<3>抜群の没入感を体験、「StarVR」実機デモ・レポート
ここからは、いくつかの実機デモを体験することができたので、その感想をレポートしていく。まず「StarVR」を装着すると、やはり視野角が広く、視界の全体を覆うほどの感覚であった点が印象的だった。筆者は近眼のため常にメガネを着用しているが、メガネをかけたままでもHMDをスムーズに装着できたばかりでなく、HMDの視野の方がメガネの視野よりも広いくらいの印象であった。そのため、視線の端の方でとらえた物体を感じ、視線を自由に操ることができるのだ。
また、OLEDのパネルは液晶のようなピクセルごとのツブツブ感もなく、なめらかな壁紙、なめらかな風景が自分の周囲に広がっているような感覚を得ることができた。その上、頭や体を素早く動かしても映像がずれたり、遅延したりすることはなく、映像を見ているというよりも、投影されているものを覗き込んでいるかと思うほど安定していた。
音響に関してはスピーカーが搭載されているわけではなく、ミニヘッドフォンジャックがあり、どのようなタイプのヘッドフォンも接続可能だ。用途や目的に応じて耳を全て覆うようなヘッドフォンから、インナーイヤーの軽量のヘッドフォン、または音なしなどの選択も可能となっている。
車体モデルのデザイン検討のためのVRコンテンツ
車体のインテリアやエクステリアをVR世界で選択し、車外、運転席、後部座席などから車のデザインを確認できるVRコンテンツでは、最新のアイトラッカーを活用し、視線方向のレンダリングが細かくなるしくみが採用されていた。アイトラッカーには実績のあるTobii社の技術が採用されている。
Dynamic Foveated Renderingという視線方向のレンダリングが高精細になるしくみ。広範囲の画像全てを高精細にしなくとも良いため、ハードウェアの負荷が低くなり、求められるスペックを低く抑えることができる。人間は実際のところ視線の方向しかよく見ておらず、このしくみは十分違和感なく機能する
このデモでなによりも驚いたのは、車体の背景に配置されている背景であった。なんと日本の銀座、アップルストアのある付近の歩行者天国が背景であり、その道や建物の質感や量感が、あたかも銀座の中心に立っているかのごとく押し寄せてくるVRならではのコンテンツであった。
背景には銀座の風景が使われていた
その他にもアイトラッカーの功績として、装着時にHMDのずれを検知したり、左右の目の距離(瞳孔間距離)を自動的に計測し、装着している人にぴったりと合った設定に調整可能という点がある。さらにアイトラッカーにより視聴コンテンツのどこを多く見ているかを知ることができるため、3D空間における視聴率のようなデータを取得しホットスポットを把握することで、コンテンツ制作やデザイン検討に役立てることもできる。
tobiiアイトラッカーによる瞳孔間距離計測の説明。ちなみに著者は63mmだった
VR体験者がどこに視線を向かわせているかを把握できる
ケーブルに関しては、高精細な映像を高速に映像として映し出さなければいけないため、現在は無線ではなく有線だが、今後、技術の進歩に応じて無線化も検討しているとのことだ。
VR HMDとしては現在、考えうる最高性能をもつ「StarVR」。まず企業向け、ビジネス用途向けに展開するとのことだが、コンテンツの広がりとともに、このクラスのHMDが一般的に普及していくことを期待したい。