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音楽、映画、インタラクティブコンテンツの祭典「SXSW 2016」レポート

音楽、映画、インタラクティブコンテンツの祭典「SXSW 2016」レポート

Trade showに出展された日本のプロダクト

出典:www.sxsw.com/exhibitions/trade-show

Trade showはコンベンションセンターのエキシビションホールで行われる大規模な展示会であり、商談の場でもある。世界中の新規に開発されたプロダクトやサービスがこのExhibition会場にてデモを行うのだ。

Trade showの行われる会場の一番端、AREA1700~1800が日本からの出展者のスペース。贔屓目でもなく、非常に個性豊かな展示が集まっていたと感じた。そのうちのいくつかを紹介していこう。

GODJ Plus

こちらは宮城県仙台市に本社を置くJDSoundから、今回、新たにリリース予定のオールインワン・ポータブルDJシステム「GODJ Plus」(写真左)。つい先日、クラウドファンディングサイトMakuakeで初日から500万円を集めた注目のプロダクトだ。写真右はすでにリリースされている「世界最小のDJシステム」をコンセプトにした「GODJ」。「GODJ Plus」は「GODJ」からさらに進化し、ユーザーからの意見を取り入れスピーカー内蔵型となっている。この「GODJ Plus」、2016年10月に発送が開始されるとのこと。
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e-skin

東京大学発のベンチャー「Xenoma」からは、電動布を使用したキャプチャスーツ「e-skin」が出展されていた。「Xenoma」は昨年11月に東京大学染谷研究室からスピンオフし、会社を設立したばかり。今回のデモではこのシャツを利用したリアルタイムモーションキャプチャが行われていた。主にUnityでゲーム開発を行なっているクリエイターにはまさに朗報とも言えるキャプチャスーツだ。

従来のモーションキャプチャシステムはどんなにミニマムなものでも高額で、多くの機材が必要となる。ところがこの「e-skin」はマーカーも大きなバッテリーもキャプチャのためのカメラも必要ない上、値段が安い。シャツの上には伸縮性の配線とセンサーが付いており、約5cm四方の小さい箱(バッテリーやマイクロコンピュータが内蔵されている)を体の中心部に装着。これだけで環境を問わずキャプチャが可能になる。値段はなんと、1着100ドル以下で検討中とのこと。

将来的にはSDKを公開し、ユーザーが自由に拡張を行えるよう、Unity上で誰でもアプリケーションをつくれるようにする予定だという。「e-skin」は現在も精鋭開発中で、リリース日は未定だが今年中のリリースが目標とされている。体験型のコンテンツにさらなる広がりを与えそうな「e-skin」の動向に、今後も注目したい。
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Lyric Speaker

SIXが開発した「LyricSpeaker」は、スマートフォンから再生した音楽がスピーカーから流れてくるのと同時に、歌詞も表示されるというもの。スマートフォンからWi-Fi経由で音楽情報と歌詞情報を「Lyric Speaker」に転送する仕組みになっている。面白いのは、再生されている曲の歌詞・曲調・音程を自動的に読み取り、その音楽に合ったタイポグラフィが作成されるという点だ(例えばロックには力強いサンセリフフォント、しっとりとした曲にはセリフフォント・明朝体が使われるといった具合)。プロダクト自体も流れるタイポグラフィもシンプルながらとても洒落ており、多種多様なインテリアに合わせられそうだ。「LyricSpeaker」は6月にプレオーダー開始、9月以降の発送となる予定で、価格は324,000円。
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Milbox Touchr

写真左:Milbox Touch本体、写真右:今回新たに開発されたタッチ用モジュール

WHITEからは新技術を使った簡易型VRゴーグル「Milbox Touch」が出展されていた。「Milbox Touch」はGoogleのカードボードハコスコなどのように、一見すると従来の簡易型VRゴーグルに思えるが、このプロダクトの最大の特長は、回路がプリントされたシールにある(写真右)。このシールはVRゴーグル筐体側面に配置され、ユーザーがゴーグル装着中に指で直感的に操作を行えるという役割を担っている。

