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音楽、映画、インタラクティブコンテンツの祭典「SXSW 2016」レポート

音楽、映画、インタラクティブコンテンツの祭典「SXSW 2016」レポート

意欲的なプロダクトが集まる屋外展示

コンベンションセンターの外では様々な企業が研究開発を行なったプロダクトが展示されていた。例えばOculusとの共同開発によりリリースされたGearVRを有するサムスンは、最新のVRコンテンツを体験できるスペースを用意。会場前には長蛇の列ができていた。

ではこの屋外展示の中から、とくに興味深かった展示を以下に紹介していく。

Sony

耳を塞がないヘッドホン

  • 本の上にプロジェクタで投影したイメージをタッチすることで、移動したりアクションがおきる

  • 振動で素材感を表現するプロダクト。写真に写っているのは金属の球。傾けることで金属の球同士がぶつかり合う感触を振動で伝える

日本からはSonyの研究開発部門が出展。耳を塞がないイヤホン・ヘッドホンや振動だけで素材感を表現するプロダクト、タッチができるプロジェクタなど、見る者を驚かせるコンテンツが並んだ。耳を塞がないイヤホン・ヘッドホンはその名の通り、耳を塞いでいないのにしっかりと明瞭な音を聞くことができる上に、装着している本人以外には音が聞こえないという不思議なプロダクト。もちろん耳を塞いでいないので流れる音以外の環境音や話し声などもしっかりと聞くことができる。

ちなみに、これらは研究開発のため、残念ながらどれも販売の予定はないとのこと。

McDonald LOFT

DELLIBMといったおなじみのメーカーが展示やイベントを行う中、異彩を放っていたのはマクドナルドの出展だ。ファーストフード店がVRコンテンツを展示していたのである。

今回デモが行われたのは「V-Artist」。ヘッドマウントディスプレイはHTC Viveに専用コントローラーを使用し、Happy Meal Box(日本で言うハッピーセット)を中心とした世界観の中で3Dペインティングを行えるというものだ。VR空間上で描いた絵は会場に設置された専用機器を使い、画像をプリントしたりSNSに共有することができた。子供向けのコンテンツなのかと予想したが、会場ではハイクオリティなVR体験に年代問わず多くの人が楽しんでいた。

なお、このコンテンツは米ダラスに拠点を置くGroove Jonesと米マクドナルドが共同で開発したもので、Unreal Engine 4により制作されたとのこと。このほかにも今年の3月にはスウェーデンで「組み立てるとVR用ゴーグルになるHappy Meal Box」を販売するなど、マクドナルドのVRへの関心の高さが窺える。

また、同会場ではドリンクやアイスのほかにもポテトやチーズバーガーなど、マクドナルドでおなじみのメニューが無料で振る舞われており、バンドのライブとともに多くの人が楽しんでいた。

『ゲーム・オブ・スローンズ』、『MR. ROBOT』の展示

写真左上:『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場するキーアイテム「鉄の玉座」。写真右上:同作品の前シリーズに登場した「顔の間」に自分の顔を撮影して出現させることができる。写真左下:遠くからでも目立つ『MR.ROBOT』の観覧車、もちろん乗ることも可能。写真右下:『MR. ROBOT』の劇中を再現したセット

メーカーの展示もさることながら、SXSWにはエンターテインメントの展示も存在する。ハリウッド映画並のハイクオリティVFXにも注目が集まる海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』特設会場のほか、ハッカーが心理戦を繰り広げるサイコスリラードラマ『MR. ROBOT』の観覧車が街中に出現するなど、こちらも大勢の人で賑わっていた。

ダウンタウン

ダウンタウンのちょうど真ん中あたりのブロック。写真に写る人だかりは大道芸人によるパフォーマンスによるもの

ダウンタウン周辺のシアターでは、ムービー部門の上映などが行われていた。

通りのどこにいても陽気な演奏が聞こえてくるほど、あちこちの店でバンドライブが行われていた

JAPAN HOUSE

JAPAN HOUSE会場入り口。6th Streetにあるイベントスペースを貸しきって行われた

JAPAN HOUSEは去年から始まったSXSWの公式プログラム。ここで発信されるのは年度毎のテーマに沿った日本産まれのサービスやプロダクトだ。2回目となる今年のテーマは「Extension of Humanity」で、ロボティクス・AI・医療技術・モビリティ・エンターテイメントと5分野にわたり「人間の可能性を拡張してくれる最新技術」にフォーカスしている。

会場ではジェミノイドなどで知られるロボット学者・大阪大学石黒 浩教授の登壇や、日本のポップアーティストYun*chiによる脈派データを使用したインタラクティブなライブパフォーマンスなどが行われた。

写真左:3Dプリンターで出力された臓器模型。写真右:質感・重量など細部まで本物を再現した胃のモデル

上の写真は神戸大学の杉本真樹氏が取り組んでいる次世代の臓器造形技術。造形自体を再現した臓器モデルはここ数年、いたるところで見られたが、驚くべきは質感すらも再現した点だ。実際に手に取ってみたが、適度に湿っており、胃のモデルは"袋"なので柔らかく、肝臓のモデルはずっしりと重い。表面のテクスチャも独特の触り心地だった。

筆者は本物の臓器に触れたことがないので比べることはできないが、内蔵とはこういった感触なのかと素直に納得できてしまうほど、高い再現度を感じた。こんなものまで3Dプリンタで出力できるのかと驚いたのと同時に、これらが今後、手術シミュレーションなど医療の現場で大いに役立つであろうことが想像できた。

出典:www.facebook.com/sxswjapanhouse/

去年は女性テクノユニット「Perfume」がSXSWでライブパフォーマンスを披露し話題を集めたが、今年も日本のアーティストによるライブがいつくか行われた。ここJAPAN HOUSEでは「Yun*chi」がNTTサービスエボリューション研究所とコラボレーションし、インタラクティブなライブパフォーマンスを披露した。その内容は脈派センサーからリアルタイムにライブ中のYun*chiの脈派データを取得し、背景のスクリーンに脈派データを用いたインタラクティブな映像を流すというもの。アーティストと観客との一体感を高めるパフォーマンスとなっていた。

総括

SXSWは、全体を通してまさに「祭典」という呼び名にふさわしい、はなやかなイベントだと感じた。本記事ではインタラクティブ部門を中心に紹介したが、ミュージック部門ではさらなる盛り上がりを見せていたそうだ。

10日間にわたって行われるSXSWに日本から参加するのは、なかなか難しいことかもしれない。しかしこのイベントに参加すると、世界で今、何が注目されているのかを肌で感じることができる。時流をつかむには最適なイベントだと思うので、来年はぜひ、現地に足を運んでみてほしい。


  • 「SXSW 2016」

    会期:2016年5月11日~5月20日
    会場:テキサス州オースティン
    日本語公式サイト:sxsw.jp
    米国公式サイト:www.sxsw.com

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