プロトタイピング&キャラクター表現
背景シーン構築のながれ
UE4の強みは、アーティストのみで高いクオリティのプロトタイプを作成でき、エンジニアに完成イメージごと正確に引き継ぐことができる点です。ヒストリアが実装面を引き継ぐ前に、ダイナモピクチャーズではビジュアルやアニメーション、演出をUE4を使って内部のアーティストのみでほぼ完成させました。
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グレイボクシング。レベルデザインの前に、アニメーションに影響する背景オブジェクトの位置をMayaで仮配置し、UE4に持ち込んでVRで確認、またMayaに戻りアニメーションを作成します。
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グレイボックス(黄色部分)を基に背景をつくり込みます。
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透過バッファ画像です。VRで軽量に表示するために透過バッファを意識して、植物などの透過部分が極力重ならないように工夫しています。
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シーン内には多くのポイントライトを配置し、Lightmassで間接ライティングキャッシュを行い、リアルな反射やライティングをVR上で実現しています。ポイントライトをスタティックに設定し、ライトベイクすることで描画の負荷を下げ、VRに最適化しています。
Substance Painterの活用
全てのモデル制作はハイメッシュを作成し、Substance Painterでローメッシュにベイク、PBRペイント、Mayaでセットアップ、UE4に読み込んでレンダリング、というながれで行われています。グレイのモデルは特にプレイヤー近くに寄るため、UDIMで複数の高解像度テクスチャに分割して運用されています。
シェーダマテリアルでのアニメーション制御
まぶたが左右に開閉するチュパカブラの特殊な瞬きは、UE4のシェーダマテリアル側でアニメートさせています。後述するスカイフィッシュも同様に頂点シェーダを使って動きを付けたりと、UE4側でアニメーションを制御することを前提にモデリングが進められました。
背景アセット&エフェクト制作における工夫
モジュール設計の背景モデリング
背景を作成する際は、大きなシーンを一度にモデリングするのではなく、カリングにより無駄なモデルを表示させないために、またエンジン内でインスタンスとして扱うために、モジュールごとに細かい素材を作り分け【上画像】、背景アセットとしてセットアップしてUE4上で組み立てています【下画像】。画像は「森の遺跡」のもので、このシーン以外にも冒頭の会議室やUFO内部なども同様に作成されています。
「Plant Factory」による植物生成
植物の作成には、背景作成ツールとして有名な「Vue」と同じe-onがリリースしているスタンドアロンの植物生成ジェネレータ「Plant Factory」【上画像】が使用されています。ノードベースですがペンストロークで枝を生成することも可能で、樹木だけではなく草花やツタなども生成できることが強みです【下画像】。植物の作成ツールとしてはSpeedTreeが主流の昨今ですが、セカンドソリューションとして貴重な存在と言えるでしょう。
多彩なパーティクルエフェクト
パーティクルは全てUE4のカスケードで作成されており、UMAの毒ガス【上画像】や高速移動時の光のエフェクト【下画像】など、様々な用途にパーティクルが使用されています。
シェーダによるエフェクト表現
エフェクトのアニメーションやルックの構築にはシェーダマテリアルが活用されました。パーティクルはスタティックメッシュしか使用できないため、高速で羽ばたきながら飛来するスカイフィッシュ【画像左】の羽は頂点シェーダでアニメーションさせる工夫が施されています。草が揺れたり、【画像右】のように天井が変形するなどのアニメーションも同様です。
また、UFOのキューブ状のコアではPOM(パララックス・オクルージョンマッピング)の視差効果を用い、神秘的な奥行き感が演出されています。