<2>歴史的建造物を3DCG化してVRコンテンツを作成
前述のようにAVATTAではフォトグラメトリスタジオでの作業に加えて、様々なコンテンツ制作分野に乗り出している。中でも引き合いが増えているのが、屋外の建造物の3DCG化だ。北九州市の観光スポット「門司港レトロ」にある旧門司税関の3DCG化と、そのデータを元に制作されたVRコンテンツもそのひとつ。3Dキャプチャに関しては、ドローンを飛ばして空撮を行い、その写真データをもとにフォトグラメトリを実施。これ以外にレーザースキャナも活用したという。
桐島氏は3Dスキャン技術には大きく「深度センサー」、「フォトグラメトリ」、「レーザースキャナ」の3種類があり、深度センサーは精度が粗いがリアルタイム計測に向くと指摘。フォトグラメトリは写真を撮影するだけなので手軽に計測でき、テクスチャも同時に撮影できるが、細部のデータが取りにくく、巨大な建造物では限界もあるとコメント。これに対してレーザースキャナは最も精度が高いが、計測が1方向のみに限られ、データ量が膨大になるなど、共に一長一短があると語った。
建造物のフォトグラメトリ
旧門司税関(北九州市)の外装と内装が丸ごと3Dスキャンされた例。ドローンによる空撮をベースとしたフォトグラメトリと、レーザースキャナの併用で作成された
建物の内側も3Dスキャンされ、UNREAL ENGINE 4を使用して、VRコンテンツに仕上げられている。コンテンツ内で、かくれんぼ的な簡単なインタラクションもできる
実写と見間違うようなフォトリアルな映像。ただし、スタジオ撮影と異なり、撮影時に環境光からの影響が避けられない。また、撮影時間も大きく制限される。そのため「昼間の状況と割り切る」、「窓ガラスに新聞紙を貼り付けるなどして、外光からの影響を最小限に抑える」など、状況に応じた選択が必要になるという
フェイシャルキャプチャの例
他に同社ではモーションキャプチャやフェイシャルキャプチャのサービスも行なっている。桐島氏はフォトグラメトリとこれらを組み合わせることで、フォトリアルなキャラクターを低コストで作成できるようになると指摘。すでにゲーム内で使用するモブキャラ程度なら、1日で作成できるまでになっていると語った。また仲山氏も、「今後、これらがVR技術と結びつくことで、SNS内でリアルなアバターを用いてチャットをするなど、様々な可能性が広がっていく」と見通しを語った。
AVATTAではスタジオや空撮によるフォトグラメトリ以外に、モーションキャプチャやフェイシャルキャプチャなどの業務も行なっている。顔にマーカーをつけ、60台のカメラを使用してスキャンを行い、リアルな3DCG映像に仕上げることができる
アタリ代表・飯塚岳人氏の頭部データを元に作成されたデモ映像。生首が転がりながら、頭頂と首から泡が吹き出すというシュールな映像だ
AVATTAを起業した当初は、ゲーム業界のクライアントが中心になると予測していた桐島氏。しかし、実際には国内ではモバイルゲームが中心で、引き合いがほとんどなく、広告業界からの依頼が中心だという。ただし、モバイルゲームもスマートフォンのスペック向上に伴い、どんどん3DCGのクオリティが求められるようになると指摘。またテレビCMにおいても、ハリウッド映画と同様にフォトリアルな3DCGキャラクターの活用事例が増加していくと分析した。
同講演で述べられたように、フォトグラメトリ技術は日進月歩で進化しており、3DCG制作に大きな影響を与えている。「実際にiPhone一台あれば簡単なフォトグラメトリができますし、パンフォーカス(近景から遠景までピントが全て合っている状態のこと)で撮影できる分だけ、デジタル一眼レフカメラより優れているとも言えます」(桐島氏)。今後もこの分野に注目が集まりそうだ。
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「CGWORLD 2017 クリエイティブカンファレンス」
参加費:無料 ※事前登録制
開催日:2017年11月5日(日)
場所:文京学院大学 本郷キャンパス(東京都文京区向丘1-19-1)
主催:ボーンデジタル、文京学院大学 コンテンツ多言語知財化センター
機材協力:マウスコンピューター、TSUKUMO(ツクモ)
cgworld.jp/special/cgwcc2017