>   >  アツい原作愛で実現した4K&VR対応リマスター! KONAMI × Cygames『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』
アツい原作愛で実現した4K&VR対応リマスター! KONAMI × Cygames『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』

アツい原作愛で実現した4K&VR対応リマスター! KONAMI × Cygames『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS』

Topic 2
短期間で4K解像度テクスチャを大量生産

DCCツールのカスタマイズでワークフローを改善しリソースの大規模化に対応

本作の3DCGワークは、プログラム周りをCygamesシニアエンジニアの岩崎順一氏および堀端氏、4Kテクスチャを中心としたリソース制作はテクニカルアーティストの脇田 卓氏がリードした。「グラフィックス面に関しては、表現をHDR的なものに置き換えるというところが大きな変更点です。PS2時代はアドホックな表現が多かったですが、今作では敵機体の映り込みや眩しい光などの表現が豊かになっています」(岩崎氏)。

また、低解像度のテクスチャでは敵影がにじんでしまい、没入感を大きく損なうことになってしまうため、必然的に4K解像度が求められた。当初キャラクターモデルのみに適用する予定が、背景などを含めて全て4K解像度で対応するかたちとなった。「UIだけでも3,500枚程度のテクスチャが用いられています。人数が限られている中で全てを4K解像度にリファインするということで、新しい手法にチャレンジをするというよりは既存手法の効率化がメインとなりました」という脇田氏の言葉通り、同作ではDCCツールのカスタマイズを中心に既存ワークフローの改善が行われている。

KONAMI側からはPS2時代のテクスチャデータ、プログラムコードがCygames側に共有されたが、モデルデータは実機に最適化されたバイナリデータとなっており、ファイル名やテクスチャ名もハッシュID(16進数の文字列が8桁割り当てられたID)で管理されていたため、これを一度実機に読み込んでエクスポートした後にFBXに変換するコンバータを開発し、紐付けされたテクスチャもMaya上で参照できるようカスタマイズ。このしくみは、背景のリフレクションシェーダを実現するため、PS2版で欠落していた頂点法線の追加にも使用された。テクスチャ側にもハッシュIDを書き込み、映画『マトリックス』のようなビジュアルでモデルとの紐付けがリアルタイムでプレビューできるほか、リフレクションに用いるマスクもRGB情報からSubstance Designerを介して自動出力できるようなしくみを採っている。

4K解像度のテクスチャによるルック比較



  • PS2版(原作)



  • PS3版

PS4版(本作)のゲーム画面

いずれも色味は原作を踏襲しながら、細部の表現がアップデートされている。フォトリアルな表現というよりは、線や面がパキッと綺麗に見えるルックが目指した方向性であり、結果として原作寄りのマットな質感となっている

テクスチャ解像度については一目瞭然となるが(左側:PS4版、右側:PS3版)、陰影表現やエッジ部分まで含めて非常に精細な描画となっており、敵機が近影に見えても質感はまったく違和感のないものとなっている

Substance Designerによるマスクの自動生成

カリストの氷壁などの表現に用いられているリフレクションシェーダのためのスペキュラマスクは、Substance Automation Toolkitを使ってSubstance Designerから元のカラーテクスチャのRGB情報を基に自動生成される。画像はマスクテクスチャ出力用のグラフ

Maya上で.sbsarのパラメータを設定してテクスチャを出力できる

カラーテクスチャの修正(コミット)に合わせて、Jenkinsを用いてマスクテクスチャの一括出力を行う

内製のデバッグツール

ルックDevの一環として、Maya上で実機プレビューできるツールを開発。調整したい場合はMayaでプレビューしながらテクスチャを参照し、Photoshopでテクスチャ(PSD)を編集して保存すると即座にテクスチャが書き換わり、プレビューに反映されるようになっている



  • 原作再現のため、PS2版ルックで確認できるPS2モード



  • マトリックスモード。モデルおよびUIパネルとテクスチャの紐付けが正しいかどうかを確認するため、ハッシュIDの情報をテクスチャ側にもたせ、ゲーム画面で数字を表示することで正誤判定を行なっている

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Topic 3 原作通りの色味と、原作を超えた表現力

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