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デジタル声優アイドルグループ、22/7の『僕は存在していなかった』フルCGミュージックビデオはこうして作られた

デジタル声優アイドルグループ、22/7の『僕は存在していなかった』フルCGミュージックビデオはこうして作られた

Topic 2 制服のシミュレーションと影の表現

Marvelous Designerを活用した制服の作成

制服のモデルは通常のボーンで動かすローポリゴンバージョンと、Marvelous Designerでシミュレーションさせて動かすハイメッシュバージョンが制作されている。これらは服のシワの表現が必要なカットとそうでないカットで使い分けている。本作はダンスのシーンのほかにも椅子に腰かけるなど、日常動作が多かったため、ボーンで変形させるよりもシミュレーションした方が便利なカットが多かったという。また、キャラクターのアニメーションにモーションキャプチャが使用されているため、シミュレーションした衣服の動きも非常に馴染みが良かった。「3ds MaxのClothを使うことも考えたのですが、Marvelous Designerは計算のし直しなどが非常に簡単でした。衣装のポリゴン数が多くないとクオリティが下がってしまうので、データの書き出しに時間がかかるというデメリットもあるのですが、出来上がったアニメーションを見ると採用した甲斐があったと思います。実は本作で貯まったノウハウが『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』の如月ルヰの衣装の表現にも活かされています」と平泉氏は話す。

キャラクターの大部分はPencil+4による二値化されたルックが着けられているが、制服はグラデーションの影が入るようにフォールオフマップを使って表現されている。シミュレーションをかけてからシワをどのように表現すればいいのか、この表現にたどり着くまで試行錯誤が行われたという。「シミュレーションで変形されたメッシュでのPencile+を使った表現というのが難しく、素直にPencil+の設定をしてしまうとラインがたくさん描画されてしまいます。それを避けるためにシワはグラデーションで表現して、不要なラインが出ないように分割の割合なども調整しました」と乙部氏。これらの工夫により、非常に自然で柔らかな服のシワが表現されている。

Marvelous Designerによるシミュレーション

Marvelous Designerを使った制服のシミュレーション作業。シミュレーション時間を短縮効率化するため、トップスとスカート部分を別々にアバターとして切り出して計算している



  • トップスのシミュレーション



  • スカートのシミュレーション



  • 椅子に座るカット。接触物がある部分だけをアバターにしてシミュレーションしている。このような演技が絡むカットでは、ボーンではなくシミュレーションによる変形が効果的だという



  • 風を受けるようなカットもMarvelous Designerでシミュレーションを行なっている

シミュレーション結果を3ds Maxに読み込む

シミュレーション結果をレンダリング反映させるまでのながれ

Marvelous Designerでトップスとスカートを別々にシミュレーションしたら、それぞれの計算結果をポイントキャッシュとして書き出す



  • 3ds Maxでそのポイントキャッシュを読み込んで合成



  • レンダリング用の衣装モデルにスキンラップを使って、ポイントキャッシュの動きをトレスさせて転写


レンダリング後

影のグラデーション表現

制服の影はマテリアルにフォールオフマップを使用して表現されている



  • 左側は拡散反射光内のフォールオフ、右が反射マップ内のフォールオフの設定



  • レンダリング後の状態。縫い目などはラインとして描画されているが、影はグラデーションで表現されている

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Topic 3 セットアップとアニメーション

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