>   >  アニメCGに特化したカンファレンスが初開催「あにつく2015」
アニメCGに特化したカンファレンスが初開催「あにつく2015」

アニメCGに特化したカンファレンスが初開催「あにつく2015」

<3>「アニメ業界の歩き方」(ラークスエンタテインメント)

スタジオ雲雀のCG制作部が発展的に分社化したラークスエンタテインメントは、海外作品、外部プロダクションからの受注、自社作品と幅広いタイトルを手がけている。本講演では、スタジオ雲雀内に新しく結成されたアニメーションチームラルケの紹介から始まった。

あにつく2015

「アニメ業界の歩き方」講演の様子(写真提供:ラークスエンターテインメント)

登壇したのは、ラークスエンタテインメントの奈良岡智哉CGプロデューサー、アニメーション監督の岸 誠二氏、そしてラルケの比嘉勇二アニメーションプロデューサー。3氏がコラボレーションしたTVアニメ『暗殺教室』を題材に、様々な角度からの検証がなされた。まずはアニメーションの企画の立て方。企画・予算・シナリオ・コンテ・監督演出を踏まえた上で、作品の難易度が決まり、予算が決まっている場合の内容の調整は、主にシナリオ段階で行なったという。

『暗殺教室』の場合、岸監督は26人のクラスメートを真っ向から描きたいと考えていたため、モブも含めて3DCGを取り入れる手法を採った。
そこでまず、全生徒のモデルを、カメラが中距離まで寄っても作画と同じレベルになるように作成。同時に背景の教室も3DCGで作成することで、あらかじめ生徒の配置まで仕込み、完全に作画と3DCGが融合するようなハイブリッドな制作フローが構築された。
また、OPのダンスアニメーションの制作は2週間というタイトなスケジュールの中で進められたとのことで、絵コンテアップ後すぐに3D LO(レイアウト)でシーンを組み、同時に26人の生徒のダンスのパターンを26人の作画スタッフに振り分け、素材を差し替えていくことによって、効率的かつ3DCGのパワーを感じさせる画に仕上げたそうだ。

【アニメ暗殺教室】1クール振り返りPV

続いて、アニメーション制作の職種について。一般的な予算例を例題として読み解いていかれたのだが、ここでサンジゲン代表取締役の松浦裕暁氏が飛び入り参加というサプライズ。各氏の親交の深さが伝わってきた。

手描きの作画部分に関しては単価は上がっておらず、デジタル化で効率性とクオリティは上がっているが、その場合、設備投資が必要になってくるため、フリーランスの立場から組織化の流れも発生するのではないか、という予測も出てきているという。

奈良岡氏は、デジタル作画を導入することで動画と仕上げを同時並行で作業を進めるすることによって素材の流用等が円滑に行えるようになり、結果として作業効率を上げられると、持論を展開。そして「今までになかった表現も生まれ、新たな作家性が求められるようにもなる」、と期待を込めた。 岸氏は、アナログからデジタル作画が増えつつあり、その対応が焦点となるという。その中で、作画の価値自体はむしろ上がっていき、デジタルに対応できる人材は重宝されていくはずであり、また作業効率化が進むことにより少人数化が進む可能性について言及した。
比嘉氏は、デジタル化によって画の劣化を抑えられ、今後は改めて職人性も求められてくるのではないか、と続けた。そして、3氏の発言を受けるかたちで松浦氏は、原画動画仕上げを一緒に行うことで合理化でき、デジタル化によって機材や人材への投資も組織単位でやりやすくなってきたと語っていた。

TEXT & PHOTO_峯沢琢也

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