>   >  スタジオコロリド初の長編アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』〜幻想的な世界を描き出す3DCG制作の舞台裏〜
スタジオコロリド初の長編アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』〜幻想的な世界を描き出す3DCG制作の舞台裏〜

スタジオコロリド初の長編アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』〜幻想的な世界を描き出す3DCG制作の舞台裏〜

Topic 2:「ペンギン」のキャラクター表現

ある日街中に出現し、物語を動かしていくペンギンたち。終盤でペンギンの大群がアオヤマ君とお姉さんを乗せて街を駆け抜けていくシーン等、ペンギンが群をなして登場するシーンでは、モブとして3DCGのペンギンがところどころに混ざっている。「当初ペンギンを3DCGでつくる予定はなかったのですが、群を成す無数のペンギンたちを全て2Dで描き切るのはやはり困難なので3DCGを融合させてほしい、との要請があり制作することになりました」と石井氏は語る。こちらも"海"と同じく、作画の風合いに寄せるかたちで、ペンギンの群れの遠景などに3DCGペンギンを効果的に配置した。

リグにはHumanIKを使用しているが、「外注スタッフの方にお願いするのであれば、Maya標準のリグを使った方が技術面、機能面としてやりとりがしやすいのかなということでHumanIKを採用しました」と石井氏。また、本作はメインツールがMayaであるため、アウトラインの描画にはPaintEffectsを使用しているとのこと。

ペンギンの作画設定。これらを基にモデリングが進められた

モデリングのチェック用動画
基本のアニメーションのチェック用動画

Topic 3:カメラマップとUnityを活用した背景制作

本作では、カメラマップとUVマップを融合させてつくり上げた「ハイブリッドな背景美術」により、動きのある躍動的なカメラワークを実現した。「特にラストのシーンで多く登場するのですが、角度がつきすぎてカメラマップだけでは表現しきれないシーンは、美術さんに様々な角度から描いてもらった背景を3DモデルにUVマッピングしたものを融合させています」と石井氏。終盤でペンギンが群をなして登場するシーンは、カメラマップとUVマッピングによる「かなりスペシャルなカットのオンパレード」だそうだ。また、どのように美術を描けばいいか美術チームとの折衝が大変だったと石井氏は続ける。「物量の多さに加えカメラマップに使用する際のレイヤー分けや管理、どこからどこまでを美術で描くか、といったやりとりが大変でした」(石井氏)。

また、本作ではUnityを使用したレイアウトが活用されている。一例として、主人公アオヤマ君の部屋は、室内を3DCGモデルに起こしたのちUnityでレイアウトのアタリを出し、それを原図にして美術さんに背景を描いてもらうというながれで進められた。「Unityで出力して演出さんに自由にカメラを置いてもらうという方式を採用しました。作画さんからはパースが取れて大変使いやすかった、と好評でした(笑)」。今後も制作のフローをしっかりと練れば、Unityの使い道にも実用性が出てくるのでは、と石井氏は締めくくった。



●Unityでのレイアウトから原図の発注まで

本作でUnityを使用したシーンはアオヤマ君の部屋やカフェ、歯科医院の待合室、教室など。まず背景のアタリとしてモデルを作成し、Unityに読み込んでレイアウト。監督に様々な角度から観てもらい、カメラワークを決定後美術チームに原図の作成を依頼した。机のテクスチャなども貼り込んだ上でUnityで出力し、美術チームにレタッチしてもらったそうだ。


【1】アオヤマ君の部屋の設定画

【2】Mayaでのモデリング

【3】Unityで出力したレイアウト

【4】完成した美術

●Mayaでのカメラマップ作業

Maya上で、アオヤマ君の部屋モデルに美術スタッフが作成した原図を貼り込んでいる様子

レンダーレイヤー

設定画面

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