Topic 1
命を吹き込まれたDONNYのプロップ制作
世界中を飛び回るDONNYをどうやって表現したのか?
ほとんどのシーンのDONNYは、実際のドローンに3Dプリントで作成したボディをかぶせて監督自ら操縦して飛ばしたもので、必要に応じて全体もしくは一部がCGに差し替わる。DONNYのデザインに関しては、当初ソーラーパワーで飛ぶドローンであるということ以外の多くは決まっていなかったため、まずはラファル氏によってイラストが描かれ、マック監督のリクエストを交えてイメージが固められていった。さらにそのイメージボードをラファル氏がCGで立体化し、それに対してマック監督がチェックを行なってDONNYのビジュアルを詰めていく。「ビジュアルを起こしていくにあたって、ボディの制作コストと何が可能かというところを見合わせながらつくりました。なので、撮影で使ったボディにもデザイン時の各パーツは一部再現されています」(ラファル氏)。初期のものを見るとまだ顔らしきものもなく、どちらかというとドローンそのものだが、アイデアを足していくにつれキャラクターらしくなっていったのがわかる。
その後、このデータを基に3Dプリンタで実際のボディを作成していく。3Dプリント用のデータ作成とボディへのウェザリングはプロの原型師が行なった。ボディの素材はナイロン樹脂のためかなり軽く、強度も既存のドローンよりも強い。なので「撮影中よく木にぶつかったりとトラブルはあったのですが、ボディの強度があったのでドローン自体はあまり壊れることはありませんでした」とマック監督。出力自体はアムステルダムで行なったそうだが、これは日本よりコストが大幅に安かったからだという。ただかなり遠方の海外であるため、壊れたり加工をミスしたりしたとき再度ボディを取り寄せるのに、数週間かかってしまうこともあったのだとか。
ボディが完成したところで、今度はCGに置き換えるためフォトグラメトリーを行う。やり方としてはシンプルで、回転台に乗せてDONNYを15度ずつ回転させ、1台のSONY α7Sで撮影してPhotoScanに取り込むというもの。「DONNYを回転させながら100枚くらい撮影しました。5ヶ月前に新しいオフィスに引越してきたのですが、ここの場所は自然光がソフトだったので、想定していた以上に上手く撮影できましたね」とミハウ氏。なおアップでは使用に耐えないとわかっていたため、そこまで仕上げを綺麗にはせず、プロペラ部分などは後から作り直している。またDONNYは白系の色でわりとマットな質感のせいか、かなり作業がしやすかったようだ。「DONNYは形状も含めて今回のプロジェクトに向いていたと思います。すごく上手くいきました」(ミハウ氏)。
徐々に人物感が表れてくるDONNYのデザイン
ボディの中には既存のドローンがきちんと入ることが優先なので、それを念頭にデザインが進められた
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イメージがFIXしたDONNY
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実際のドローンには脚やカメラが付いていて「見た目的に良くない」ということからなくすことにしたそうなのだが、脚にはGPSなどの機器が入っているために切り落とすことはできない。そのため、グリーンのテープを貼ってポスプロ時に消し込まれている。この消し込みだけで1ヶ月はかかったそうだ。また、後から目にLEDが仕込まれるのだが、それもマック監督のDIYで付けられている
フォトグラメトリーでVFX用モデルを作成
最終的に完成したDONNYからフォトグラメトリーによって3Dモデルとテクスチャを生成することで、実際に撮影されるDONNYとCGによるDONNYとの整合性をとっている。これは前述のように、3Dプリントした後にドローンを仕込むためにいろいろ加工したり、ボディに汚しを入れているためだ
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JUICEオフィスでの撮影の様子。オフィスの光の環境と、DONNYの色と質感が撮影時に功を奏した
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ソフトウェアはPhotoScanが用いられている