>   >  フォトリアルなビジュアルとフレームレートの両立をめざして〜積木製作「建築業界発、非ゲームにおけるVRにビジネス活用」|CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス個別レポ(2)
フォトリアルなビジュアルとフレームレートの両立をめざして〜積木製作「建築業界発、非ゲームにおけるVRにビジネス活用」|CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス個別レポ(2)

フォトリアルなビジュアルとフレームレートの両立をめざして〜積木製作「建築業界発、非ゲームにおけるVRにビジネス活用」|CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス個別レポ(2)

<2>東京モーターショーでCVTを解説するコンテンツを展示

VRコンテンツで避けては通れないのがVR酔いの解決だ。一般にVR酔いは三半規管への刺激と視覚情報のずれが原因になるとされ、画面上に基準点を表示するなど、様々なノウハウが日々、世界中の開発者によって研究され、共有されている。フレームレートを一定以上(Oculus Riftで75fps)に保つことも重要だ。しかし、ビジュアルクオリティの追求とフレームレートは相反するため、様々な工夫が必要になる。

ここで「第44回 東京モーターショー 2015」におけるジヤトコのブースで出展された、『CVTバーチャルドライビング』の開発事例が紹介された。
これはVRでCVT(無段変速機)の原理を理解しつつ、疑似走行体験が楽しめるというもの。CVTの仕組みをわかりやすく説明するには、VRコンテンツしかないと判断され、開発にいたった。小田桐貴司氏はUnity 5ベースで開発された本コンテンツで、どのような技術的工夫が行われたか、概要を紹介した。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:積木製作

CVT(Continuously Variable Transmission)は従来のATによるシフトチェンジと異なり、スムーズな変速が可能だ。しかし、その原理や乗り心地を実感してもらうには、最終的に「体験」してもらうしかない。こうした理由からVRコンテンツでの展示が決定された

本作はCVTの原理から疑似走行体験まで、全4パートで構成されている。Unityではパート別にシーンを分けて、順次ロードすることが多いが、本作では1つのシーンにまとめられている。これはパートを連続再生することで発生してしまう、瞬間的な「間」を排除するためだ。また各パートの再生時に初期化が行われると、Oculus Riftの画面が一瞬カクつくため、最初に全パートの初期化を済ませておき、順番に表示・非表示を切り替えている。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:積木製作

本コンテンツは4パートで構成されているが、各シーンをスムーズに切り替えられるようにUnity上では1つのシーンとしてコーディングされた

開発にあたっては、Unity Asset Storeから購入できる「Cinema Director」「SuperSplines」という2つのアセットが利用された。これはUnity 5ではタイムライン編集ツールが標準では搭載されていないことがあった。そしてSuperSplinesは、パスに沿って道路を作り、周りに木や草などのオブジェクトを配置できる点が魅力だという。Cinema Directorも非常に使いやすく、パススルー(=ライド)型のVRコンテンツを作る上で重宝していると説明された。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:積木製作

Cinema Director(60ドル)とSuperSplines(30ドル)はパススルー型のコンテンツをUnity上で作成する上で、必須ともいえるアセットだ。これによりFlashのようなタイムライン編集が可能になる

後半で登場する海岸沿いのコースは、地形全体がメッシュで再現されている。ただしオープンワールドではなく、一方向に向かって高速に移動するだけなので、「木はビルボードで済ませるなど、見えるところだけリッチに作っている」とのこと。地形はUnity 5のTerrain Engineで大まかに作り、Hightmapを出力して、地形生成ツールのWorld Machineに読み込んで調整。ここから再びHightmapを出力して、Unity 5に読み込ませたという。

  • CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:積木製作
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(左)Terrain EngineとWorld Machineを中心に据えた地形のデータ作成ワークフロー/(右)World Machineでの設定は複雑になりがちだが、本作はドライブシミュレータという用途に合わせて、最低限の設定で済ませている

もっとも、Terrain Engineで生成されるデータは重いため、フレームレートを稼ぐために最終的にローポリのメッシュに変換されている。これにWorld Machineで作成したノーマルマップを出力してマテリアルに入れ、最終的なシェーディングとした。そのほか、道路がぐんぐんと先に伸びていくシーンでは、単純にマテリアルのアルファのテクスチャをスクロールさせるだけで済ませるといった工夫も。こうした「良い意味でのわりきり」が重要だったという。

  • CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:積木製作
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(左)Terrain Engineで生成された地形はデータ容量が大きすぎるため、最終的にローポリのメッシュに変換。そこへ、World Machineから書き出したノーマルマップを用いて最終的なシェーディングに仕上げている/(右)道路が前方へと真っ直ぐに進むシーンでは、マテリアルのアルファに適用するテクスチャはループ処理で済ませることでデータ負荷を軽減

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