COLUMN
ダイナモピクチャーズによるUE4を使用したVR映像制作事例
後段では、ダイナモアミューズメントからリリースされてきたVRアトラクションの中から、ダイナモピクチャーズがUE4を使用して制作した作品を取り上げます。同社で作成しているVR映像はただのVR作品ではありません。「MX4D®」という映画用のモーションライドシートを用いて映像と動きを連動させ、リアルなアトラクションとして楽しめる作品となっています。
UE4を用いた過去作品
『メガロドン』は史上最大の古代サメが登場する海洋アドベンチャー作品。同社でUE4を用いた初めての作品で、様々な海洋生物との遭遇をリアルスケールで楽しめます。『ウルトラ逆バンジー』は大気圏への逆バンジーや、大迫力の滑空が体験できる絶叫系VR作品です。VRかつ立体視に対応しており、MX4D®の連動もあいまって、普段VRや立体視に触れている方ほど驚くという、誰もが絶叫し楽しめる作品となっています。
MX4D®とダイナモの強み
MX4D®とは米MediaMation社が開発し、ソニービジネスソリューション株式会社が国内展開するアトラクション型劇場シートです。国内映画でMX4D®対応している映画作品全てのモーションライドのプログラム制作はダイナモアミューズメントが担当しています。ダイナモ社内にはMX4D®が常備されているので、アニメーションを付けたその日に座って確認できるメリットもあります。このように映像、モーションライド共に自社内で完結できるため、アトラクションの完成度は非常に高いです。
最新作『BOAT RACE WORLD GRAND PRIX』
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『BOAT RACE WORLD GRAND PRIX』
360度VR×MX4D®の超没入体験型アトラクション。8月4日(土)から9月30日(日)まで、北海道、宮城県、愛知県、沖縄県の7会場にてイベント開催中!
問:BOAT RACE振興会
www.boatrace.jp
以降でメイキングを取り上げるのは、最新作の『BOAT RACE WORLD GRAND PRIX』(以下、『BOAT RACE』)。この作品は、BOAT RACE振興会のマスコットキャラクター「クマホン」を主役にダイナモが作成したVRアトラクション用オリジナル映像作品です。今までの作品ではシーンによってツールを使い分けていたそうですが、『BOAT RACE』ではほぼ全ての映像、素材制作をUE4で完結させた初の試みの作品になります。制作期間は3ヶ月という状況で、4Kの映像が3本、7つの巨大な背景が設定され、スピーディに制作を進める必要がありました。そこで広大なシーンを素早く量産でき、美しいレンダリングが可能なUE4を選択したそうです。
ランドスケープとフォリッジ機能の活用
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ランドスケープの機能では、ブラシを用いスピーディに地形を構築できます。砂漠やジャングルなど、ステージごとの様々な地形を高速に作成するのにおおいに役立ったそうです。
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フォリッジはメッシュをインスタンス化し、自動配置やペイントで配置するための機能です。ランダム感を出しつつ自動配置し、微調整することも可能で、効率的に岩や樹木を配置することができています。
ブレンドマテリアルによる高解像度質感の実現
頂点ペイントでマスクを塗り分け、マテリアルを適用して分けることにより、通常のテクスチャやUDIMでは再現の難しい超解像度質感が再現されました。映像制作ではUDIMを用いることが多いですが、ゲームエンジンでは軽い処理で高解像度に見せるためのブレンドやセカンドマップ等の工夫が重要になります。
水飛沫表現の工夫
水飛沫の表現はカスケードを使用して作成されています。プリレンダーのVR映像コンテンツのため、パーティクルをオブジェクトタイプに置き換え、立体的な水飛沫が再現されました。3本の映像中、ひとつはエフェクト込みでUE4から書き出されていますが、もう2つは水飛沫のみ別途書き出し、コンポジットで合成されています。
コンポジット前。
コンポジット後の完成形。