>   >  3DCGホログラフィックでアニメキャラを現実のステージに再現! 「ドリフェス!イリュージョンShow Time in DMM VR THEATER」
3DCGホログラフィックでアニメキャラを現実のステージに再現! 「ドリフェス!イリュージョンShow Time in DMM VR THEATER」

3DCGホログラフィックでアニメキャラを現実のステージに再現! 「ドリフェス!イリュージョンShow Time in DMM VR THEATER」

Topic 2 Realアイドルをステージ上に再現する演出論

サイコーを超えるライブを観客に! 制作スタッフのアツい想い

先述の通り、演出面でもいかに架空のキャラクターがそこに実在しているように見せるかに重点が置かれている。中でも足の裏と床の接地感は重要な部分だ。足の裏と接地している床が見えないと、キャラクターが黒い空間に浮いているように見えるため、キャラクターが立っている部分の床のみをライトで微妙な明るさになるよう照らしているという。またステージ自体にも工夫がされており、よく見ると奥に行くほど高くなるように勾配がついている。これにより、CG上で後ろにいるキャラクターの足の位置を少し上に設定してレンダリングし、ステージ上へ投影したときにキャラクターの足と床の接地面を合わせることで、ステージ上に奥行き感を表現するという絶妙な演出も行われた。このような一見気づかないような細部をこだわってつくり込むことで、初めて実在感というものが出てくるのかもしれないと、筆者は改めて感じた。

演出において、キャラクターの目線も非常に重要なポイントである。ホログラフィックもあくまで映像のため、キャラクターが右を向いて手を振ると、そのキャラクターは観客の誰とも目が合わない。右端にいる観客が見ても、キャラクターはさらにその右を見ている画になるのだ。かといってずっと正面を向いたままだと、それはそれで不自然になってしまう。そこで、誰を見ているでもなく横に首を振りながらその後にパッと正面へ目線を向けると、観客は「目が合った!」という感覚を受けるという。このあたりはホログラフィックライブを何作もつくり上げてきた経験から編み出された演出方法と言える。

今後のVRの可能性については「人工知能の発達が進む中で、ホログラフィックのようなヴァーチャルキャラクターにAIが搭載される事例は増えていくでしょう。本来存在しないキャラクターがAIという頭脳をもってライブをしたり、お客さんと会話をしたりすることが可能になると思うので、自分たちもそこに向かって試行錯誤していきます」と酒居氏。VRは様々な可能性を秘めているようだ。

最後に「昨年から2.5次元プロジェクトとして『ドリフェス!』に取り組んでいますが、本公演はまさに2Dアニメとリアルなタレントをつなぐ2.5次元プロジェクトを体現する企画です。控えめに言ってサイコー超えてる!」と清水氏は締めくくってくれた。なお、本公演は12月に再演されるので、今回見逃したファンの方も、この記事を読んで興味がわいた読者の方も、ぜひDMM VR THEATERに足を運んで体感していただきたい。

奥行きと接地


Mayaの3D空間上でシアターのステージと同じ比率であらかじめ作成したグリッドテンプレートをカメラに敷き、実際のキャラクターの身長や奥行きを合わせてカメラを作成する。着席時、スタンディング時の接地範囲も規定されており、作業者はこれを目安につくり込んでいく


上演中のライブの様子。キャラクターの足元の床を薄っすらと照らすことで、そこに「立っている」実在感を強めている

目線や振りの範囲

基となるモーションキャプチャデータがシアターの客席の位置からズレた動作や振りをしている場合は、モーションデータの調整が行われた


  • 客席の位置から見ると沢村千弦が下手方向に手を振っているが、現実のその方向には客席がない


  • そこで客席がある正面方向に手を振るように、向きや目線を調整した


このような修正により、実際のライブ中は客席に向けて手を振っているように見える

照明

公演ではステージに向けて現実の照明が当てられているため、ステージ上のキャラクターにもその影響がないと、瞬時にキャラクターは現実感を失ってしまう


まずは照明効果がない素の描画素材で作業を進め......


そこからシアターの照明と同期した照明素材をコンポジット上で乗せる


画像はまだ照明効果がついた途中の状態。実際のステージ上では照明効果と照明の動きが同期しているため、リアルに見える

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ドリアピ演出

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