回路がプリントされたシールは伝導性インクで印刷されており、静電容量式のタッチパネルがスマートフォンからさらに延長していると言う構造になる

従来の簡易型のVRゴーグルは安価で誰でも手に入れることができ手軽で便利だが、体験中に入力(操作)ができないことが課題だった。その課題を「Milbox Touch」は、回路がプリントされたシールを用いてスマートフォンのタッチパネルを拡張するという仕組みで解決した。つまり、スマートフォンのタッチ範囲がこのシールによってディスプレイから拡張され箱の側面にまで及んでいるのだ。実際にデモを体験させてもらったが、操作感はとてもなめらか。ディレイもなく、ストレスがないため、ゲームはもちろん、様々なインタラクティブなVRコンテンツに活用できるだろう。価格も2,000円程を予定しているとのことで、すぐ手に入れて試したいプロダクトだ。

ちなみに今回、体験した「Milbox Touch」はプロトタイプで、さらなる開発と合わせてiOS・Android・Unityに対してSDKを開発中。発売は4月中、SDKの配布は早ければ5月末を予定しているとのことだ。
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ルクルク

「ルクルク」はキッズプレートからリリースされたAR&VRハイブリッド・アプリ。VRやARといった技術は専門知識を持った開発者によりつくられるコンテンツなので、つくってみたいがハードルが高いと思っている人も多いだろう。この「VR app for Dummies」と題したルクルクは、そんな人たちに届けたいアプリである。

使い方はまず、アプリケーションを起動させ、表示されるスキャナーにARマーカーを認識。ARマーカーを認識すると任意のコンテンツが立ち上がるという仕組みだ。コンテンツがVR映像であれば、ゴーグルを通すことでVR映像として再生される。スキャンする対象は映像・パッケージ・雑誌などほぼ制限がない上に、VR映像自体も表現の幅が広がり続けているので、様々な使い方ができそうだ。

VR映像は一眼・二眼ともに対応しており、ARマーカーの配置は管理者の登録をすることによって可能になる。すでにアプリはiOS・Andoroidでリリースされており、今後はスキャン方法も空間認識・立体認識・顔認識など拡張を目指し、VRコンテンツに関してもインタラクティブな表現に挑戦していきたいとのこと。ちなみに同社では現在、アプリのさらなる拡張に向けて積極的にVR/AR・バックエンドエンジニアを採用中とのことだ。
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Motion Score

続いては電通から発表されたアプリケーション「MotionScore」。SXSW ReleaseIt部門でファイナリストにノミネートされた。「MotionScore」は人の動きを楽譜化する技術で、リアルタイムでモーションのスピード(BPM)やテンションをブレンドしていく。今回のデモでは実際に機器から送られたBPMに合わせてモーションがなめらかに変化していく様子が見てとれた。
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さらに、会場では同社から最近リリースされたスマートフォンアプリ「オドレター(ODDLETTER)」のデモも行われていた。同アプリは撮影した写真が踊りだし、メッセージつきでその動画をシェアできると言うもの。複数あるプリセットの中から自由にブレンドを行い、最大6秒のオリジナルダンス動画をつくることができる。このダンスのブレンドがとても滑らかなのは「MotionScore」と同じ技術でつくられているからとのことだ。「オドレター(ODDLETTER)」はiOS・Androidでダウンロード可能だ。
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Trade show全体を通して

Trade showにはハードウェアからアプリケーション、サービスまで各国の様々な展示があったが、中でも出展数が多く注目を集めていたのはハードウェアやVRといった見て触れることができる体験型の展示だったように感じる。そのほかにも3D立体ディスプレイやピザを作る3Dプリンター、超巨大ロボットなど個性豊かな展示が揃っていた。

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意欲的なプロダクトが集まる屋外展示

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