Topic 3
原作通りの色味と、原作を超えた表現力
高度なポストエフェクト処理
VR化と共に本作の主軸となった4K対応に関しては、アップスケールを行うなどの擬似的ではなく2160pのネイティブ4Kでの出力となり、内部をHDRで拡張したため高輝度表現が可能となっている。また、PC版では余剰パワーを用いて、オブジェクト同士の反射などより高度な表現を行なっている。背景とキャラクターはPS4版同様の一般的な描画プロセスを経るが、PC版はそれ以外に法線と速度バッファの描画も行い、作成済みのデプス、法線バッファ、前回の結果も踏まえてSSAO成分を作成、これをゲーム画面と合成することでAOを表現。その後、前フレームで計算したSSR用のUV情報を基にSSR成分の計算とブラー処理を行なった上で差分となるSSR成分を合成し、レーザーなどのリフレクションを実装している。
また、エフェクトではPS4・PC版共に、差分法の縮小バッファが用いられていることが特徴。「本作では特殊なアルファブレンドを多用するため、一般的な乗算済みアルファでの縮小バッファコンポジットでは難しい状態でしたので、方式を変更しました。フル解像度のシーンをいったん縮小バッファにコピーしてそこに追加のレンダリングを行い、追加レンダリング前の画像との差分を取り再抽出して4Kバッファに合成しています。この方式では従来パスを変更することなく全てのブレンドモードが利用可能になります。ぼかし系のポストエフェクトごと縮小バッファに投入するなど大胆なことも可能になったので、大幅な負荷低減になりました」(岩崎氏)。なお、モーションブラーやグレアフィルタなどのポストエフェクトはシリコンスタジオの「YEBIS 3」を使用し、情報量の多さと原作のテイストをマッチさせている。
全てのエフェクトが反射の対象となるSSR
リフレクションにおいて半透明描画は反射対象外とするのがセオリーだが、本作ではエフェクトのデプス情報【A】をMRTで同時生成し、レイトレーシングの直前でシーンデプスバッファ【B】と合成して利用することで【C】、爆発系のエフェクトやレーザーなどをSSRでリフレクションしている(【D】合成前/【E】合成後)。また、PBRな照明モデルでは夕日の光が海面で縦に伸びるなど「反射した光源が法線方向に伸びる現象」が発生するが、これを表現するために異方性ブラーを導入。法線方向を考慮してブラーする方法が変化するアルゴリズムで実装を行なっている。【F】通常のSSR/【G】本作のSSR
負荷軽減とPS2版同等の描画のために採用された縮小バッファ
通常はアルファブレンド関連描画を特殊値でクリアされた縮小レンダーターゲットに描画し、縮小バッファに描画した内容を元解像度へブレンド描画するが、これでは減算半透明やアルファ値が1を超えるような特殊なブレンドではレンダーターゲット側の色がないため結果が変わってしまう。そのため、本作では元解像度の画像を縮小バッファにコピーしてレンダーターゲットとして使用、描画前後を比較した差分を元解像度へ反映する【上の4枚の画像】。差分となるため、全てのブレンド手法に対応可能なほか、不透明描画や一部のポストエフェクトにも対応可能となる
【上画像】はデバッグ表示で、緑の元と色が大きく異なる部分と、赤のエッジ部分の元解像度での色差分が大きく異なる部分が出ないよう調整された
半透明合成が重なるたびに変色する黄色シフト問題の改善
HDRシーンの高速描画のために利用される「R11G11B10_FLOAT」フォーマットで描画した際、半透明合成が折り重なると煙などが黄色みがかった色に変色する問題が発生【画像左】。これは青成分が10bitと他の成分に比べ精度が粗く、演算ごとに劣化し微量ずつ失われることが原因だったため、エフェクト描画をfp16の高精度バッファに変更して縮小バッファの併用で性能と発色を維持している【画像右】。なお、同問題はPS2版と比較した際に黄色くなっていると指摘が入ったことが原因で発覚していることから、カラーは原作に非常に近いものが実現されていることがわかる