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3D空間にデジタル作画する!? エクスペリメントラボ(仮)によるBlenderを用いた制作手法の新提案

3D空間にデジタル作画する!? エクスペリメントラボ(仮)によるBlenderを用いた制作手法の新提案

3Dモデルを用いて作画作業をしてみよう

第二原画や動画工程に3Dを利用する例を紹介する



  • 動かすキャラクターに合わせてラフモデルを作成した



  • 3Dモデルに対してメッシュを付け、それをボーンで制御する。ラフ原画を基にラティス変形で3Dモデルをゆがませ、レイアウトの絵と細かく合わせて変形していく

ラフモデルに原画の表情を描き込んだ状態。グリースペンシルで目と口を3Dモデルの顔部分(サーフェス)に直接作画し、その線をボーンと親子付けする。下を向くなどの3Dの動きに対して線が追従するので、キーとなる作画(原画)だけ描けば、簡易的に中割りされた動画をつくることが可能だ

動画として書き出した状態。手描きで動きを付けた帽子の羽と組み合わせて動きをつくった



  • 画像の出力時に必要な部分のみ表示して画像化する。ここでは動画工程を想定して、線画のみ書き出した



  • グリースペンシルでサーフェス上に作画しているので、3D空間では線画もこのような立体になっている

カメラワークとタイミングを調整してみよう

ここでは実践的なカメラワークの例を紹介する


3DBGにグリースペンシルでキャラクターを描いてみた。先に3Dでカメラワークを付けたものに対して2Dで作画を乗せている

ラフモデルを用意し、3Dでカメラワークを付けて2Dで作画したもの(1工程前の画)に合わせて動きを探る


カメラから見た状態。BGとキャラクターのラフモデルだけあれば3Dでカメラワークを付けることができる


  • ラフモデルの上に2Dで作画した状態。パース感は3Dに合わせ、作画的なケレン味や動きを描き足していく


  • さらにブラッシュアップしていく



タイミングの調整比較。動きが遅いと思ったら、後からキーを移動して微調整もできる。グリースペンシルで3Dの空間に描いているので、後付けでカメラワークを微調整したりキャラクターの動きを修正したりすることも可能だ


作成したムービーの連番。このように、2Dアニメーターが3Dレイアウト(プリビズ)段階から制御できるようになることは、Blenderを用いる大きな利点となる

モーショントラッキングを使ってみよう

さらに踏み込んだBlender使用事例として、動画からモーショントラッキングしてアニメーションを制作する方法をみていく


カーペットの敷いてある部屋の動画をiPhoneで撮影し、トラッキングする。カーペットの柄などの特徴のあるポイントをBlenderのトラッキング機能によって自動で追いかけ、動きの情報を検出していく。それをBlenderのカメラにながし込むと、3D空間にトラッキング情報を再構築することができる



  • トラッキングして構築された3D空間上にラフ画を描いたもの



  • ラフをベースに、3D空間に作画していく



  • 背景も加筆して色を付けた



  • さらにパーティクルで桜の花びらを飛ばして、被写界深度も追加する。手描きの画が3D空間に違和感なくブレンドされて、とても雰囲気のある映像となった

プリビズで活用してみよう

これまで見てきたBlenderの手法を採り入れ、実際のアニメ企画のムービーを制作した例。少ないコアメンバーだけでクライアントに対してかなり最終的な映像のルックに近いものを見せることができたという

カメラで東京の下町の古い街並みの動画を撮り、モーショントラッキングで手振れを消し、そこにグリースペンシルで絵を描いたもの。カメラの横移動に合わせて女性の足の間の空間が少しずつ開いている。3D空間で右足と左足の絵の位置をずらして描くことで、カメラの回り込みに合わせて少しずつずれていくしくみだ。空間に対して絵を描くことは様々な応用が利きそうである


こちらも同じくカメラで撮った実写映像にグリースペンシルでキャラクターを描いたもの。奥にドリーしていくカメラに合わせてキャラクターも奥へ歩いていく。カメラワークのある実写空間の中で何の違和感もなく2Dのキャラクターを馴染ませている

様々な管理ツールを使ってみよう

迫田氏はアニメ制作時の管理のツールとして、文字チャットでのコミュニケーションにSlackを、ビデオ会議や文字チャットでは伝わらない感覚的なニュアンスをビデオで直接伝えたいときなどにappearinを使用し、場所的制約、時間的制約に囚われない制作環境を実現した。またタスク管理にはTrello(下の画)を使用している。10分くらいのボリュームの作品を管理する上では、とても使い勝手がよく重宝しているとのこと。次々と新たに登場するWebサービスやデジタルツールを勉強して使いこなし、制作現場に採り入れていく姿勢が、これからの時代のアニメづくりに必要な要素だと強く実感させられる




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