>   >  日本(StudioGOONEYS)とフィンランド(Anima Vitae)、それぞれの海外展開事例を考察する|CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス個別レポ(3)
日本(StudioGOONEYS)とフィンランド(Anima Vitae)、それぞれの海外展開事例を考察する|CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス個別レポ(3)

日本(StudioGOONEYS)とフィンランド(Anima Vitae)、それぞれの海外展開事例を考察する|CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス個別レポ(3)

<3>フィンランドのAnimaは、アジアのクリエイティブを求めている

続いては、Anima Vitaeのパサネン氏。現在、制作中の『Julia & PAL』向けにデザインコンペを行なった背景について、「もともとヨーロッパで起ち上げたプロジェクトだったが、次第に制作チームにアジア圏のクリエイターを迎えたいと思うようになった」と説明。コンペには個人から企業まで約150件の応募があったという。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:StudioGOONEYS

フィンランドのアニメーション制作会社、Anima Vitae(アニマ・ヴィタエ)。北欧のアニメーション業界の代表的なスタジオである同社は、2013年にクアラルンプールにAnimaPointという第2スタジオを設立、日本のCG業界との関係はグローバルアローとの出会いから始まった

また最新作『SUPER SCHOOL』については、もともと米英を中心に活動している脚本家からの持ち込み企画だったと明かした。企画概要をみて制作を決断したそうだが、その内容からパサネン氏は、日本のスタジオ(クリエイター)と組むべきだと感じたという。
そこで成田氏に相談したところ、StudioGOONEYSを紹介されたのだとか。「現在はコンセプトだけで、他に何も決まっていません。『Julia & PAL』と同じく、近くデザインコンペも予定しています」と、状況が説明された。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:StudioGOONEYS

最新作『SUPER SCHOOL』はまだ制作が始まったばかりであり、StudioGOONEYSと一緒に企画を練り上げているところだという

また、あえて日本の制作会社と提携する理由について「アジア的な視点がほしかったことと、日本には巨大なアニメ市場があり、そこに参入したかったから」という2点を挙げた。
欧州の友人に話す度に「諦めた方が良い、日本は特殊な市場で、たくさんのライバル(国産アニメ)がある」と言われたそうだが、決して諦めなかったと語るパサネン氏。その不屈の精神が、こうした出会いを結実させたと言えよう。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:StudioGOONEYS

講演の冒頭で披露された、パサネン氏の略歴をまとめたスライド

パサネン氏のコメントに応じて、斎藤氏もMIPCOMで、ある配給会社から「完成作品でなく、コンセプトから一緒に考えてつくり上げていける作品を配給したい」と言われたいうエピソードを披露。
「企画の売り込み方次第で、チャンスが消えることもあれば、共同制作のきっかけが見つかることもある。楽しそうな部分が共感できるかが重要だと感じた」と、ふりかえる斎藤氏。これらは実際に現地に行ってみなければ得られなかったことだとも語っていた。

<4>国際展開のタイムリミットはあと3年?

一連の議論をひきとり、成田氏は「タイムリミット」について考えてほしいと投げかけた。
少子化と共に日本のアニメ市場は縮小傾向であり、特に成人向け作品については漫画で実績のある作品が深夜に放映されるサブカル的な市場になっているのが現状だ。そうした状況を打破するには、いつかは日本を飛び出して海外スタジオと直接契約を交わしていく必要があるのという持論を展開。
そして、そこではプロデューサーや制作会社にIPが残らない、日本の製作委員会方式は通用せず、リスクをとってオリジナルを手がけていくことが重要だという。

CGWORLD 2015 クリエイティブカンファレンス:StudioGOONEYS

講演の冒頭で披露された、成田氏の略歴をまとめたスライド

毎年5〜6の見本市に足を運んでいるという、成田氏。オススメを聞いたところ、先述のMIPCOMに加えて、毎年6月に開催される「アヌシー国際アニメーション映画祭」と、9月に開催される「カートゥーン・フォーラム」を挙げた。いずれもフランスの見本市だが、北米の見本市にはしばらく参加していないのだという。その理由について成田氏は、欧州、特にフランスで日本のコンテンツが好まれる傾向にあり、中でもキャラクターデザイナーや背景デザイナーの需要が高いと補足した。

日本のクリエイターや企業と共同制作を望んでいるが、ビジネスの糸口が見つからない海外企業が多いのが実情だと説明する成田氏。このように海外企業の目が日本企業に向いている間に、海外との共同制作に踏みきるべきだと強調する。
成田氏は、その猶予期間を、あと3年だとした。その上で未来の子どもに愛されるような、素晴らしいIPを制作していきたいと抱負を語っていた。

TEXT & PHOTO(講演スライド)_小野憲史 / Kenji Ono
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



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