若手TAの育て方・伸ばし方
後半では事前に寄せられた質問をベースに、若手TAの育成方法について議論が行われた。はじめにTA向きの性格や資質についての質問があった。これに対して会場のベテランTAから「物事をロジックで考えられる」、「めんどくさがりやで、常に効率化について考えている」、「他人のサポートに喜びを感じる」、「雑学に興味があり、多方面の事柄を自分で調べている」などの回答が聞かれた。
アーティスト出身のTAに対して、どのようにプログラムについて教えれば良いか、という質問もあった。これに対してユニークな回答を示したのが田中氏だ。肩書きはアーティストで趣味がプログラミングという田中氏は、前述の通り社内ミーティングに出席し、議事録を取るところからスタートした。ここで学んだ内容をもとに、優先度を決めてプログラミングを自主学習したというのだ。このほか、「1ヶ月程度で終了する課題をつくって与える」(中村氏)、「内製ツールからMaya用にプラグインを移植する」(清水氏)などの回答が得られた。
TA志望の学生から、学生のうちに学んでおくべき内容に関する質問もあった。これに対して会場から「まず1本、ゲームを1人でつくってみること」という回答が寄せられた。ゲームをつくることで必要な技術や知見、アセットを量産する上で必要なツールや、リッチな画づくりに必要なシェーダなどの概要をつかめる。その上で必要な事柄から順に勉強していけば良いというわけだ。
登壇者からも「目の前の情報を鵜呑みにせず、何が必要か常に考え続ける」(中村氏)、「友人のソースコードを見てデバッグすると、問題解決力の向上につながる」(佐藤氏)、「TAの仕事の3割はコミュニケーション能力なので、コミュ力を鍛える」(竹谷氏)などの回答があった。このほか田中氏から「学生時代に1年間留学し、海外でデッサンや油絵の勉強をしていた。TAをするなら語学力は必須で、特にCGやゲーム分野で使われる単語や言い回しについて慣れるといい」という回答もあった。
最後に司会の今野氏がこれまでの議論を巻き取り、「若手TAの育成に必要な要素は『余裕』ではないか」とまとめた。実際に会場では大手スタジオでも「人材不足で目の前の仕事に忙殺されており、複数プロジェクトを1人で担当する現状では、育成にまで手が回らない」といった声も聞かれた。ただし、本当に会社に余裕がない状態で余裕をつくることはできない。これが現状の矛盾を象徴しているともいえる。
そうした中でも、TA志望の学生が少なからず見られたという点が、本セッションにおける収穫のひとつだったといえる。次は選考プロセスの見直しをはじめ、こうした学生をいかに的確に採用し、育成していくかが問われることになりそうだ。そのためには全社的な取り組みが必須で、様々な意味での余裕が求められる。また、教育サイドにおいてもTA育成について真剣に考える時期に来ていると感じさせられた。