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デジタル声優アイドルグループ、22/7の『僕は存在していなかった』フルCGミュージックビデオはこうして作られた

デジタル声優アイドルグループ、22/7の『僕は存在していなかった』フルCGミュージックビデオはこうして作られた

Topic 3 セットアップとアニメーション

担当声優たちがモーションキャプチャに挑戦

本作に登場するキャラクターの動きは、全てアーティスト本人たちのモーションをキャプチャして使用している。8人の動きを一度にキャプチャする必要のあるダンスシーンは光学式のモーションキャプチャシステムを使って収録が行われたが、個別の日常演技のモーションはMVNを使って収録された。「最初は手付けでアニメーションを作成するということも考えたのですが、今回の企画はアイドルたちの動きをそのままトレスしてキャラクターに定着させたいということもあり、キャプチャで対応するようにしました」と乙部氏。「演技が足りないところはアニメーターのほうで大げさに演技を付けたりしています」とアニメーターの伊藤明仁氏は話す。

今回のキャプチャ作業ではMVNの手軽さや機動性が多いに発揮され、本作の制作には不可欠なツールだったという。MVNは最近のバージョンアップでノイズの補正が非常にアップし、かなり精度の高いキャプチャができるようになっている。また、タツノコプロのインハウスのツール「BipedWorks」によって、これまでフルキーで収録されていたキャプチャデータをリダクションする機能や、足の接地を修正する機能なども充実したため、非常に効率の良いアニメーション付けができていた。

モーフターゲット


本作ではフェイシャルアニメーションにモーフターゲットを使用し、インハウスツールでアニメーションに対応している。目パチや口パクなどは、1種類のターゲットで対応できるようにするなど多くの効率化が図られた。まつげが非常に多い設定のキャラクターもいるが、それらはあらかじめモデルに仕込むことで表情変化に簡単に対応できるようにしている

複雑な髪のセットアップ


本作に登場するキャラクターの髪は繊細な動きが必要だったため、細かくスタイリングされた毛束に多くのボーンが仕込まれている。特に画像のみうについてはTVシリーズのキャラクターの5倍以上のボーンが仕込まれた

タツノコプロオリジナルツール「BipedWorks」


モーションキャプチャで収録されたデータを効率良く編集するために開発されたオリジナルツール「BipedWorks」。キーリダクションから足の接地補正まで、細かいBipedの操作を簡単に行うことができる。キャプチャデータはBVHで書き出され、Bipedに流し込んだ後にこのBipedWorksを使って編集されている。モーションの編集というとMotionBuilderが採用されることが多いが、タツノコプロではこのBipedWorksでほとんどのキャプチャデータを編集している

Topic 4 背景となる校舎の作成

キャラクターのアニメーションのほか、美しい背景も本作の見どころのひとつだ。一見2Dの背景美術に見えるが、フル3DCGで制作されている。背景のアセットはカメラの長回しにも対応できるように、教室から屋上まで、カメラが移動する学校内の経路は全てアセットが作成されているという。「学校なのですごく巨大なアセットなのですが、足下のアップに耐えられるようにテクスチャがとても細かく作成されています。背景のチェックの際はどのようなカメラワークにも耐えられるように、絵コンテに合わせたカメラワークを事前に用意して、そのカメラワークできちんと耐えられるクオリティがあるかチェックムービーを作成して確認しました」と乙部氏。使用している素材もイチ背景につき反射素材を中心に7素材を用意し、日中から夕暮れまで時間の経過を表現したリッチな背景を制作している。

3DCGによる校舎

美術ボード

3DCGによる校舎の背景

実際に作成された3DCG背景。この一連の背景は、時間経過による日照の変化などに対応できるように作成されており、作品の雰囲気づくりに大きな役割を担っている



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