Topic 2 キャラクターアセット
クオリティの追求だけでなくコスト管理も徹底する
モデル制作はスケジュールがタイトなため宮崎氏が描いた各キャラのラフイメージをリファレンスにモデルの作成が進められ、制作途中で最終的なデザイン画と刷り合わせるというフローが採られた。なかでもバイザウェイはラフデザインが決定稿になったため立体的な整合性が取れておらず、リードモデラーの古部満敬氏が宮崎氏のデザインに調整を加えながらモデリングが行われた。「以前はデ ザイン時に三面図も描いてもらっていましたが、ラフデザインの方がモデラー側から提案する余地が残されているのでやりやすいですし、ポーズや表情からキャラクターの特徴を把握することもできるというメリットもあるんです。例えばデザイン画ではヘミングウェイのマフラーは歪みを帯びているのですが、工数を減らすためモデラー側から歪みを抑えるといった提案をしました」(古部氏)。
『ウサビッチ』の制作時にはグレーシェードの形状チェックを丁寧に行なっていたが、2Dルックのシェーダとテクスチャをアサインすると、モデルの立体感の印象に誤差が生じてしまうことが問題視されていたという。そこで本作では、おおまかな形状が完成した段階でUVを展開し、テクスチャを貼り込んだ状態でシルエットを意識しながら細部のつくり込みを行なっている。「本作のキャラクターはシーンライトの影響を受けない仕様になっているため、細かく凹凸をつくり込んでも無駄になってしまうんです。早い段階でテクスチャを貼ってしまった方が無駄なつくり込みを削減できるので、作業も楽になります」(古部氏)。ベースとなるテクスチャは古部氏自ら描いているのだが、宮崎氏のタッチを再現するにはモデル以上に多くの時間が必要となるため、デザインの段階で服のシワや影などのタッチを極力抑えてもらうようモデラー側から要望したという。古部氏が作成したテクスチャは最終的に宮崎氏によって調整が加えられ、テクスチャが完成する。
フェイシャルは絵コンテから必要な表情を洗い出し、工数と照らし合わせながらターゲットの作成が行われた。「おおまかなモデルが完成した時点でセットアップの作業に取りかかり、不都合があればモデラーに戻してメッシュの追加や修正などのやり取りを行いながら作業を進めていきました。特に足の関節位置をどこに置くのかが重要になるのですが、デザイン画には膝の動きは描かれていないため何度も検証を重ねました」と、宮田眞規リギングアーティストは語る。カナバンでは独自開発したセットアップツールを用いてリグを構築しているが、バイザウェイの腕など対応できないものもあり、改良を加える必要もあったそうだ。
キャラクターモデル
ヘミングウェイの完成モデル(各アングルからのレンダリングイメージ)。キャラクターのルックはライティングの影響を受けないかたちでまとめられている(テクスチャリングで質感付け)ため、デザイン設定が忠実に再現されている
パースビューのワイヤーフレーム表示
ヘミングウェイのモデル変遷を図示したもの
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1stテイク。当初からデザイン画に近い雰囲気が再現されているが、さらなる調整がくり返されていった
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1stテイクに対する修正指示。宮崎氏がペイントオーバーで頭部の上下幅や手や腕の太さのバランスなど細かく手を入れている
細かな調整をくり返し、出来上がった完成モデル最終的に14テイクに達した。背景美術に合わせて色調整も施されている
バイザウェイの完成モデル(各アングルからのレンダリングイメージ)
パースビューのワイヤーフレーム表示
ボディリグ
カナバングラフィックスが独自開発したリグシステム
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ベースリグ生成ツール。まずはガイドを任意の位置に設置する。耳や尻尾等のセカンダリは、ガイドを適宜追加することで対応可能
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腕のデフォルト角度や、リバースフットのピボットの調整後に全身のリグを生成できる。このベースリグから各キャラクターごとの個別処理を追加していく
ベースリグや規定の仕様であれば、カナバンのスナップツールにも対応するという
ヘミングウェイの完成ボディリグ
バイザウェイの完成ボディリグ
フェイシャルリグ
ヘミングウェイのフェイシャルリグ
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フェイシャルコントローラ。アニメーションの幅をもたせるために、anger (怒り)とbig(目の拡大)は初期設定よりもリミット値を大きくとっている
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汗の表示パターンは数種類用意されているが、すぐに切り替えが行える仕様となっている(アニメーションディレクターがカットごとにパターンを指定)
ヘミングウェイのフェイシャルパターン(レンダリングイメージ)
バイザウェイのフェイシャルリグ。「実は口が開くだけと、非常にシンプルです。口から道具を取り出す際は、めり込みそうな箇所にアニメーターがオフセットをかけて対応しています」(宮田氏)
バイザウェイのフェイシャルパターン(レンダリングイメージ)