>   >  『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の登場キャラを魅力的にした、Live2Dによるモーション制作
『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の登場キャラを魅力的にした、Live2Dによるモーション制作

『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の登場キャラを魅力的にした、Live2Dによるモーション制作

Topic 2 Live2Dによるモーション制作

とことんこだわった! キャラクターらしい動きの秘訣

本作のモデリング部分はパートナー会社に依頼しているが、その品質管理も西根氏が担当している。モーションは25人のメインキャラクターそれぞれに25パターンほどつくられており、作業量は膨大だ。

モーション制作は、まず、元気・おとなしい・クール・かわいいという4パターンにキャラクターを振り分けてベースの動きをつくり、そこから各キャラクターに異なる動きを加えていく。また、女の子らしさを表現するために髪の毛などの動きを柔らかくすることに注力している。「髪は女の子らしさを表現する大事なポイントなので、硬い動きにならないように、こだわってつくりました」(西根氏)。髪の毛の揺れの動きは、長さや重さを設定して揺れの速さを決めるLive2Dの物理演算機能を使っていたが、なかなかイメージ通りの髪揺れにならなかったため、その動きを補助に使い、最終的にキーをベタ打ちにしてほぼ手付けでモーションがつくられた。アニメーターとして全キャラクターのモーションを担当している西根氏によると、自分がそのキャラクターになりきることがコツだと言う。「過去にヒーローショーなどの着ぐるみのアルバイトをしていた経験があり、そこでキャラクターが立っている待機時や、頷く動作などの何気ない動きでも、キャラクターによって個性があるということを教わりました。そこでの経験が今に活きていると思います。アニメーターは私ひとりなので、情熱をもって一緒に作品をつくっていけるLive2Dのアニメーターが来てくれるとうれしいですね。ゲームではイベントごとに新しい要素を入れるようにしているので、これからも楽しみにしていてください」と西根氏は話す。

最後に「2Dと3Dは表現においてそれぞれ強みがありますが、顔まわりでは2Dの絵の方が優秀です。今後は3Dと組み合わせた表現ができるLive2D Euclidと、リアルタイム表現ができるFaceRig + Live2DModuleに期待しています。後者は現実の人間が喋ると、その顔とリンクしてLive2Dのキャラクターが喋るというもので、それが自然になればユーザーコミュニケーションがリアルタイムでとれ、キャラクターコンテンツとしてできることが増えます。この2つの技術進化に可能性を感じています」と近藤氏は熱く語ってくれた。これからますます進化するLive2DとCraft Eggに注目していきたい。

髪の揺れ

開発当初の髪の揺れは動きが硬かったが【画像左上】、先端【画像右上】と真ん中【画像左下】の動きのタイミングをずらすことで、複雑な動きをつくり、柔らかな表現となった【画像右上】


カーブを含めた作業画面。「カーブを見られるのはとても恥ずかしいのですが、これから勉強してさらに突き詰めていこうと思います」と西根氏。限られた中での工夫により、ふわふわした女の子らしい髪揺れ表現に仕上がっている)

ツインテールの髪の揺れ

同じツインテールという髪型でも、キャラクターによって揺れ方は異なる


宇田川あこは少し弾むような動きに


丸山彩はふわふわ柔らかい印象の揺れに、それぞれつくり分けられている

構造としては、あこはバネのように伸縮できるように裏のパーツを描き足し【画像左】、彩は柔らかい印象の揺れをつくれるように毛先を細かくパーツ分けした【画像右】

アニメーションのタイミング調整


本作で使用されたLive2D Cubism 2.1は直線のリニアと自動補間カーブの2種類しか使うことができない。そのため、複雑なカーブをつくりたいときは中間に新しくキーを打たなければいけず、少し不便となっていた。しかし新しいLive2D Cubism 3.0ではベジェ曲線も使えるようになっており「より緩急にこだわったアニメーション制作ができるので、早く業務で使ってみたいですね。タメ・ツメやイージングについてはまだまだ勉強中なので、これからがんばっていきたいです」と西根氏は意欲をみせる

キャラクターらしい演技

どのキャラクターもキャラクターらしさを大切にして制作されている本作。ここではその一例を紹介しよう



  • 丸山彩。すぐ感動して泣いてしまう女の子のため、他のキャラクターにはまだない「嬉し泣き」モーションがある



  • 青葉モカ。喋り方がゆっくりでとぼけたような口調の女の子のため、ボイスの音量がゼロのときでも口が完全には閉じないようなモデルのつくりにされている


瀬田薫。ちょっとおバカな王子様キャラで、大げさにカッコつけた動きをする。他のキャラクターにはひとつあるかないかの「キメ顔」モーションが5つもある。西根氏が夜のテンションと勢いでモーションを制作したキャラクターだ



  • 修正前



  • 修正後

また、キャラクター性に合わせて原画を調整した例では、原画では他のキャラクターと同様の少しプクッとした輪郭の形状で、頬の描き込みがされていてかわいらしい印象だった宇田川巴は「ちょっとクールで姉御肌」というキャラクター性に合わせて、輪郭をスマートにしたり頬の描き込みをなくしたりして調整されているとのこと

キャラクターの声に合わせた細やかな調整

メインのPoppin'Partyのキャラクターは、初出しとなった東京ゲームショウ2016の直前まで音声がない状態で作業が進められていた。たえはクールなイメージだと思われていたが、実際に声を聞いてみると素朴で優しい印象だったため、デフォルトの口をへの字【画像左】から微笑むような口【画像右】に変更している

また香澄の「微笑み」モーションは他のキャラクターと同じように穏やかな笑顔になるようつくられていたが【画像左】、声を聞いてみると想像以上に元気いっぱいで、つくられていたモーションとボイスのテンションが合わなかった。東京ゲームショウ直前ギリギリで時間はなかったが、キャラクターのイメージに少しでも近づけるよう、滑り込みで調整されている【画像右】

キラキラ輝く瞳


設定資料にあった弦巻こころの「いつも目を輝かせている」という一文と、氷川日菜のカードイラスト【画像上】を見て「Live2Dでも瞳をキラキラさせよう!」と西根氏が思いついて制作した表現

【画像上段】はこころのキラキラエフェクトありとなしとの比較画像。「キラキラドキドキ」が口癖の香澄にもキラキラエフェクトを加えているが【画像下左】、まわりからちょっと奇人扱いされているこころよりも等身大の女の子のため、キャラクター性に合わせて目立ちすぎないようにモーションの途中で一瞬見える程度に抑えている。同、日菜の場合【画像下右】

Live2Dでは加算と乗算しか使えないため、エフェクト表現には加算が用いられた。「今後オーバーレイやスクリーンなど、様々なレイヤー合成が行えるようになると表現の幅が広がるのではないでしょうか。そのようなアップデートの話はまだ耳にしていませんが、期待しています」(西根氏)



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.229(2017年9月号)
    第1特集:劇場アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦』
    第2特集:ワンランク上のキャラクターリギング

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2017年9月8日
    ASIN:B074WTYF4P

特集