VFX-JAPANアワード
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」レポート<2> 京楽ピクチャーズ.PRESENTS 映画『魔女の宅急便』メイキング&WOWトークセッション&VFX-JAPANアワード

「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」レポート<2> 京楽ピクチャーズ.PRESENTS 映画『魔女の宅急便』メイキング&WOWトークセッション&VFX-JAPANアワード

Webから映像・ビジュアルデザインへ

"VFXの未来"をテーマに行われた「VFXの未来 ~仙台、東京、ロンドンを結ぶ~」では、ビジュアルデザインスタジオWOWの髙橋裕士氏(President / Executive Producer)、田崎佑樹氏(Creative Director)が、映像制作にとどまらず、インスタレーションなど幅広いジャンルに挑戦し続ける同社の取り組みを紹介した。


左から、田崎佑樹氏(Creative Director)、髙橋裕士氏(President / Executive Producer)

現在は「モーショングラフィックス」、「インスタレーション」、「UI&UX(ユーザーインターフェース&ユーザーエクスペリエンス)」の3つを主軸にしているというWOWだが、そのスタートは少し意外なものだ。「1997年に仙台で起業した時はWebの制作会社でした。はじめに仮想のショッピングモールを起ち上げたんですが、全然、出店依頼がなくて(笑)。なので1年程で方向性をかえて、映像制作をベースにしたビジュアルデザインをスタートしました」(高橋氏)。
それから17年経った現在では、仙台のほか、東京、ロンドンにも拠点をおくなど、順調に事業を拡大している。「振り返ってみると、仙台で会社を始めた頃が一番つらかったですね。東京やロンドンの事務所を起ち上げた頃は、不安よりも"東京やロンドンでどんなことがやれるんだろう"という好奇心の方が強かったですから」(高橋氏)。
そんな同社の特長のひとつとして高橋氏が挙げているのが、スタッフのほとんどがデザイナーやプログラマーといった"つくり手"だという点だ。これは同社の"会社内ですべての答えを出していく"という方針のためで、作品も内製が多く、このことがWOWならではの独創的な制作物を生み出すポイントになっているように思う。


映像の枠にとどまらず、あらゆるビジュアルデザインを創造

では現在のWOWは、どのような作品を手がけているのだろうか? 会場では同社のこれまでの作品が映像とともに紹介されたのだが、中でも印象的だったのが、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」で開催された「NEOREAL WONDER キヤノンデジタルイメージングの世界」用の展示作品。体育館ほどもある巨大な空間に設置された曲面スクリーンと、無数に張り巡らされた水糸にプロジェクターで映し出した映像を組み合わせ、まるでオーロラのような美しさが表現されていた。「我々の代表作として、今後も残っていく作品だと思います」(高橋氏)という同作は、東日本大震災の直後、2011年4月に展示された。制作スタッフの中には家族の安否を気にしている人もおり、非常に不安定な中での作業だったという意味でも、思い出深い作品になっているのだとか。こうした苦労の中、完成した同作品は、ミラノサローネの期間中に行われた「ELITA DESIGN AWARDS 2011」で、見事グランプリを受賞している。
今後はさらに、新機軸としてプロダクトの開発・生産・流通にもチャレンジしていきたいという高橋氏。「デザインは"美しくあるべき"という日本人にとって当たり前の感覚を、どうやって昇華させるかという点が、時代を超えて素晴らしいものを作る鍵だと思います」(高橋氏)と言う言葉通りに、WOWの作品はさらなる"美しさ"を求め、広がりを見せていきそうだ。


特集