<3>Autodesk 123D Catch/ThingMaker Design
3Dデータは専用のソフトウェアで作成するが、スキャナでものの形状をデータ化する方法もある。記念撮影のようにリアルな人物フィギュアを作成するサービスもすでにある。 「Autodesk 123D Catch」は写真データを元に3Dデータを作成するアプリだ。専用の3Dスキャナーがなくても3Dデータをつくることができる。タブレットならばカメラで撮影してデータ化し、プリンタに送れば製品ができあがる。
会場にあったオブジェ
ThingMakerは玩具メーカーのMATTELが出した3Dプリンタだが、Autodeskが提供する専用アプリの「ThingMaker Design」がある。 これはアプリに設定済みのパーツを組み合わせて自由に玩具やアクセサリーをつくりだすもので、ダイヤルを回すようにパーツや色を選ぶ画面はわかりやすい。パーツのラインナップ次第でいくらでも面白くなりそうである。
3Dプリンタに関しては依然、使える材質や表面の精度などもうひとつふたつバージョンアップが待たれるという印象だが、個人の趣味から製造業まで3Dプリンタなりレーザープロッターなりの操作端末として考えるとタブレットの期待値は大きいと思われる。
<4>iPad Proが描く世界
iPadが発売された当初、これからはタブレットの時代という見方があったが、最近は大型化したスマートフォンとノートパソコンの狭間に飲み込まれた感があった。
タブレット製品のCMでは、クリエイティブなグラフィック作業における創造性をアピールするのが定番だ。 グラフィック作業では、十分なパワーを持った本体があり、大きなモニターがあって、その前でマウスやペンタブレットで操作をする、というのが一般的なスタイルである。しかし、人が紙に絵を描く姿を思えば、これは本来、特異な作業形態だ。 タブレットはその名の通り、板切れを手に持ち、あるいは机の上に置いて、そこに直接書き込む。人類本来の作業スタイルであり、すなわち作業を直感的に行えるということだ。
ところが、タッチパネルでの描画は指先はもちろんスタイラスペンでも、微妙にもどかしい。結局、従来型のペンタブレットが欲しくなるし、本格的なグラフィック作業を行うことを考えると、タブレットだと能力的に不安が残り、ならば余裕を持ってパソコンを、という選択になる。これまでは。
しかし、タブレットはすでにそうした古い思い込みをはねのける水準まで洗練されている。 練られたアプリと、用途に応じた補助ツールが加わることで、デジタルとアナログ、バーチャルとリアルの垣根を超えた新しい創作、娯楽シーンの構想は広がっていくだろう。その幹としてタブレットの存在感は揺るがないし、あらゆる用途を下支えするものとして「画面の大きいスマートフォン」という枠を超えた性能を追求するのも必然となる。
iPad ProとApple Pencilは、世間的にはAppleの迷走のひとつとして語られがちで、筆者などもそういう世評をなんとなく受け入れていた。しかし、これは袋小路で苦し紛れに出した高性能機などではなく、次の世界を描こうという意図のある製品だったのだ、といまさらながら気づいた次第である。 そして、これからようやくタブレットの真価が発揮されるのではないかと思う。